メタル曲の作り方|リフと低音をDTMで組む手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
メタルの速さと重さは、大音量から生まれるのではなく、リズムの設計から生まれます。ブリッジミュートで刻むリフ、ツーバスのドラム、低く下げたチューニング、左右に重ねたギターの壁。
どれも打ち込みで再現できる技術です。腕が疲れて刻みが乱れる心配がないぶん、DTMはむしろメタルと相性の良い作り方だと言えます。
組む順番は、刻みリフ、ドラム、ベース、ギターの壁の4段です。リフという心臓を最初に作り、そこへ速いドラムと低音を接続していきます。
各パートの作り方と、最初の8小節を鳴らすまでの手順を工程の順に見ていきます。
組み上げの全体像
メタル曲は、刻みリフを心臓にして、低音とドラムを束ねます。
- 曲の心臓はブリッジミュートの刻みリフ
- BPMは140〜200、まず160で試す
- ツーバスは全編ではなく、加速したい場面に絞る
- ギターの壁は左右2本から、低域はベースに譲る
刻みリフの作り方
ズンズンと詰まった音の連打が、メタルの心臓です。
ブリッジミュートとは、ギターの弦を手のひらで軽く押さえたまま弾く奏法です。音の伸びが止まり、「ズンズン」と短く詰まった響きになります。この音を低い弦で連打するのが、メタルの刻みリフです。
打ち込みで再現するなら、ギター音源にミュート奏法の音色があればそれに切り替え、なければノートを16分音符より短く切って、ベロシティをそろえます。音の短さと粒のそろい方が、刻みらしさの正体です。
リフ作りで効くのは、音程よりも休符です。16分音符でずっと埋めるより、「ズズズッ、ズッズッ、休み、ズズッ」のように隙間を混ぜると、リフに顔ができます。
試しに、音程を低い1音に固定したまま、リズムの形だけで1小節作ってみてください。それだけで曲として立つのがメタルのリフです。
音を動かすなら、パワーコードから始めます。パワーコードはルートと5度だけの2音のコードで、歪ませても濁りません。
低音に固定した刻みの合間に、半音上や半音下のパワーコードを差し込むと、少ない音数のまま不穏な緊張感が出ます。
低音チューニングの考え方
打ち込みなら、移調するだけで低音の世界へ入れます。
メタルでは、ギターとベースのチューニングを標準より下げて、通常より低い音域を使うことが多くあります。生の楽器なら弦を張り替える大ごとですが、打ち込みなら簡単で、リフ全体を半音や全音だけ下へ移調すれば同じ効果が得られます。
ただし、下げるほど重くなるわけではありません。低くするほど音程の輪郭がぼやけ、刻みの「ズッ」が「ボワッ」に変わっていきます。
音源が想定している音域より下では、逆に音が細くなることもあります。
目安として、まず全音下げ相当で8小節を組んでみてください。さらに下を試したくなったら、必ずベースも一緒に下げて、キックと低音が聞き分けられるかで判断します。
区別がつかなくなった地点が、その環境での下げすぎラインです。
BPMとツーバスの使いどころ
速さの目安と、キック連打を効かせる場面の選び方です。
BPMの目安は140〜200です。最初は160に置いて、リフを鳴らしながら10ずつ動かします。
刻みがもつれずに転がる一番速い地点が、その曲の適正速度です。重さを狙うなら、あえて120台のミドルテンポに落とす道もあります。
ツーバスとは、バスドラムを2つ、または2連打できるペダルで踏み、キックを16分音符で連打する奏法です。打ち込みには足の限界がないので誰でも鳴らせますが、だからこそ使いどころを絞ります。
持続的な連打を身上とするスタイルもありますが、全編で鳴らすほど、通常の場所との差は小さくなります。サビの後半、セクションの締めの2小節など、「ここで加速したい」という場面にだけ置くと、同じ連打が何倍も効きます。
レッスンでは、ドラムは名前や譜面から入るより、口で言えるリズムから入るほうが止まりにくいと伝えています。ツーバスの場面も「ドドドドタン」と先に口で言える形にしてから打ち込むと、速いのに整理されたドラムになります。
口でもつれるパターンは、聞き手の耳の中でももつれます。
※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。
ツーバスは使いどころを絞るほど効きます。2本ともBPM160で、各小節の後半2拍だけを変えました。
刻みの土台です。リフを乗せるだけならこれで十分に走ります。
連打しているのは各小節の後半2拍だけです。短いからこそ、そこだけ加速したように聞こえます。
条件:BPM 160/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。
持続的なツーバスもメタルでは普通に使われますが、全編に置くほど、通常の場所との差は小さくなります。この例のように後半2拍へ絞ると、同じ連打が強く聞こえます。
ベースはリフをなぞる
独立して歌わせず、リフを太くする係にします。
メタルのベースの基本形は、リフと同じ動きを1オクターブ下でなぞるユニゾンです。ギターと同じリズム、同じ音程の変化で刻むと、リフが一本の太い柱になります。
別のメロディを弾かせて厚みを出す発想は、このジャンルでは後回しで構いません。
気を付けるのはノートの長さです。ギターの刻みは短く切れているのに、ベースだけ長く伸ばすと、低域に霧がかかってせっかくの刻みが濁ります。
ベースのノートもギターと同じ短さにそろえ、キックが鳴る瞬間に低音の点が重なるように置きます。
確認は簡単で、ドラムとベースだけを再生してみることです。この2つだけでリフのリズムが聞き取れるなら、ユニゾンは機能しています。
壁のようなギターの重ね方
本数を増やす前に、2本を別テイクにすることが先です。
ギターの壁の土台は、同じリフを弾くリズムギターを左右へ1本ずつ、完全に振り切って置くことです。ここで一番効くのは、片方のMIDIをコピーしてもう片方に貼らないこと。
2本の演奏がわずかに違うからこそ左右に広がって聞こえるので、面倒でも打ち直すか、最低でもタイミングとベロシティを変えます。
さらに厚くしたい時は、本数ではなく歪みの深さを変えます。同じ音色を4本並べても音量が上がるだけですが、深く歪ませた2本の後ろに浅い歪みの2本を小さく重ねると、厚みと輪郭が両立します。
何本になってもセンターは空けたままにして、そこへキック、スネア、ベース、歌を通します。
もう1つの原則は、歪みが深いほどコードの音数を減らすことです。基本はパワーコードの2音まで削ります。
明るい暗いを決める3度の音を入れると、深い歪みでは音同士がぶつかって濁ります。壁の厚さは音数ではなく、削った音の少なさから生まれます。
刻みの開け閉めで作る構成
セクションごとの落差を、ミュートとキックで設計します。
| セクション | ギターの状態 | ドラム | ねらい |
|---|---|---|---|
| イントロ | リフを単体か薄い編成で提示 | ハイハットのみ、または無し | 曲の顔を先に覚えさせる |
| Aメロ | ブリッジミュートで刻む | 8ビート系で最小限 | 圧を溜める |
| サビ | ミュートを外して開放で鳴らす | ツーバスとシンバルを解禁 | 溜めた圧を放つ |
| ブレイク | 刻みだけ、他は沈黙 | キックがリフとユニゾン | 落差で重さを見せる |
メタルの展開は、楽器を足していく足し算よりも、ミュートの開け閉めで作ります。同じリフでも、詰まった刻みで演奏すれば「溜め」、ミュートを外して開放で鳴らせば「解放」になります。
コードもドラムも変えずにこの切り替えだけでサビを作れるのが、このジャンルの面白いところです。
ミックスで最初に見る1点
重くしたいなら、低域を全員で鳴らさないことです。
メタルのミックスで最初に気を付けることを1つに絞るなら、歪んだギターの低域をベースに譲ることです。
左右の壁ギターから低い成分を少し削るだけで、埋もれていたキックとベースの輪郭が浮かび上がり、結果として曲全体が前より重く聞こえます。
低域を全パートで鳴らすほど音は軽くなる。この逆説を覚えておくと、「迫力が足りないからギターの低音を足す」という一番ありがちな悪循環を避けられます。
迫力の担当はベースとキック、ギターの担当は中域の壁です。
最初の8小節を組む手順
リフから始めて、6手で骨格を鳴らします。
手順1、BPMを160に設定します。手順2、低い1音だけの刻みリフを、休符を混ぜたリズム重視で2小節作り、コピーして4小節にします。
手順3、ドラムを打ち込みます。キックはリフの刻みと同じ位置、スネアは2拍目と4拍目です。
手順4、ベースをリフの1オクターブ下にユニゾンで重ねます。ノートの長さもリフと同じ短さにします。手順5、リフを左右2本のギターに分けます。コピーではなく、片方はタイミングとベロシティを変えるか打ち直します。
手順6、4小節を8小節にコピーし、7〜8小節目だけキックを16分の連打に差し替えます。ここで一度書き出して、スマホで再生してください。
確認するのは、小さい音量でも刻みの粒が潰れずに聞こえるか、その1点です。ここが潰れていなければ、あとは構成へ広げるだけです。
全体の流れに迷ったら、制作工程マップで自分がどの工程にいるかを確かめてから進むと迷いません。
| 段階 | 長さ | やること | このジャンルでの具体 |
|---|---|---|---|
| 1周目 | 8小節 | 骨格だけを置く | 8ビートとリフだけ。ツーバスはまだ入れない |
| 2周目 | 16小節 | 抜き差しで変化を作る | ツーバスを入れる場所を決める。2小節の締めか、サビの後半だけ |
| 展開 | 32小節 | 場面を足す | ブレイク(全部止める)を1か所入れる。止めるほうが加速して聞こえる |
| フル尺 | 64小節〜 | 曲として通す | 4〜6分。速さを上げるのではなく、止める場所と連打する場所を配る |
長さや小節数はあくまで目安です。大事なのは順番で、 8小節が気持ちよく回らないうちに長さを足さないこと。 伸ばしてから直すより、8小節に戻って直すほうが早く終わります。
上の表の2周目のやり方(抜き差しで変化を作る)を音にしました。 2本とも16小節・同じ音量で、前半8小節は1音も違いません。 変えたのは9小節目から先だけです。
8小節を過ぎたあたりから、耳が先を予測してしまいます。手は動いているのに曲が進んでいない状態です。
9〜12小節目にだけツーバスが入り、13〜14小節目でスネアだけになります。連打を4小節に絞ったので、そこだけ加速したように聞こえます。
条件:BPM 160/16小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。
よくある疑問
ブリッジミュートの刻みは打ち込みでどう再現しますか
ギター音源にミュート奏法の音色があればそれに切り替えます。なければノートを16分音符より短く切り、ベロシティをそろえると刻みの質感に近づきます。
ツーバスはずっと鳴らしてもいいですか
全編で鳴らすと耳が慣れて平坦になります。サビの後半や締めの2小節など、加速させたい場面に絞ると速さが引き立ちます。
チューニングはどこまで下げればいいですか
打ち込みではまず全音下げ相当から試します。下げるほど音程の輪郭がぼやけるので、ベースと一緒に下げてキックと聞き分けられるかで判断します。
ギターは4本重ねるべきですか
まず左右に1本ずつの2本で十分です。増やす場合は同じ音色を足すのではなく、歪みの深さを変えた2本を薄く重ねると輪郭が残ります。
記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ
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