本文へスキップ
古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

ロックのバンドサウンドをDTMで組む手順|ギターとドラムの音作り

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

ロック曲をDTMで組むということは、ドラム、ベース、ギター2本、歌という架空のバンドをひとりで指揮することです。

頭の中には完成したバンドの音が鳴っているのに、DAWのトラックは空のまま。どこから手を付けるかで、その後の進み方が大きく変わります。

入口は2つあります。リフという繰り返しの短いフレーズから作る道と、コード進行から作る道です。

どちらを選んでも、最後は楽器の役割分担と音域の整理という同じ場所に合流します。入口の選び方から、ギターの重ね方、8小節の骨格を鳴らすところまでを工程の順に見ていきます。

組み上げの全体像

ロック曲は、入口を1つ選び、楽器の役割と音域を整理しながら組み上げます。

  • リフ先かコード先か、自分の入口を決める
  • ドラムとベースが土台、ギター2本が壁、歌が主役
  • 楽器ごとに音域の住所を決めてかぶりを防ぐ
  • BPMは120〜170を目安に、曲を鳴らして決める

入口は2つ、リフ先かコード先か

どちらの道を通るかで、曲の顔つきが決まります。

リフとは、ギターの低い弦あたりで繰り返される短いフレーズのことです。2小節ほどの塊が何度も出てきて、それだけで曲だと分かる。

リフから作る道は、この塊を先に作り、そこにドラムとベースを合わせていく進め方です。曲の顔が最初にできるので、後の判断が全部リフを基準にできます。

もう1つは、コード進行から作る道です。4つほどのコードを4小節に並べ、その上に歌のメロディを乗せていきます。歌が主役の、歌謡曲寄りのロックを作りたいならこちらが向いています。

選び方は単純です。鼻歌でギターのフレーズが浮かぶ人はリフ先、歌のメロディが浮かぶ人はコード先

どちらが浮かぶかは曲ごとに違ってよく、両方試して止まらなかったほうが、その曲の正しい入口です。

BPMとドラムの組み方

速さの目安と、セクションごとの刻みの変え方です。

BPMの目安は120〜170です。120〜140は体を揺らすミドルテンポ、150〜170は疾走感のある速い曲になります。

数字で決めず、リフやコードを鳴らしながら10ずつ動かして、フレーズが一番気持ちよく転がる速さを探します。

ドラムの基本は8ビートです。ハイハットが1小節に8回「チッチッチッチッチッチッチッチ」と刻み、その中の1拍目と3拍目にキックの「ドン」、2拍目と4拍目にスネアの「タン」が入ります。

この3点セットだけで、ロックの時間は流れ始めます。

ロック曲で効くのは、この刻みをセクションごとに変えることです。Aメロはハイハットを閉じた音で小さく、サビではハイハットをクラッシュシンバルやライドに持ち替えて、同じ8ビートのまま景色を変えます。

パターンを増やすより、刻む場所の音色を変えるほうが、曲の展開としてはっきり聞こえます。

ベースとギターの役割分担

同じ低い音でも、担当している仕事が違います。

ベースの仕事は、キックと手をつなぐことです。キックが鳴る位置と同じ場所にベースの音を置くと、低音がひとつの塊になって曲の重心ができます。

音の高さはコードのルート、つまり一番土台になる音が基本で、ギターよりおよそ1オクターブ下を受け持ちます。

ギターの仕事は、その上の中域でコードの厚みを作ることです。ここで大事なのは、ギターが低域を欲張らないこと。ベースが下を守ってくれているので、ギターは低い弦の響きを全部鳴らさなくても曲は薄くなりません。

むしろ両方が低域を鳴らすと、団子になって輪郭が消えます。

打ち込みで確認するなら、ベースだけをミュートして再生してみてください。

曲が急に軽くなれば、役割分担は成功しています。ギターを消しても低音の土台が残るなら、その逆も成立しています。

ギター2本の重ね方

リズムギターとリードギターは、別の楽器だと考えます。

バンドのギターは多くの場合2つの役割に分かれます。リズムギターはコードやリフを刻んで壁を作る係、リードギターは単音のメロディやオブリガード、間奏のソロを弾く係です。

DTMでもこの2つをトラックとして分けます。

リズムギターは、左右に1本ずつ振るのが定番です。左に1本、右に1本、同じコードを弾かせると、真ん中に大きな空間ができます。

この空間が、歌とスネアとベースの席になります。

リードギターはセンター寄りに置き、歌があるセクションでは休ませます。

歌とリードは同じ音域の主役候補なので、同時に鳴らすと客席の取り合いになります。歌の合間にひと言返すくらいの分量が、ちょうどよい会話になります。

ギターが弾けない人の打ち込み方

ピアノの感覚のまま打ち込むと、機械の音になります。

ギター音源を打ち込みで鳴らす時、一番嘘っぽくなる原因は、コードの全音符を完全に同じ位置で発音させることです。

実際のギターはピックで弦を上から順にかき下ろすので、6本の弦はほんのわずかに時間差で鳴ります。ピアノロールでも、コードの各音の開始位置を下の音から少しずつ後ろへずらすと、急にストロークらしくなります。

音の数も減らします。鍵盤の癖で6音全部を押さえたくなりますが、ロックの歪んだ音では3〜4音、場合によっては2音で十分です。音数が少ないほど、歪ませても濁りません。

もう1つ、左右のリズムギターを作る時に、同じMIDIをコピーして振り分けるのは避けます。人間が2回弾けば2回とも微妙に違うからこそ広がって聞こえるので、片方はタイミングとベロシティを変えるか、面倒でも打ち直します。

ギター音源に奏法を切り替える仕組みがあるなら、刻みとコードで奏法を分けるとさらに実演奏に近づきます。

バンドアレンジの音域整理

各パートの住所を決めると、音を足しても濁りません。

パート担当する音域役割かぶった時の対処
キック・ベース低域重心と推進力ベースの音の長さを切ってキックを立てる
リズムギター2本中域コードの壁低い弦の音を減らしてベースに譲る
歌・リードギター中高域主役のメロディ同時に鳴らさず交互に出す
ハイハット・シンバル高域時間の刻み数を減らして隙間を作る

この表は、ミックスの前に使う整理表です。ロックのミックスで最初に気を付けることを1つだけ挙げるなら、歪んだギターの音量を上げすぎないことです。

歪んだ音はそれ自体が派手なので、フェーダーを上げるとすぐ歌を飲み込みます。歌より半歩下がった大きさでも、壁としては十分に厚く聞こえます。

最初の8小節を組む手順

土台から順に、1トラックずつ積みます。

手順1、BPMを仮に140へ設定します。手順2、ドラムトラックに8ビートを4小節打ち込みます。キックとスネアとハイハットだけで、フィルはまだ入れません。

手順3、ベースを足します。コードのルートを8分音符で刻むだけの形で構いません。

手順4、リズムギターを重ねます。リフ先で作っているならここでリフを、コード先ならコードの刻みを置きます。

手順5、この4小節をコピーして8小節にし、8小節目だけドラムの最後にスネアを2〜3発足して、次のセクションへ渡す合図を作ります。

手順6、一度書き出してスマホなどで聞きます。ここまでで確認するのは、土台が転がっているか、ギターとベースの役割が分かれているかの2点だけです。

歌やリードは、この骨格が立ってから乗せるほうが迷いません。

8小節から曲の構成へ

参考曲を、密度の設計図として読みます。

8小節の骨格ができたら、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏という構成に広げます。ロックの典型は、イントロでリフを見せ、Aメロで音数を絞り、Bメロで少し持ち上げ、サビでギターとシンバルを全開にし、間奏でリードギターに主役を渡す流れです。

ここで参考曲の出番です。レッスンでは、リファレンス曲を真似る対象としてではなく、どの楽器が入っていて、どこで密度が上がり、どこで休んでいるかを決める材料として使います。

好きなロック曲を1曲選び、セクションごとに鳴っている楽器を書き出してみると、サビ以外は意外なほど音が少ないことに気づくはずです。その密度の差こそが、コピーしてよい部分です。

構成まで見通せたら、あとは工程の反復です。8小節を作り、広げ、書き出して聞き、直す場所を決める。この流れ全体を1枚で確認したい時は、制作工程マップが地図になります。

よくある疑問

リフとコード進行、どちらから作るのが正解ですか

どちらも正解です。ギターの短いフレーズが浮かぶ人はリフ先、歌のメロディが浮かぶ人はコード先で始めると止まりにくくなります。

ギターは何本重ねればいいですか

リズムギターを左右に1本ずつ、合計2本が基本です。本数を増やすより、2本の演奏内容を少し変えるほうが厚みにつながります。

ドラムはどこまで細かく打ち込みますか

最初はキック、スネア、ハイハットの8ビートだけで十分です。フィルはセクションの変わり目が決まってから足します。

歌がない状態でも進められますか

進められます。仮のリード音を歌の音域に置いておくと、後から歌を入れる時の居場所を確保できます。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

次に進む記事

組み上げの中で弱かった楽器から、掘り下げていきます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。