DTMでロック曲を作る始め方|ギター・ドラム・ベースの役割

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
ロックが作りたい。でもギターは弾けないし、バンドを組んだこともない。実は、それでもロックの8小節は今日作れます。DTMなら、ギターは音源に打ち込めばよく、必要な知識はパワーコードと8ビートという2つの言葉だけです。
この始め方の合言葉は「まず3楽器」です。ドラム、ベース、ギターの3つだけを鳴らして、ロックとして成立する骨格を先に作ります。歌もギターソロもシンセも、全部その後。覚えることを最小にして、最初の8小節が鳴るところまでを一直線に進みます。
始め方の要点
初心者のロックは、3楽器だけで最初の8小節を成立させます。
- ギターはパワーコードを2〜3音で打ち込む
- ドラムは8ビートを口で歌ってから置く
- ベースはルート弾きで下を支える
- BPMは130〜150で始める
まず3楽器だけで成立させる
トラックを減らすほど、初心者の判断は楽になります。
ロックのバンドを思い浮かべると、歌、ギター2本、ベース、ドラム、時にはキーボードまで鳴っています。これを最初から全部作ろうとするのが、初心者が止まる一番の原因です。
そこで、最初のプロジェクトはトラックを3本に固定します。ドラム、ベース、ギターが1本ずつ。この3つが噛み合って鳴っていれば、歌がなくてもロックに聞こえます。
逆にこの3つがばらばらだと、上に何を重ねても直りません。
3楽器それぞれの仕事はこうです。
- ドラムが時間を進める。
- ベースが下を支える。
- ギターがコードの響きを鳴らす。
役割が1つずつなので、変な音がした時にどこを直せばいいか、初心者でも切り分けられます。
パワーコードとは何か
音2つでロックの響きになる、一番簡単なコードです。
パワーコードとは、コードの土台になる音(ルート)と、そこから5つ上の音の2つだけを重ねた形です。
たとえばラの音なら、ラとミ。ドなら、ドとソ。ピアノロールで音を2つ置くだけで作れます。
普通のコードには、明るい暗いを決める3つ目の音が入っています。パワーコードにはそれがないので、明るくも暗くも決まらない、突き放したような響きになります。
そしてこの単純さが、歪んだギターと相性抜群です。音を歪ませると響きは濁りやすくなりますが、2音しかないパワーコードは濁る材料が少なく、太いまま鳴ってくれます。
ロックの曲の多くの場面は、実はこのパワーコードの平行移動で進んでいます。難しいコードの本を読む前に、2音の塊を横に動かすだけでロックの伴奏になると知っておくと、始め方が一気に軽くなります。
8ビートは口で歌ってから置く
歌えるものは打てる。ドラムはここから始まります。
ロックのドラムの基本形が8ビートです。まず口で言ってみてください。「ドン・ツ・タン・ツ・ドン・ツ・タン・ツ」。これが1小節です。
ドンがキック(バスドラム)、タンがスネア、間を埋めるツがハイハットにあたります。
レッスンで大事にしている判断メモに「歌えるものは打てる」があります。口に出せるリズムには、すでに自分の中にイメージがあるということです。
逆に、口で歌えないリズムをピアノロールに置いても、良いか悪いか判断できません。だから順番は、歌ってから打つ、です。
歌えたら、ピアノロールに置き換えます。キックを1拍目と3拍目に、スネアを2拍目と4拍目に、ハイハットを8分音符でずらっと8個並べます。
再生して、さっき口で歌ったものと同じに聞こえたら成功です。ずれて聞こえるなら、たいていキックの位置が口のドンと合っていません。
ベースはルート弾きから
同じ音を刻み続けるだけで、仕事は果たせます。
ベースの最初の形はルート弾きです。ルートとは、鳴っているパワーコードの一番下の音のこと。
ギターがラとミを鳴らしているなら、ベースはそのラを1オクターブ下で、8分音符でダダダダと刻み続けます。
音が1種類だけで不安になるかもしれませんが、これはサボりではなく様式です。ロックのベースの推進力は、音の種類ではなく、同じ音を均等に刻み続ける粘りから生まれます。
コードが変わったら、ベースの音も次のルートへ移る。最初はこの規則だけで動かします。
置き方のコツは1つ、キックが鳴る瞬間にベースの音も必ず鳴っていることです。ここが揃うと、低音がひと塊になって、3楽器が急にバンドらしく聞こえ始めます。
弾けない人のギター打ち込み
弾けないことより、鍵盤の癖のほうが問題になります。
ギターが弾けない人がギター音源を打ち込む時、失敗の原因はほぼ決まっています。ピアノの感覚で、たくさんの音を、ぴったり同じタイミングで置いてしまうことです。
対策は2つ。1つ目は音数で、パワーコードの2音、多くても3音までに絞ります。実際のロックギタリストも、歪ませる場面では低い弦を2〜3本しか弾いていません。
2つ目は長さで、まずは1小節伸ばす白玉から始めて、慣れたら8分で刻む形に変えます。刻む時はノートの間に短い隙間を作ると、ザクザクした演奏らしさが出ます。
音源の設定は、クリーンではなく歪み系の音色を選ぶこと。
もし打ち込んだ音がのっぺり聞こえたら、ベロシティ(音の強さ)を少しばらつかせてみてください。全部同じ強さの演奏は人間には不可能なので、揃いすぎが機械っぽさの正体です。
最初の8小節を作る手順
BPMの設定から書き出しまで、この順で置きます。
| 手順 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | BPMを140に設定する | 重めなら130、疾走なら150 |
| 2 | ドラムに8ビートを4小節置く | キック・スネア・ハイハットのみ |
| 3 | ギターにパワーコードを置く | ラ→ファ→ソ→ラを1小節ずつ |
| 4 | ベースでルートを8分刻みする | キックと同じ瞬間に鳴らす |
| 5 | 4小節をコピーして8小節にする | 8小節目の最後にスネアを2発足す |
| 6 | 書き出してスマホで聞く | 直す場所を1つだけメモする |
手順3のラ→ファ→ソ→ラは、ロックでよく聞く暗めの進行の一例です。パワーコードなので、2音の塊をそのまま平行に動かすだけで弾けます。
もちろん自分で並べ替えて構いません。大事なのは、この表を上から順に、途中で音色探しに寄り道せず最後まで通すことです。
3楽器の音量で気を付けること
ミックスの注意は、今はこれ1つで足ります。
3トラックしかない今の段階で、EQやコンプレッサーは必要ありません。代わりに1つだけ守ってほしいのが、ドラムを基準にして、歪んだギターを上げすぎないことです。
歪んだ音は成分が詰まっていて、同じフェーダー位置でも実際より大きく主張します。気持ちよくギターを上げていくと、いつの間にかスネアの抜けが消え、ベースの音程が聞こえなくなります。
これが初心者のロックが「うるさいのに迫力がない」状態になる典型です。
確認方法は簡単で、再生しながらギターだけをミュートしてみます。ドラムとベースだけになった瞬間、音が急にスカスカになるなら、ギターに頼りすぎのサインです。
土台の2楽器だけでも進んで聞こえる音量関係を保ってください。
8小節ができた後の広げ方
この8小節が、そのまま曲の部品になります。
3楽器の8小節が鳴ったら、それはもう曲の断片ではなく、Aメロの伴奏そのものです。ロックの曲の構成は、この部品の使い回しで作れます。
同じ8小節の上に鼻歌でメロディを乗せればAメロに、パワーコードの並びを変えて音域を上げればサビになります。
次に足す楽器も、優先順位を決めておきます。4本目のトラックは歌かメロディ、5本目に2本目のギター、6本目に飾りのシンセ。
この順で1本ずつ増やし、増やすたびに再生して、3楽器の時より良くなったかを確かめます。悪くなったなら、そのトラックはまだ要りません。
今日の成果は、8小節のプロジェクトを保存して書き出すところまでです。
ここから1曲に広げる道のりは長く見えますが、通る工程は決まっています。全体の地図が欲しくなったら、制作工程マップを手元に置いて進んでください。
よくある疑問
ギターが弾けなくてもロックは作れますか
作れます。ギター音源にパワーコードを打ち込めば、演奏経験がなくても歪んだ音を鳴らせます。音を2〜3個に絞るのがコツです。
パワーコードだけで曲になりますか
最初の8小節なら十分に曲になります。慣れてきたら普通のコードを混ぜて響きを広げれば大丈夫です。
ドラムのフィルはいつ入れますか
8小節が成立してからで大丈夫です。まずは8小節目の最後にスネアを数発足すところから始めてください。
歌やメロディはいつ乗せますか
3楽器の土台が転がってからです。土台があれば、鼻歌を録音してメロディの素材にできます。
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