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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

ブルースの作り方|12小節進行とシャッフルをDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

ブルースの曲を作りたいが、3コードを並べてもそれらしく聞こえず、跳ね方も分からない人へ向けて、ジャンル名の説明ではなく、DAW上で8小節を組む順番に落とします。BPM、ドラム、ベース、コード、メロディ、音色を分けて、書き出して聞ける状態まで進めます。

読み終わったら、まず音を出す、再生する、保存する、短く書き出す、次に確認する一点を決めるところまで進めます。完成度を採点する前に、同じ手順をもう一度再現できるかを見ます。制作中に迷ったら、画面の中で悩み続けず、8小節を書き出して普通の再生環境で聞きます。

制作の軸

ブルースは、音色探しより先に8小節の役割を決めます。

  • BPMと体感を分けて決める
  • キック、ベース、コード、メロディの順に置く
  • ジャンルらしい装飾は骨格の後に足す
  • 同じ音量で書き出して判断する

この記事が扱う範囲

扱うもの
BPM90前後の12小節ブルース。シャッフルのドラムと、I7・IV7・V7の進行
扱わないもの
ジャンプブルースやブルースロックの速いテンポ。ギターの奏法そのものの解説
所要時間の目安
12小節を1周させるまで約40分
まず鳴らす1音
ハイハットの8分だけ。裏を3連の位置まで遅らせる

DAWはCubaseを想定していますが、手順はどのDAWでも同じです。 記事内のMIDIとデモ音源も、DAWを問わず使えます。

今日やること

8小節だけ作り、保存して、書き出して、次に直す一点を決めます。

  • 仮音色でドラム、ベース、コード、メロディを置く
  • 4小節目と8小節目に小さな変化を入れる
  • 変更前と変更後を別名保存する
  • スマホや小さい音量で再生して、次の修正点を一つだけ書く

最初に決めること

ジャンル名ではなく、曲の速度、主役、8小節の到達点を先に決めます。

ブルースの作り方で最初に見るのは、音色の名前ではありません。ブルースの曲を作りたいが、3コードを並べてもそれらしく聞こえず、跳ね方も分からない人にとって必要なのは、今日のDAW画面で何を置けば前に進むかです。

テンポは、80〜100 BPMのミドルテンポを目安にし、最初は90 BPM前後から試す。この範囲は絶対値ではなく、最初に手を動かすための目安です。曲の狙い、歌の言葉数、ドラムの細かさによって、同じジャンルでもかなり変わります。

最初の8小節では、完成形を狙いすぎません。ドラム、ベース、コード、メロディの4段だけを置き、曲の方向が聞こえるかを確認します。音色探しはその後で十分です。

作曲や編曲の現場でも、すべての音を一度に正解へ持っていくわけではありません。まず骨格を外に出し、聞き返しながら必要な音だけを残します。

BPMと体感を分ける

数値を決めたら、速さの印象がどこから出ているかを分けます。

80〜100 BPMのミドルテンポを目安にし、最初は90 BPM前後から試す。ただし、BPMの数字だけでジャンルらしさは決まりません。速く聞こえる理由は、ドラムの刻み、ベースの長さ、メロディの音数、コードの切り替わり方に分かれます。

BPMを上げても勢いは出ません。ブルースの推進力は、8分の裏を3連の位置まで遅らせるシャッフルから出ます。90のまま、裏の位置だけを動かして聞き比べてください。キックとスネアは同じままです。

テンポを動かす前に、跳ねの量を動かしてみてください。同じ90でも、裏を3連の位置まで遅らせると重いシャッフルに、半分だけ遅らせると軽いスウィングに聞こえます。テンポはその後で決めれば十分です。

ギターの音色を選ぶ前に、12小節の進行を1周させてください。I7・IV7・V7が正しい小節に置かれ、最後の2小節で頭に戻る感じが出ていれば、音色が何でもブルースになります。進行が崩れていると、どんなギターを足しても戻りません。

ドラムの骨格

派手なフィルより、キックとスネアの位置を先に固定します。

※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や、実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。

3コードを並べてもブルースに聞こえないとき、足りないのは裏の位置です。 BPM90で、キックとスネアは2本とも同じ。動かしたのは8分の裏だけです。

① 8分をそろえた場合表と裏が等間隔

ロックの8ビートです。同じ3コードでも、跳ねがないと平らに聞こえます。

② 裏を3連の位置へ遅らせた場合裏の8分を約111ms後ろへ(3連の3つ目)

これがシャッフルです。遅らせるのは裏だけ。表は1つも動かしていません。裏が遅れることで、次の表へ転がり込む感じが出ます。

条件:BPM 90/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

ブルースのシャッフルのピアノロール。ハイハットの裏が等間隔の位置より後ろにずれて置かれている
②のピアノロールです。ハイハットの裏が、等間隔の位置ではなく3連の3つ目の位置に寄っています。

DAWのスウィング量なら66%前後が3連の位置です。 ドラムだけ跳ねさせてベースとギターが均一のままだと、パートがばらばらに聞こえます。同じ量を全部にかけてください。

ドラムは、キックは1拍目と3拍目、スネアは2拍目と4拍目。ハイハットは8分をシャッフルさせ、裏を弱くする。最初の段階では、細かいフィルや装飾よりも、どこで体が前に進むかを決めます。

8分の裏を3連の3つ目の位置まで遅らせるシャッフル。跳ねはハイハットだけでなくベースとギターにも同じ量でかける。このグルーヴの方向を決めずにハットやパーカッションを増やすと、音は多いのに曲が進まない状態になります。

8小節なら、1〜4小節はI7のままシャッフルの土台を作り、5〜6小節でIV7、7〜8小節でI7に戻します。12小節の前半だけを切り出した形で、9小節目以降はターンアラウンドまで含めて後から足します。

シャッフルのハイハットは、表を強く裏を弱く打ちます。裏を表と同じ強さにすると、跳ねていても重く聞こえません。ベースとギターにも同じ量の跳ねをかけないと、ドラムだけが踊っている状態になります。

ベースの置き方

低音は大きさではなく、長さと場所で整理します。

ベースは、ルート・3度・5度・6度を往復するウォーキング寄りのライン。コードチェンジの直前に半音の経過音を置く。低音は曲の重さを作りますが、長く鳴らしすぎるとキックやコードの低域を隠します。

ベースを大きくすると、7thコードの濁りが低域に溜まって重くなります。このジャンルのベースは、ルート・3度・5度・6度を往復する動きで聞かせます。音量より、コードの変わり目へ向かう半音の経過音を大事にしてください。

ベースはルートと5度だけで12小節を1周させます。次に、コードが変わる直前の1音を半音下か半音上の経過音にします。ウォーキングのように全部の拍を動かすのは、それができてからで十分です。

書き出したら、小さい音量で跳ねが残っているかを聞いてください。大きい音では跳ねて聞こえても、小さい音で均一な8分に聞こえるなら、遅らせる量が足りていません。裏の位置をもう少し後ろへずらします。

コードの組み方

難しいコードより、メロディが乗る場所を作ります。

コードは、I7-IV7-V7の12小節進行。すべてセブンスコードにし、最後の2小節をターンアラウンドにする。コード進行は知識を見せる場所ではなく、メロディと展開を支える場所です。

テンションコードや借用和音を使う場合も、名前を覚えることが目的ではありません。音の色が変わる場所を耳で確認し、必要な場所だけに置きます。

レッスンでは、理論を説明する前にコードの響きを鳴らして、明るい、暗い、浮く、戻る、という体感を確認することがあります。進行を丸暗記するより、耳で違いを聞けるほうが制作に使いやすいからです。

8小節では、同じ進行を2回繰り返しても構いません。2回目だけ上物を変えたり、最後のコードを少し変えたりすると、曲が次へ進む感じを作れます。

メロディとフック

覚えやすい形を先に作り、細かい装飾は後から足します。

メロディは、ブルーノート(短3度・減5度・短7度)を混ぜたペンタトニック。コール&レスポンスで2小節ずつ問いと答えにする。ジャンルらしさを出そうとして音数を増やす前に、何度も出せる短い形を作ります。

サビや主題になる場所では、最初の1音が重要です。高い音にするのか、短い反復にするのか、長く伸ばすのかを決めると、伴奏の置き方も決まります。

メロディが弱い時は、音程を増やすよりリズムを見ます。同じ音でも、入る位置や伸ばす長さが変わるだけで、かなり印象が変わります。

歌ものの場合は、言葉が自然に入るかを必ず確認します。インストの場合も、リードが歌える形になっているかを口でなぞると判断しやすくなります。

音色の選び方

プリセット探しより、曲の役割で音を選びます。

音色は、クリーン寄りのエレキギター、ピアノ、ウッドベース風のベース、ブラシのドラム、ハーモニカを出発点にします。見るのは音色の数ではなく、前に出る音、支える音、空間を作る音を分けることです。

プリセットを探し始めると、制作が止まりやすくなります。まず仮音色でコードとリズムを置き、曲の形が見えた後で差し替えます。

商業音楽の制作でも、最初から最終音色だけで進むとは限りません。仮のピアノ、仮のドラム、仮のベースで構成を見てから、必要な質感へ寄せていきます。

音色を変えたら、必ず音量も見直します。派手な音は大きく聞こえやすいため、良くなったのか大きくなっただけなのかを分けて判断します。

8小節の制作マップ

短い範囲で完成の入口を作り、次の展開へ渡します。

最初の8小節は、完成品ではなく制作の地図です。1小節目で土台を見せ、3小節目で少し変化し、7〜8小節目で次のセクションへ渡します。

A案として、1〜4小節は基本パターン、5〜8小節はドラムか上物を一つ増やします。B案として、1〜4小節は少なめ、5〜8小節でメロディを少し上げます。

この時点でミックスを作り込みすぎる必要はありません。音量バランスだけ整え、各パートの役割が聞こえるかを確認します。

制作で重視しているのは、頭の中のイメージを聞ける形に出すことです。8小節でよいので外に出すと、直す場所が具体的になります。

8小節から先へ広げる目安
段階長さやることこのジャンルでの具体
1周目8小節骨格だけを置くシャッフルのドラムとルート・5度のベースだけ。12小節の前半8小節(I7→IV7→I7)
2周目16小節抜き差しで変化を作る9〜12小節目のV7とターンアラウンドを足して1周させる。ギターはまだ入れない
展開32小節場面を足す2周目でギターのバッキングを足す。3周目でソロ。ブレイクは12小節目の最後だけ
フル尺64小節〜曲として通す3〜4周(36〜48小節)。3分前後。歌→ソロ→歌の順で、最後は必ずターンアラウンドで止める

長さや小節数はあくまで目安です。大事なのは順番で、 8小節が気持ちよく回らないうちに長さを足さないこと。 伸ばしてから直すより、8小節に戻って直すほうが早く終わります。

上の表の2周目のやり方(抜き差しで変化を作る)を音にしました。 2本とも16小節・同じ音量で、前半8小節は1音も違いません。 変えたのは9小節目から先だけです。

① そのままくり返した版同じ2小節を16小節ぶん

8小節を過ぎたあたりから、耳が先を予測してしまいます。手は動いているのに曲が進んでいない状態です。

② 9小節目から抜き差しした版足すのではなく、消して戻す

9〜12小節目で次の1拍目へ向かうキックが足され、13〜14小節目でハイハットが消えます。ストップタイムのように、キックとスネアだけになった2小節で跳ねの骨組みが見えます。

条件:BPM 90/16小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

ブルースの16小節の構成図。9〜12小節目にキックの打点が増え、13〜14小節目でハイハットが無くなっている
②の構成図です。帯が高いところほど、その小節の打点が多いことを表しています。 新しい楽器を足したわけではなく、もとからある音を増やしたり消したりしているだけです。 鳴っているキック・スネア・ハイハットは、登録なしで配っています

崩れやすい場所

ジャンルらしさを足すほど、曲の芯が消えることがあります。

このジャンルで崩れやすいのは、3コードを順番に置いただけで、跳ねが均一な8分のまま残り、ロックにもポップスにも聞こえてしまうことです。ジャンル名に寄せるほど、音色や装飾に意識が行き、曲の骨格が弱くなることがあります。

対策は、ドラム、ベース、コード、メロディを一度ミュートしながら聞くことです。どれか一つを消した時に曲が急に弱くなるなら、そのパートが支えすぎています。

また、同じ場所を長時間触り続けると、判断が鈍ります。15分ごとに書き出して聞き、次に直す一点だけを決めると、作業が散らかりにくくなります。

生徒の制作でも、うまくいかない原因はセンスより工程の混線であることが多いです。いま直しているのがリズムなのか、音色なのか、構成なのかを分けるだけで進みます。

ミックス前の確認

音圧を上げる前に、役割が聞こえるかを確認します。

ミックスでは、最初から音圧を狙いません。まず音量、左右、低域のぶつかり、主役の聞こえ方を見ます。

12小節目で頭に戻る感じが出ているか、跳ねの量がパートごとに違っていないか、7thの濁りが低域に溜まっていないかを確認する。この確認が終わる前にEQやコンプレッサーを深く触ると、原因が見えにくくなります。

EQはソロで決めきらず、全体再生中に動かします。特に中域はメロディ、コード、ギター、シンセが奪い合いやすいため、単体で良い音より全体で必要な音を優先します。

最後に、同じ音量で変更前と変更後を書き出して聞きます。大きい音は良く聞こえるため、音量差をそろえないと判断を間違えます。

完成へ進める基準

完璧さではなく、次の工程へ渡せるかで判断します。

8小節ができたら、完成度ではなく次へ渡せる状態かを見ます。ドラム、ベース、コード、メロディの役割が聞こえ、次のセクションへ進む理由があれば十分です。

次は16小節、32小節、ワンコーラスへ広げます。広げる時は新しい音を増やすだけでなく、音を抜く場所も作ります。抜く場所があるから、サビやクライマックスが強く聞こえます。

制作ログには、今日のテンポ、使ったコード、残した音色、次に直す一点を書きます。長い反省より、再開できるメモのほうが役に立ちます。

検索に戻る場合も、ジャンル名だけではなく、キック、ベース、コード、メロディ、ミックスのどこで止まったのかを言葉にします。検索語が具体的になるほど、次に読む記事も選びやすくなります。

ブルースの制作レシピ表

表は丸暗記ではなく、8小節を作る時の確認順として使います。

項目最初に置くもの注意点
BPM80〜100 BPMのミドルテンポを目安にし、最初は90 BPM前後から試す数字は固定ではなく、体感と音数で調整する
ドラムキックは1拍目と3拍目、スネアは2拍目と4拍目。ハイハットは8分をシャッフルさせ、裏を弱くするフィルより骨格を先に置く
ベースルート・3度・5度・6度を往復するウォーキング寄りのライン。コードチェンジの直前に半音の経過音を置く低音は長さと場所を決める
コードI7-IV7-V7の12小節進行。すべてセブンスコードにし、最後の2小節をターンアラウンドにする難しさよりメロディの居場所を優先する
メロディブルーノート(短3度・減5度・短7度)を混ぜたペンタトニック。コール&レスポンスで2小節ずつ問いと答えにする短いフックを作って反復できる形にする
音色クリーン寄りのエレキギター、ピアノ、ウッドベース風のベース、ブラシのドラム、ハーモニカ前に出る音、支える音、空間の音を分ける

よくある疑問

初心者はどこから作ればいいですか

音色探しではなく、BPM、ドラム、ベース、コード、メロディの順で8小節だけ作るのがおすすめです。

ジャンルらしさは何で決まりますか

BPMだけでは決まりません。ドラムの置き方、ベースの長さ、コードの色、メロディの音数、音色の役割が合わさって決まります。

ミックスはいつ始めますか

8小節の骨格が聞こえてから始めます。最初は音量と低域の整理だけで十分です。

記事通りに作れば同じジャンルになりますか

記事の数値は固定値ではなく出発点です。作りたい曲の速度、歌、音色に合わせて調整してください。

次に進む記事

ジャンルの方向が見えたら、止まっている工程に近い記事へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ

UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。