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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

カントリーの作り方|トレインビートとアコギをDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

カントリー風の曲を作りたいが、アコギを鳴らしてもフォークやポップスとの違いが出ない人へ向けて、ジャンル名の説明ではなく、DAW上で8小節を組む順番に落とします。BPM、ドラム、ベース、コード、メロディ、音色を分けて、書き出して聞ける状態まで進めます。

読み終わったら、まず音を出す、再生する、保存する、短く書き出す、次に確認する一点を決めるところまで進めます。完成度を採点する前に、同じ手順をもう一度再現できるかを見ます。制作中に迷ったら、画面の中で悩み続けず、8小節を書き出して普通の再生環境で聞きます。

制作の軸

カントリーは、音色探しより先に8小節の役割を決めます。

  • BPMと体感を分けて決める
  • キック、ベース、コード、メロディの順に置く
  • ジャンルらしい装飾は骨格の後に足す
  • 同じ音量で書き出して判断する

この記事が扱う範囲

扱うもの
BPM120前後のカントリー。トレインビートのドラムと、ルートと5度を往復するベース
扱わないもの
ブルーグラスの速い曲や、フィドル・ペダルスチールの奏法そのもの
所要時間の目安
8小節のドラムとベースができるまで約30分
まず鳴らす1音
スネアの16分だけを1小節。2拍目と4拍目だけ強く

DAWはCubaseを想定していますが、手順はどのDAWでも同じです。 記事内のMIDIとデモ音源も、DAWを問わず使えます。

今日やること

8小節だけ作り、保存して、書き出して、次に直す一点を決めます。

  • 仮音色でドラム、ベース、コード、メロディを置く
  • 4小節目と8小節目に小さな変化を入れる
  • 変更前と変更後を別名保存する
  • スマホや小さい音量で再生して、次の修正点を一つだけ書く

最初に決めること

ジャンル名ではなく、曲の速度、主役、8小節の到達点を先に決めます。

カントリーの作り方で最初に見るのは、音色の名前ではありません。カントリー風の曲を作りたいが、アコギを鳴らしてもフォークやポップスとの違いが出ない人にとって必要なのは、今日のDAW画面で何を置けば前に進むかです。

テンポは、100〜130 BPMを目安にし、最初は120 BPM前後から試す。この範囲は絶対値ではなく、最初に手を動かすための目安です。曲の狙い、歌の言葉数、ドラムの細かさによって、同じジャンルでもかなり変わります。

最初の8小節では、完成形を狙いすぎません。ドラム、ベース、コード、メロディの4段だけを置き、曲の方向が聞こえるかを確認します。音色探しはその後で十分です。

作曲や編曲の現場でも、すべての音を一度に正解へ持っていくわけではありません。まず骨格を外に出し、聞き返しながら必要な音だけを残します。

BPMと体感を分ける

数値を決めたら、速さの印象がどこから出ているかを分けます。

100〜130 BPMを目安にし、最初は120 BPM前後から試す。ただし、BPMの数字だけでジャンルらしさは決まりません。速く聞こえる理由は、ドラムの刻み、ベースの長さ、メロディの音数、コードの切り替わり方に分かれます。

BPMを上げても列車のような推進力は出ません。カントリーの転がる感じは、スネアを16分で刻むトレインビートから出ます。120のまま、スネアを2・4拍だけから16分の刻みへ変えて聞き比べてください。キックとハイハットは同じままです。

テンポを動かす前に、スネアの刻みを動かしてみてください。同じ120でも、スネアが2・4拍だけならフォークやポップスに、16分で刻めば前へ転がるカントリーになります。テンポは歌える速さで決めれば十分です。

フィドルやスチールギターを探す前に、ベースの1・5の往復とスネアの刻みだけで2小節を回してください。この2つが噛み合っていれば、上に乗るアコギは3つのコードで足ります。噛み合っていなければ、楽器を足しても止まったままです。

ドラムの骨格

派手なフィルより、キックとスネアの位置を先に固定します。

※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や、実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。

アコギを鳴らしてもフォークと変わらないとき、足りないのはスネアの刻みです。 BPM120で、キックとハイハットは2本とも同じ。変えたのはスネアだけです。

① スネアを2拍目と4拍目だけにした場合1小節に2発

普通の8ビートです。アコギを乗せるとフォークやポップスに聞こえます。

② スネアを16分で刻んだ場合1小節に16発。2拍目と4拍目だけ強く、残りは弱く

列車が走るように前へ転がります。強い2発は①と同じ位置で、その間を弱い打点で埋めただけです。

条件:BPM 120/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

カントリーのトレインビートのピアノロール。スネアが16分で並び、2拍目と4拍目だけ背が高い
②のピアノロールです。スネアが16分で埋まり、2拍目と4拍目だけが高く、残りは低い打点になっています。

弱い打点はブラシで撫でるくらいまで下げてください。 弱いほうが強すぎると、マーチのスネアロールになって歌の邪魔をします。

ドラムは、キックは1拍目と3拍目。スネアは16分で刻み、2拍目と4拍目だけ強く叩いて残りはブラシのような弱さにする。最初の段階では、細かいフィルや装飾よりも、どこで体が前に進むかを決めます。

ベースの1拍目と3拍目に対して、スネアを16分で細かく刻むトレインビート。前に転がる感じを作る。このグルーヴの方向を決めずにハットやパーカッションを増やすと、音は多いのに曲が進まない状態になります。

8小節なら、1〜4小節はキックとベースの往復にスネアの刻みを乗せ、5〜8小節でアコギのストロークを足します。8小節目の4拍目でスネアの刻みを一度止めると、次の1拍目で列車が動き出す感じになります。

トレインビートのスネアは、2拍目と4拍目だけを強く、残りはブラシで撫でるような弱さにします。16個すべてを同じ強さで打つと、マーチのスネアロールになってしまいます。強い2つと弱い14個の差が、このビートの正体です。

ベースの置き方

低音は大きさではなく、長さと場所で整理します。

ベースは、ルートと5度を交互に弾く2ビート。1拍目にルート、3拍目に5度を置き、コードの変わり目に経過音を入れる。低音は曲の重さを作りますが、長く鳴らしすぎるとキックやコードの低域を隠します。

ベースを大きくすると、ルートと5度の往復がキックと重なって低域が膨らみます。このジャンルのベースは、1拍目にルート、3拍目に5度を短く置く動きで聞かせます。音量より、往復がはっきり聞こえることを優先してください。

ベースは1拍目にルート、3拍目に5度を置く2ビートだけで8小節を作ります。次に、コードが変わる直前の1音だけを経過音にします。ウォーキングのように動かすのは、この往復が体に入ってからで十分です。

書き出したら、小さい音量でスネアの刻みが歌の邪魔をしていないかを聞いてください。歌の言葉が聞き取りにくいなら、弱い14個のスネアが強すぎます。弱いほうをさらに下げ、強い2つだけを残します。

コードの組み方

難しいコードより、メロディが乗る場所を作ります。

コードは、I-IV-Vを中心に、I-V-vi-IV も使う。テンションは避け、トライアドのままにする。コード進行は知識を見せる場所ではなく、メロディと展開を支える場所です。

テンションコードや借用和音を使う場合も、名前を覚えることが目的ではありません。音の色が変わる場所を耳で確認し、必要な場所だけに置きます。

レッスンでは、理論を説明する前にコードの響きを鳴らして、明るい、暗い、浮く、戻る、という体感を確認することがあります。進行を丸暗記するより、耳で違いを聞けるほうが制作に使いやすいからです。

8小節では、同じ進行を2回繰り返しても構いません。2回目だけ上物を変えたり、最後のコードを少し変えたりすると、曲が次へ進む感じを作れます。

メロディとフック

覚えやすい形を先に作り、細かい装飾は後から足します。

メロディは、歌詞が主役なので音域を狭くし、語尾を落とす。フィドルやスチールギターの合いの手をフレーズの間に置く。ジャンルらしさを出そうとして音数を増やす前に、何度も出せる短い形を作ります。

サビや主題になる場所では、最初の1音が重要です。高い音にするのか、短い反復にするのか、長く伸ばすのかを決めると、伴奏の置き方も決まります。

メロディが弱い時は、音程を増やすよりリズムを見ます。同じ音でも、入る位置や伸ばす長さが変わるだけで、かなり印象が変わります。

歌ものの場合は、言葉が自然に入るかを必ず確認します。インストの場合も、リードが歌える形になっているかを口でなぞると判断しやすくなります。

音色の選び方

プリセット探しより、曲の役割で音を選びます。

音色は、アコースティックギター(ストローク)、テレキャスター風のクリーンギター、フィドル、ペダルスチール、ブラシのドラムを出発点にします。見るのは音色の数ではなく、前に出る音、支える音、空間を作る音を分けることです。

プリセットを探し始めると、制作が止まりやすくなります。まず仮音色でコードとリズムを置き、曲の形が見えた後で差し替えます。

商業音楽の制作でも、最初から最終音色だけで進むとは限りません。仮のピアノ、仮のドラム、仮のベースで構成を見てから、必要な質感へ寄せていきます。

音色を変えたら、必ず音量も見直します。派手な音は大きく聞こえやすいため、良くなったのか大きくなっただけなのかを分けて判断します。

8小節の制作マップ

短い範囲で完成の入口を作り、次の展開へ渡します。

最初の8小節は、完成品ではなく制作の地図です。1小節目で土台を見せ、3小節目で少し変化し、7〜8小節目で次のセクションへ渡します。

A案として、1〜4小節は基本パターン、5〜8小節はドラムか上物を一つ増やします。B案として、1〜4小節は少なめ、5〜8小節でメロディを少し上げます。

この時点でミックスを作り込みすぎる必要はありません。音量バランスだけ整え、各パートの役割が聞こえるかを確認します。

制作で重視しているのは、頭の中のイメージを聞ける形に出すことです。8小節でよいので外に出すと、直す場所が具体的になります。

8小節から先へ広げる目安
段階長さやることこのジャンルでの具体
1周目8小節骨格だけを置くキック・トレインビートのスネア・ルートと5度を往復するベースだけ
2周目16小節抜き差しで変化を作るアコギのストロークを足す。裏拍のオープンハットは2小節に1回
展開32小節場面を足すフィドルかスチールギターの合いの手をフレーズの間に。ブレイクはスネアの刻みを止める
フル尺64小節〜曲として通すイントロ8・A16・サビ8を2回・間奏8・サビ。3分前後

長さや小節数はあくまで目安です。大事なのは順番で、 8小節が気持ちよく回らないうちに長さを足さないこと。 伸ばしてから直すより、8小節に戻って直すほうが早く終わります。

上の表の2周目のやり方(抜き差しで変化を作る)を音にしました。 2本とも16小節・同じ音量で、前半8小節は1音も違いません。 変えたのは9小節目から先だけです。

① そのままくり返した版同じ2小節を16小節ぶん

8小節を過ぎたあたりから、耳が先を予測してしまいます。手は動いているのに曲が進んでいない状態です。

② 9小節目から抜き差しした版足すのではなく、消して戻す

9〜12小節目で2拍目と4拍目の裏にオープンハットが入り、13〜14小節目でスネアの刻みが止まります。列車が一度止まって、15小節目で走り出す感じです。

条件:BPM 120/16小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

カントリーの16小節の構成図。9〜12小節目にオープンハットが入り、13〜14小節目でスネアが無くなっている
②の構成図です。帯が高いところほど、その小節の打点が多いことを表しています。 新しい楽器を足したわけではなく、もとからある音を増やしたり消したりしているだけです。 鳴っているキック・スネア・ハイハットは、登録なしで配っています

崩れやすい場所

ジャンルらしさを足すほど、曲の芯が消えることがあります。

このジャンルで崩れやすいのは、アコギをストロークで鳴らすだけになり、ベースが動かずスネアも2・4だけで、フォークソングと区別がつかないことです。ジャンル名に寄せるほど、音色や装飾に意識が行き、曲の骨格が弱くなることがあります。

対策は、ドラム、ベース、コード、メロディを一度ミュートしながら聞くことです。どれか一つを消した時に曲が急に弱くなるなら、そのパートが支えすぎています。

また、同じ場所を長時間触り続けると、判断が鈍ります。15分ごとに書き出して聞き、次に直す一点だけを決めると、作業が散らかりにくくなります。

生徒の制作でも、うまくいかない原因はセンスより工程の混線であることが多いです。いま直しているのがリズムなのか、音色なのか、構成なのかを分けるだけで進みます。

ミックス前の確認

音圧を上げる前に、役割が聞こえるかを確認します。

ミックスでは、最初から音圧を狙いません。まず音量、左右、低域のぶつかり、主役の聞こえ方を見ます。

ベースの1・5の往復が聞こえるか、スネアの16分が主役の歌を邪魔していないか、アコギのストロークが低域を埋めていないかを確認する。この確認が終わる前にEQやコンプレッサーを深く触ると、原因が見えにくくなります。

EQはソロで決めきらず、全体再生中に動かします。特に中域はメロディ、コード、ギター、シンセが奪い合いやすいため、単体で良い音より全体で必要な音を優先します。

最後に、同じ音量で変更前と変更後を書き出して聞きます。大きい音は良く聞こえるため、音量差をそろえないと判断を間違えます。

完成へ進める基準

完璧さではなく、次の工程へ渡せるかで判断します。

8小節ができたら、完成度ではなく次へ渡せる状態かを見ます。ドラム、ベース、コード、メロディの役割が聞こえ、次のセクションへ進む理由があれば十分です。

次は16小節、32小節、ワンコーラスへ広げます。広げる時は新しい音を増やすだけでなく、音を抜く場所も作ります。抜く場所があるから、サビやクライマックスが強く聞こえます。

制作ログには、今日のテンポ、使ったコード、残した音色、次に直す一点を書きます。長い反省より、再開できるメモのほうが役に立ちます。

検索に戻る場合も、ジャンル名だけではなく、キック、ベース、コード、メロディ、ミックスのどこで止まったのかを言葉にします。検索語が具体的になるほど、次に読む記事も選びやすくなります。

カントリーの制作レシピ表

表は丸暗記ではなく、8小節を作る時の確認順として使います。

項目最初に置くもの注意点
BPM100〜130 BPMを目安にし、最初は120 BPM前後から試す数字は固定ではなく、体感と音数で調整する
ドラムキックは1拍目と3拍目。スネアは16分で刻み、2拍目と4拍目だけ強く叩いて残りはブラシのような弱さにするフィルより骨格を先に置く
ベースルートと5度を交互に弾く2ビート。1拍目にルート、3拍目に5度を置き、コードの変わり目に経過音を入れる低音は長さと場所を決める
コードI-IV-Vを中心に、I-V-vi-IV も使う。テンションは避け、トライアドのままにする難しさよりメロディの居場所を優先する
メロディ歌詞が主役なので音域を狭くし、語尾を落とす。フィドルやスチールギターの合いの手をフレーズの間に置く短いフックを作って反復できる形にする
音色アコースティックギター(ストローク)、テレキャスター風のクリーンギター、フィドル、ペダルスチール、ブラシのドラム前に出る音、支える音、空間の音を分ける

よくある疑問

初心者はどこから作ればいいですか

音色探しではなく、BPM、ドラム、ベース、コード、メロディの順で8小節だけ作るのがおすすめです。

ジャンルらしさは何で決まりますか

BPMだけでは決まりません。ドラムの置き方、ベースの長さ、コードの色、メロディの音数、音色の役割が合わさって決まります。

ミックスはいつ始めますか

8小節の骨格が聞こえてから始めます。最初は音量と低域の整理だけで十分です。

記事通りに作れば同じジャンルになりますか

記事の数値は固定値ではなく出発点です。作りたい曲の速度、歌、音色に合わせて調整してください。

次に進む記事

ジャンルの方向が見えたら、止まっている工程に近い記事へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ

UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。