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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

レゲエ風楽曲の作り方|裏拍とベースをDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

レゲエ風の曲を打ち込みで作ろうとすると、多くの人が最初のドラムでつまずきます。1拍目にキックを置く習慣が体に染みついているからです。

レゲエのリズムは、その1拍目を空けるところから始まります。ギターは裏拍だけを刻み、ベースはどのパートより太く前に出る。

普段の曲作りとは主役の位置が逆なのです。

必要なのはDAWと、付属のドラム、ベース、ギター、鍵盤系の音源だけです。

ゆったりしたBPMを決め、ワンドロップのドラムを置き、裏拍の刻みを重ね、最後にベースへ主役を渡す。8小節までの手順を順番に説明します。

先に見ること

レゲエ風は「1拍目を空けるドラム×裏拍の刻み×主役のベース」です。

  • BPMは70〜90が目安。まず75で
  • キックとスネアは3拍目に。1拍目は空ける
  • ギターと鍵盤は裏拍だけを短く刻む
  • ベースには一番手をかけ、一番大きく置く

主役はベース

力の配分を、最初に普段と入れ替えます。

ポップスでは、ベースは歌やメロディを支える脇役です。レゲエでは立場が逆転します。

この音楽を聞いた人が覚えて帰るのは、歌よりもコードよりも、低音の旋律です。ベースラインが曲の顔になります。

だから制作の力配分も入れ替えます。ドラムとギターの刻みは型どおりのシンプルなもので構いません。

時間をかけるのはベースです。音色選びも、フレーズを練る時間も、ミックスでの音量も、ベースを最優先にします。

この前提を先に決めておくと、後の工程で迷いません。何か音を足したくなったら、「それはベースより目立たないか」を確かめてから足します。

BPMと間

遅さを我慢するのではなく、遅さを聞かせます。

70〜90あたりが目安です。まず75に設定してください。ポップスの感覚ではかなり遅く感じるはずですが、その遅さが正解です。

レゲエのノリは、音と音のあいだの「間」が広いことでできています。

BPMが遅いと、裏拍の刻みから次の刻みまでに長い空白が生まれます。この空白を埋めたくなるのを我慢して、広い間をそのまま聞かせるのがこのジャンルの流儀です。

速くすると裏拍の刻みが忙しくなり、スカという別のジャンルの方向へ近づいていきます。それも面白い音楽ですが、今回はゆったり側に留まります。

4小節作ったらテンポを5ずつ下げて聞き比べ、重心が一番低く感じる速さを選んでください。

ワンドロップのドラム

一番強いはずの1拍目を、あえて空白にします。

レゲエの代表的なドラムパターンがワンドロップです。形は思い切っています。ふつう一番強く踏む1拍目に、キックもスネアも置きません。

頭を空白のまま落とす(ドロップする)ので、この名前が付いています。

置くのは3拍目です。ここにキックと、スネアの縁を叩いた「カッ」という短い音(リムショット)を同時に重ねます。

ハイハットは8分で「チ・チ・チ・チ」と軽く刻む。口で歌うなら「(ん)・チ・ドカッ・チ」。1小節に必要なのはこれだけです。

1拍目が空いていることに、最初は不安になります。しかしこの空白こそが、あとから入るベースとギターの居場所です。

フィルや追加のキックで埋めないでください。埋めた瞬間に、普通の8ビートへ戻ってしまいます。

ベロシティは全体に控えめにします。レゲエのドラムは曲を引っ張る係ではなく、ゆったりした時間を正確に測る係です。

※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。

レゲエのドラムは、足し算ではなく引き算でできています。2本ともBPM75で、置き方だけを変えました。

① 比較用の8ビートキックが1拍目と3拍目

レゲエの型ではなく、違いを聞くための土台です。1拍目にキックが来るので、拍の頭がはっきりします。

② ワンドロップ1拍目を空け、3拍目にキックとスネアを同時に

この例では1拍目にキックもスネアも置いていません。頭が抜けたぶん、体は3拍目を待つようになります。この待ち時間がレゲエの「間」です。

条件:BPM 75/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

ワンドロップのピアノロール。1拍目にキックもスネアも無く、3拍目に両方が重なっている
②のピアノロールです。1拍目の列が空いていることが見て取れます。

レゲエにはステッパーズのように1拍目を踏む型もあり、ワンドロップだけがレゲエではありません。ただしこの重心の違いは、速さではなく打点の位置から出ています。まずは75のまま、置く場所だけを動かして比べてみてください。

裏拍のギターと鍵盤

表ではなく裏だけを、短く刻みます。

次に、レゲエの看板である裏拍の刻みです。裏拍とは、「1・2・3・4」と数えるときの「と」の位置、つまり拍と拍のあいだのことです。

ギター音源でコードの音を、この裏の位置(1と、2と、3と、4と)だけに置きます。

ノートの長さは16分音符くらいまで詰めます。伸びずに「チャッ」と切れる歯切れが命です。

オルガンなど鍵盤系の音源があれば、同じ裏拍にもう1枚薄く重ねると、刻みに厚みが出ます。

コード進行は2つで足ります。たとえばAmとDmを2小節ずつ。

レゲエはコードの変化で聞かせる音楽ではないので、進行を凝るより、刻みの短さと粒の揃い方に気を配る方がずっと効果があります。

表拍に何もないことが気持ち悪く感じるなら、まだ耳が裏拍に慣れていない証拠です。

表を刻むハイハットを聞きながら、裏で鳴るギターのループを何周も再生してください。慣れてくると、裏の刻みだけで時間を数えられるようになります。

ベースラインの作り方

主役のパートに、一番長い時間をかけます。

いよいよ主役のベースです。音色は太く丸く、伸びのあるものを選びます。エレキベースの低い弦を指でつかむように弾いた、輪郭のやわらかい音が理想です。

フレーズは1小節か2小節の形を作って繰り返します。コードのルート音から始めて、コードの中の音(3度や5度)を経由して戻ってくる、口ずさめる形にします。

そして途中に休符を1カ所。ドラムの3拍目とぶつからない場所で一度黙ると、ドラムとベースの掛け合いが生まれます。

音量の決め方には、レッスンで使っている判断メモの、ドラム、ベース、ギターや鍵盤、上物、ボーカルのように低い音域から高い音域へ順番に聞くとバランスを取りやすい、という基準がそのまま使えます。

レゲエではこの順番が曲の中の序列とほぼ一致します。まずドラムとベースの2つだけで音量を決めきり、ギターの刻みはその上に乗せてもらう音量で加えます。

仕上げにベースをソロで再生してみてください。ベースだけで曲の流れが分かるなら合格です。

分からないなら、フレーズがまだ景色の一部で、主役になっていません。

最初の8小節の手順

置く順番と、口で歌ったときの目安です。

順番やること目安
1BPMを設定まず75。5ずつ下げて重心を探す
2ワンドロップを4小節(ん)・チ・ドカッ・チ
3ギターの裏拍刻み全部の裏に短くチャッ
4鍵盤を薄く重ねる同じ裏拍にもう1枚
5ベースラインを作る休符入りの口ずさめる2小節
6音量を下から決めるドラム→ベース→刻みの順
78小節にして書き出しベースが主役に聞こえるか

7番の確認は、できればヘッドホンで行ってください。

主役であるベースの帯域は小さいスピーカーでは痩せてしまうため、まず低音の聞こえる環境で全体の序列を確かめます。そのうえでスマホでも聞き、ベースの輪郭が残っているかを見ます。

8小節から先へ広げる目安
段階長さやることこのジャンルでの具体
1周目8小節骨格だけを置く1拍目を空けたワンドロップだけ。ここで「間」が出ていないと後で足しても直らない
2周目16小節抜き差しで変化を作る裏拍の刻みを16分に細かくする。キックとスネアの位置は動かさない
展開32小節場面を足すベースを2小節でひとまとまりにする。歌より先にベースで展開を作る
フル尺64小節〜曲として通す間を潰さないまま3〜4分。音を足したくなったら、代わりに1つ抜く

長さや小節数はあくまで目安です。大事なのは順番で、 8小節が気持ちよく回らないうちに長さを足さないこと。 伸ばしてから直すより、8小節に戻って直すほうが早く終わります。

上の表の2周目のやり方(抜き差しで変化を作る)を音にしました。 2本とも16小節・同じ音量で、前半8小節は1音も違いません。 変えたのは9小節目から先だけです。

① そのままくり返した版同じ2小節を16小節ぶん

8小節を過ぎたあたりから、耳が先を予測してしまいます。手は動いているのに曲が進んでいない状態です。

② 9小節目から抜き差しした版足すのではなく、消して戻す

9〜12小節目で裏拍の刻みが16分に細かくなり、13〜14小節目でスネアが消えます。1拍目を空けたままなので、抜いても「間」は崩れません。

条件:BPM 75/16小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

レゲエの16小節の構成図。9〜12小節目でハイハットの打点が増え、13〜14小節目でスネアが無くなっている
②の構成図です。帯が高いところほど、その小節の打点が多いことを表しています。 新しい楽器を足したわけではなく、もとからある音を増やしたり消したりしているだけです。 鳴っているキック・スネア・ハイハットは、登録なしで配っています。

構成とミックスの注意

展開は引き算で作り、刻みの音量で主役を守ります。

8小節から先の構成は、足すよりも抜くことで作ります。

16小節目でギターの刻みを丸ごと抜き、ドラムとベースだけの小節を作る。逆にベースを2小節だけ黙らせてから戻す。

ゆったりしたBPMの間があるおかげで、抜いた瞬間の静けさがそのまま演出として成立します。

ミックスで注意したいのは、裏拍の刻みを大きくしすぎないことです。ギターの「チャッ」は歯切れがよく耳につくので、つい持ち上げたくなります。しかし刻みを上げるほどベースが後ろへ下がり、主役が入れ替わってしまいます。

刻みは「鳴っているのに、意識しないと聞こえない」くらいが適量です。

ベースが堂々と鳴る8小節ができたら、歌やメロディを乗せて1曲へ育てる段階です。その先の順番は制作工程マップにまとめています。

よくある疑問

レゲエのBPMはいくつにすればいいですか

70〜90あたりが目安です。まず75に設定し、テンポを5ずつ下げながら聞いて、重心が一番低く感じる速さを選びます。速くすると別ジャンルの方向に近づくので、ゆったり側に留めます。

ワンドロップとは何ですか

1拍目にキックもスネアも置かず、3拍目にキックとリムショットを同時に重ねるレゲエの代表的なドラムパターンです。空けた1拍目が、ベースとギターの居場所になります。

裏拍がうまく刻めません

打ち込みなら位置は正確に置けるので、まず全部の裏に短いノートを機械的に置いてループ再生します。表拍のハイハットを聞きながら裏の刻みに慣れると、裏だけで時間を数えられるようになります。

ベースはどう作ればいいですか

太く丸い音色で、1〜2小節の口ずさめるフレーズを作って繰り返します。途中に休符を1カ所入れ、ドラムの3拍目とぶつからない場所で一度黙らせると、掛け合いが生まれます。

記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ

UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。

次に進む記事

裏拍に体が慣れてきたら、ベースとリズム隊を鍛える記事へ進みます。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。