ファンク風楽曲の作り方|ベースとカッティングをDTMで組む手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
ファンクらしさは、音をたくさん鳴らすことでは出ません。むしろ逆です。音と音のあいだの「隙間」がグルーヴを作ります。
ギターは短く切る。ベースは休みながら動く。ドラムは余計なことをしない。
この3つがかみ合うと、少ない音でも体が動く8小節になります。
用意するのはDAWと、付属のドラム音源、ベース音源、ギター系の音源だけで十分です。
BPMを決め、ドラム、ベース、カッティングの順に4小節を置き、8小節へ広げて書き出す。その流れを、口で歌えるリズムの形まで下ろして説明します。
先に見ること
ファンク風の骨組みは、鳴らす場所より休む場所で決まります。
- BPMは90〜115が目安。まず100で試す
- ドラムはタイトに。フィルより正確さ
- ベースは休符とゴーストノートで動かす
- ギターは16分で短く刻み、伸ばさない
隙間がグルーヴを作る
足し算ではなく、引き算で考えるジャンルです。
手拍子で試すと分かります。「チャ、チャ、チャ、チャ」と等間隔で叩き続けるより、「チャ、(休み)、チャチャ、(休み)」と休みを入れた方が、ノリが生まれます。
休んだ場所を耳が待つからです。ファンクはこの「待たせる時間」を各パートで作り合う音楽です。
だから打ち込みの発想も変わります。鳴らす音を決めるのと同じくらい、鳴らさない場所を決めます。
ドラム、ベース、ギターが全員で全部の拍を埋めると、忙しいのに重い、という残念な状態になります。
以降の各パートの説明でも、フレーズの形より先に休符の位置を扱います。どこが空いているかを聞き取れるようになると、ファンク風の打ち込みは一気に進みます。
BPMの目安
16分音符が気持ちよく回る速さを探します。
ファンク風の曲は、90〜115あたりのBPMで作られることが多いジャンルです。打ち込みに慣れていないうちは、まず100に設定してください。
このジャンルの主役は16分音符の刻みです。1拍を4つに割った細かい音符で、ギターもベースも動きます。
BPMが速すぎると16分が詰まって聞き取れなくなり、遅すぎると刻みが間延びします。
4小節できたところで、BPMを10ずつ上下させて聞き比べてみてください。刻みが転がるように聞こえる速さがあれば、それがその曲の正解です。
数字を先に決め込むより、耳で選ぶ方が早く決まります。
ドラムはタイトに置く
口で言えるパターンを、そのまま鍵盤に置き換えます。
ファンクのドラムはタイトです。タイトとは、音数が少なく、位置が正確で、余計な装飾がない状態のことです。
基本形はこれだけです。キックを「ドッ」、スネアを「タン」として、「ドッ・タン・ドド・タン」。1拍目と3拍目周辺にキック、2拍目と4拍目にスネアが来る形です。
レッスンで使っている判断メモに、ドラムは名前や譜面から入るより、口で言えるリズムから入る方が止まりにくい、というものがあります。
ドン、タン、ツツツと言えるものは、キック、スネア、ハイハットへそのまま置き換えられます。
ファンクではこれが特に効きます。口ずさんで体が動くパターンなら、打ち込んでも動きます。
ハイハットは16分の「ツクツクツクツク」で刻むか、あえて8分にして隙間を残すかの二択で考えてください。
強さの設定はスネアだけ強く、ハイハットは弱く。フィル(小節の変わり目のおかず)は8小節目まで我慢します。
ベースラインは休符から作る
動き回るベースほど、休む場所が先に決まっています。
ファンクのベースはよく動きます。ただし、作る順番は「動き」からではありません。先に休符です。
手順はこうです。まず各小節の1拍目に、コードのルート音(コードの土台になる音)を短く置きます。次に、小節の中で必ず空ける場所を1〜2カ所決めます。
動くのは、その残りの隙間だけです。
隙間に置くのは、8分や16分の短い音です。同じ音の連打、1オクターブ上への跳躍、次のコードへ向かう経過音。
この3種類だけでも十分ファンクらしく動きます。口で歌うと「ブン・(ウ)・ブブン・(ウ)」のような形です。
もうひとつの飾りがゴーストノートです。音程がほとんど聞こえないくらい小さく短い音のことで、打ち込みならベロシティ(音の強さ)をぐっと下げた16分を隙間に忍ばせます。
拍の間が細かく揺れて、ベースが呼吸しているように聞こえます。
全部の小節を動かす必要はありません。1〜3小節目は同じ形を繰り返し、4小節目だけ多めに動かす。
この配分の方が、ずっと動いているより動いて聞こえます。
16分のカッティングギター
上モノはこの刻みが中心です。コードは少なくて構いません。
カッティングとは、コードを短く切って刻むギターの奏法です。音を伸ばさず「チャカ・チャカ」と歯切れよく鳴らします。
打ち込みで再現する場合は、ギター音源でコードのノートを16分の位置に置き、ノートの長さを極端に短くします。
ここでも休符が主役です。16分を全部埋めると単なる連打になります。
「チャカ・(休み)・チャカチャカ・(休み)」のように、鳴る場所と空く場所の模様を作ってください。この模様も、まず口で歌ってから打ち込むと迷いません。
コード進行は凝らなくて大丈夫です。ファンクは1つか2つのコードで押し切る曲が多いジャンルで、セブンスや9thと呼ばれる少し濁った響きのコードを1発鳴らし続けるだけでも成立します。
進行で展開を作らないぶん、リズムの模様で聞かせます。
音源にミュート音(音程のない「チッ」というこすれた音)が入っていれば、刻みの隙間に混ぜてください。実際のカッティングは弦を触って消した音が大量に混ざっているので、これがあるだけで一気にそれらしくなります。
ブラスや鍵盤を足したい場合は、フレーズの合いの手として1〜2発にとどめます。
最初の8小節の手順
置く順番と、口で歌った時の目安です。
| 順番 | やること | 口で歌うと・目安 |
|---|---|---|
| 1 | BPMを設定 | まず100。後で耳で微調整 |
| 2 | ドラムを4小節 | ドッ・タン・ドド・タン |
| 3 | ベースを4小節 | ブン・(休)・ブブン・(休) |
| 4 | カッティングを重ねる | チャカ・(休)・チャカチャカ |
| 5 | 隙間の点検 | 全パート同時に埋まる拍を減らす |
| 6 | 8小節へ複製 | 後半に変化を1つだけ足す |
| 7 | 書き出して確認 | スマホの小さい音で聞く |
5番の点検が、このジャンルだけの工程です。ドラムとベースとギターが同じ拍で全部鳴っていないか、ソロやミュートで確かめます。
3パートが同時に埋めている拍があったら、どれか1つを削ります。
6番で8小節に伸ばす時の変化は1つで足ります。
後半だけハイハットを16分にする、ベースの8小節目を多めに動かす、カッティングの模様を半分だけ変える。どれか1つを選んでください。
構成とミックスの注意
展開はブレイクで作り、低音は長さで整理します。
8小節から先の構成は、コードを変えるより「ブレイク」と「キメ」で作ります。ブレイクは全員が一瞬止まる小節、キメは全員が同じリズムを一斉に弾く場所です。
16小節に伸ばすなら、8小節目の最後の1拍を全パート休みにしてみてください。止まった直後の1拍目が、驚くほど気持ちよくなります。
ミックスで注意する点を1つだけ挙げるなら、ベースとキックの低音のぶつかりです。両方が同時に長く鳴ると、低い帯域が団子になって刻みの輪郭が消えます。
エフェクトで直す前に、ベースのノートの長さを短くして、キックが鳴る瞬間はキックに譲ってください。ファンクのベースはもともと短い音の集まりなので、この整理はジャンルの方向とも一致します。
8小節が転がるように鳴ったら、そこから先はどのジャンルとも同じ工程です。展開を足し、構成を並べ、フルコーラスへ広げていきます。全体の流れは制作工程マップで確認できます。
よくある疑問
ファンクのBPMはいくつにすればいいですか
90〜115あたりが目安です。16分音符の刻みが主役のジャンルなので、まず100で4小節を作り、10ずつ上下させて刻みが気持ちよく聞こえる速さを探します。
ギターが弾けなくてもカッティングは作れますか
作れます。ギター音源のコードを16分の位置に短く置き、休符とミュート音を混ぜれば打ち込みでも刻みは再現できます。弾けるかどうかより、どこを休むかの設計が大事です。
ベースラインが動きすぎて曲が濁ります
先に休符の場所を決めてから音を置き直します。各小節の1拍目はルート音で着地し、動くのは隙間だけにすると、動いても濁りにくくなります。
ゴーストノートとは何ですか
音程がほとんど聞こえないくらい小さく短い音のことです。ベースやスネアの隙間に弱い16分を置くと、拍の間が細かく揺れてファンクらしいノリが出ます。
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