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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

フレンチハウスの作り方|サンプルを切ってフィルターで回す手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

フレンチハウスは、すでに鳴っている演奏の一部を短く切り取って、何度も回す音楽です。

新しいフレーズを思いつく時間より、どこで切るかを決める時間のほうが長くなります。

使う音は多くありません。4つ打ちのキック、クラップ、薄いハイハット、短く切ったループ、そしてフィルターが1つ。

BPMを決め、ループを切り、頭をキックに揃え、フィルターで16小節の波を作る。そこまでの手順を順番に説明します。

先に見ること

先に決めるのは、キックの音色ではなく、ループをどこで切るかです。

  • BPMは118〜125が目安。まず120で
  • ループの頭は、音が立ち上がる点をキックに合わせる
  • 16小節は、閉じて開いて閉じるフィルターの線で作る
  • ループの低音とベースは、どちらか一方だけ鳴らす

ディスコ素材を切って回す

作るのはフレーズではなく、回す2小節です。

このジャンルの中心にあるのは、ディスコやソウルの演奏のように、生の楽器が一緒に鳴っている音の塊です。そこから1〜2小節分だけを切り出して、そのまま何度も繰り返します。

切り出した中には、ギターのカッティング、鍵盤、管楽器、ベース、場合によってはドラムまで入っています。和音もリズムも質感も、この1枚に入っています。だから自分で足す音は少なくて済みます。

足りない音を探すより、入っている音を数えるところから始めます。ループにベースが入っているならベーストラックは要りません。和音が入っているならコードトラックも要りません。

素材の出どころには気をつけてください。市販されている曲や配信されている曲から切り出した音は、部屋で鳴らすだけなら自由ですが、公開すると権利の話になります。使うのは、権利上使ってよいループ素材か、自分で打ち込んだディスコ風の2小節です。

自分で作る場合も難しくありません。鍵盤の和音を4分で刻み、上にギター風の音を16分で入れ、ベースを8分で歩かせるだけで素材になります。うまく演奏する必要はありません。切って回す前提なので、2小節持てば足ります。

BPMの目安

数字より、2小節が気持ちよく回るかで決めます。

118〜125あたりが目安です。まず120に設定してください。

この速さは、素材の元になっている演奏の速さに近い場所です。ここから大きく離すと、ループを伸ばしたり縮めたりする必要が出て、音の芯が抜けます。

テンポを動かす前に、ループを何小節で回すかを決めてください。2小節で回すと演奏のように流れます。1小節に詰めると、同じ形が2倍の頻度で戻ってくるので、しつこいフックになります。

速く感じるなら、テンポを下げる前に16分のハイハットを間引きます。遅く感じるなら、ループの中で一番細かく動いている音が聞こえているかを確かめます。速さの印象は、数字ではなく刻みの細かさから来ています。

近いジャンルとの違い

同じ4つ打ちなので、素材の扱い方で見分けます。

ジャンルBPMの目安見分けるところ
この記事(フレンチハウス)118〜125切ったループが主役。フィルターの開閉が展開そのものになる
ハウス120〜128自分で組んだコードとベースが主役。ループは装飾
テックハウス122〜128音数をさらに絞り、低音の跳ね方で聞かせる
ディスコ110〜125切らずに演奏として通す。生の楽器の出入りが展開を作る

BPMの数字はどれも目安で、前後に幅があります。この4つは速さでは区別できません。右の列の「ループを切るのか、演奏として通すのか」を手がかりにしてください。

ループの頭をキックに揃える

波形を拡大して、音が立ち上がる点を探します。

この作業がこのジャンルで一番効きます。

素材を読み込むと、ファイルの先頭に小さな余白が入っていることがあります。画面の上では1拍目に置いたのに、実際に鳴り始めるのは少し後ろ。これだけでキックとループの頭が二重に聞こえます。

手順は3つです。1つ、波形を拡大して、音が立ち上がっている点を探す。2つ、その点をつまんで小節の頭、つまりキックが鳴る位置に合わせる。3つ、頭に残った余白は切り落とす。

逆に、ループの中の気持ちいい場所が1拍目に来ていないこともあります。その時は、切り出す開始点を16分音符1個分ずつ後ろへずらして、キックと一緒に前へ出る場所を探します。伸ばして合わせるのではなく、切り直して合わせます。

揃っているかどうかは、ループとキックだけを鳴らして判断できます。頭が1つの音として立ち上がっていれば合っています。2回に分かれて聞こえるなら、まだずれています。

ループの終わりも同じです。2小節ぴったりで切れていないと、繰り返すたびに少しずつ後ろへ流れます。1小節目の頭と3小節目の頭が同じ形で立ち上がるかを見てください。

フィルターの開閉で16小節を作る

音を足すのではなく、通す幅を変えて進めます。

このジャンルの展開は、楽器の出入りではなく、フィルターの開き具合で作ります。

使うのはローパスフィルターです。設定した高さより上の音を削る装置で、削り始める位置(カットオフ)を下げると、高い音から順に消えていきます。深く閉じると、隣の部屋から聞こえてくるような、低音だけの状態になります。

16小節の型を1つ覚えてください。1〜4小節は深く閉じる。5小節目で一気に開く。6〜12小節はそのまま回す。13〜16小節でゆっくり閉じ始める。

書く順番にコツがあります。先に開き切った状態を作り、そこから閉じる方向へ線を引きます。閉じた状態から開こうとすると、開いた瞬間の音量が想定より大きくなって、後でやり直しになります。

動かし方はオートメーションで書きます。カットオフの線を4小節かけて斜めに上げるだけで展開になります。折れ線にせず、まっすぐ引くほうがこのジャンルらしく聞こえます。

閉じる深さには下限を決めてください。閉じすぎると、小さいスピーカーでは何も鳴っていない区間になります。閉じている間も、キックの輪郭とループの低い成分が残っている位置で止めます。

※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や、実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。

16小節にすると、抜き差しの有無がそのまま「飽きるかどうか」になります。前半8小節は2本とも同じです。

③ 同じ2小節を8回繰り返した場合抜き差し無し

8小節を過ぎたあたりから、耳が先を読み始めます。

④ 9小節目から抜き差しした場合9〜12小節でオープンハットを足し、13〜14小節でクラップを抜く

足すより抜いたところで前に進みます。フィルターの開閉も同じ考え方で使います。

条件:BPM 120/16小節/前半8小節は2本とも同一。同じピーク値で書き出しています。

低音を二重にしない

下の音は、どちらが担当するかを決めます。

ループにベースが入っていることは多いです。そこへ自分のベースを足すと、同じ音域に低音が2本並びます。これが下が濁る一番の原因です。

決め方は2つのどちらかです。

1つ目は、ループの低音を使う方法です。ベースを足さず、キックとループだけで下を支えます。素材の演奏感がそのまま残るので、切り方が良いならこれで足ります。

2つ目は、自分のベースを主役にする方法です。ループ側にハイパスフィルター、つまり低い音を削る装置を掛けて低い成分を落としてから、別のトラックでベースを置きます。ベースはルートの音を8分で短く切り、キックと同時に鳴る音だけ抜きます。

どちらにするかは、ベースを一度ミュートして決めます。下が足りていれば1つ目。芯が無いと感じたら2つ目です。両方を鳴らす選択肢はありません。キックとベースのぶつかりそのものはキックとベースがぶつかる時の整理でも扱っています。

サイドチェインで吸わせる

音量を下げるのではなく、キックの頭を通す隙間を作ります。

キックとループが同時に鳴ると、キックの頭がループに埋もれます。ここで使うのがサイドチェインです。

あるトラックの音量を、別のトラックが鳴った瞬間だけ自動で下げるしくみです。コンプレッサー、つまり音量を抑える装置の反応するきっかけを、自分の音ではなくキックの音に差し替えて使います。

掛ける相手はループとベースです。キックには掛けません。

考え方はこうです。下げ始めはキックと同時。下げている時間はキックの長さだけ。戻るのはできるだけ速く。下げる量は、下がったことが分かるより少し手前で止めます。

深く吸わせると、音が波打って聞こえます。ここで欲しいのは派手な上下ではなく、キックの頭が通る一瞬の隙間です。キックとループだけを鳴らして、キックが丸くならずに前へ出ていれば足りています。

設定画面の操作そのものはサイドチェインの基本にまとめています。

クラップとハイハットの置き方

強弱を付けないと、ループの揺れが刻みに負けます。

ドラムで自分が置くのは4つです。キックは4分で4つ、太く短く。クラップは2拍目と4拍目。オープンハットは拍の裏。クローズドハットは16分で薄く。

ここで効いてくるのが強弱です。レッスンで使っている判断メモに、ドラムが機械っぽく聞こえる一番の原因はベロシティ(強弱)を一定にしていることで、タイミングはジャストのままでよく、8分で強弱を付けるだけで人間味が出る、というものがあります。

このジャンルでは、それが逆向きにも効きます。ハイハットの強弱を付けないと、ループが持っている演奏の揺れが、平らな刻みに打ち消されます。素材の良さを自分のドラムで消してしまう形です。

付け方は簡単です。拍の上にあるハットを少し強く、裏を弱く、その間の16分をさらに弱く。3段あれば十分で、数値を計算する必要はありません。

オープンハットは1小節に2つまでにしてください。裏拍が全部開くと、刻みがループより前に出ます。

※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や、実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。

フレンチハウスが「ただの4つ打ち」で止まるとき、原因はハイハットが機械の8分のままなことです。BPM120で、キックとスネアは2本とも同じ。変えたのはハイハットだけです。

① ハイハットを8分でそろえた場合拍の頭と裏の2粒・オープン無し

整っています。整いすぎて、ループを重ねても平坦なままです。

② 16分にして強弱を付けた場合頭を強く・裏を弱く・2拍目と4拍目の裏だけ開く

キックは1つも動かしていないのに、前へ転がる感じが出ます。粘りはテンポではなく、ハイハットの粒の差から出ます。

条件:BPM 120/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

最初の8小節の手順

ループを先に、テンポを後に。順番に意味があります。

順番やること目安
1ループを選んで2小節に切る音が立ち上がる点を頭に合わせる
2BPMを合わせるまず120。ループが伸び縮みしない速さへ
3キックを4つ置く太く短く。ループの頭と同じ位置に
4低音の担当を決めるループのままか、削ってベースを足すか
5サイドチェインを掛けるループとベースに。キックの長さだけ
6クラップとハットを足す2・4にクラップ、ハットは3段の強弱で
7フィルターの線を書く開き切った状態を作ってから閉じる
816小節にして書き出す5小節目で体が前に出るかで判定

1番と2番を逆にしないでください。テンポを先に決めてからループを選ぶと、素材の速さが合わずに伸び縮みさせることになります。伸ばしたループは芯が抜けて、フィルターを開いても気持ちよく鳴りません。

書き出して確かめる

小さい音量で、閉じている区間を確認します。

16小節を書き出して、普通の再生環境で聞きます。見るのは3つです。

1つ目、フィルターが閉じている1〜4小節が、スマートフォンの音量でも何か鳴っているか。消えていれば閉じすぎです。

2つ目、5小節目で開いた瞬間に音量が飛び出していないか。飛び出すなら、開いた側のフェーダーを下げてから書き直します。

3つ目、キックの頭が毎回同じ強さで聞こえるか。強さが揺れるなら、サイドチェインが深すぎます。

触る順番も決まっています。判断メモにあるとおり、仕上げはフェーダーで音量を決め、次にEQとコンプレッサー、最後にリミッターです。コンプレッサーは出てくる音量に対して働くので、フェーダーが決まらないうちに掛けると、後でフェーダーを動かした瞬間にやり直しになります。

今日やることは1つに絞ります。手持ちの素材を1つ選び、2小節に切って、頭をキックの位置に合わせる。ここで止めて構いません。フィルターもベースも、頭が揃っていなければ効き目が出ないので、流れずに回る2小節ができた時点でその日の作業は成立しています。曲として仕上げる残りの流れは、制作工程マップで確認してください。

よくある疑問

フレンチハウスのBPMはいくつにすればいいですか

118〜125あたりが目安で、まず120です。数字より、使うループがそのままの速さで回るかを優先します。大きく離すと素材を伸ばしたり縮めたりすることになり、音の芯が抜けます。

ループの頭がキックとずれて聞こえます

素材の先頭に小さな余白が入っています。波形を拡大して音が立ち上がる点を探し、その点を小節の頭に合わせて、前の余白は切り落としてください。長さを伸ばして合わせると、繰り返すたびに後ろへ流れます。

低音が濁ります

ループに入っている低音と、自分で足したベースが二重になっています。ループの低音だけで支えるか、ループの低い成分を削ってからベースを足すか、どちらか一方に決めてください。

フィルターはどれくらい閉じればいいですか

小さい音量でもキックの輪郭とループの低い成分が残る位置までです。完全に閉じると、スマートフォンでは何も鳴っていない区間になります。

素材はどこから用意すればいいですか

権利上使ってよいループ素材か、自分で打ち込んだディスコ風の2小節です。市販されている曲から切り出した音は、公開すると権利の話になります。

次に進む記事

ループが回り始めたら、素材とフィルターの扱いを広げる記事へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ

UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。