ブレイクビーツの作り方|ブレイクを切って組み直す手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。担当作品と外部での確認先
ブレイクビーツは、ドラムだけになる数小節を切り出して、曲の土台として回し続ける音楽です。
キックが拍の頭から外れ、スネアの間に小さな打点がはさまる。4つ打ちのように縦に揺れるのではなく、前につんのめるように進みます。
録音を切る必要はありません。キックとスネアの置き方さえ分かれば、打ち込みだけで同じ推進力が出ます。
BPMを決め、2小節の骨格を置き、切って並べ替え、強弱を付け、ベースを乗せる。8小節までの手順を順番に説明します。
先に見ること
先に決めるのは、音色ではなく、2小節のうちどこを固定してどこを崩すかです。
- BPMは120〜140が目安。まず130で
- スネアの2拍目と4拍目は動かさない
- 崩すのはキックと、スネアの間の小さな音
- 切って並べ替えるのは2小節目だけ
ブレイクとは何か
曲の中でドラムだけになる数小節。それを土台に昇格させます。
ブレイクとは、曲の途中で他の楽器が止まり、ドラムだけが鳴る部分のことです。もともとは曲の一部に過ぎませんでした。
その数小節だけを切り出し、頭に戻してくり返すと、ドラムが曲の主役になります。これがブレイクビーツの出発点です。1960年代から70年代のファンクやソウルの録音にあるドラムソロが、数え切れない曲の土台として使われてきました。
打ち込みで作る時に大事なのは、元が「生演奏のドラムソロ」だったという点です。人が叩いた一瞬の崩れが、そのまま型になっています。だから、ドラムマシンのように等間隔で並べると別の音楽になります。
この記事では録音を切りません。同じ崩れ方を、キックとスネアの置き方として打ち込みます。音色が生ドラムでなくても、置き方が合っていればブレイクビーツに聞こえます。
速く回してベースを太くするとドラムンベースへ、BPMを落としてラップを乗せるとヒップホップへ向かいます。その手前にある、刻みそのものの作り方がこの記事の範囲です。
BPMの目安
歩くより少し速い。走らせると刻みが潰れます。
120〜140あたりが目安です。まず130に設定してください。
この速さだと、16分音符の小さな打点が1つずつ聞き取れます。150を超えると小さな打点が団子になり、ドラムンベースの手前の音になります。100を下回ると、スネアの間が空きすぎて、ヒップホップの余白に近づきます。
決める基準はキックとスネアの間です。スネアの直前に置いた小さな打点が「別の音」として聞こえる速さに合わせます。聞こえなければ下げ、間延びするなら上げます。
テンポを変えるのは、2小節の骨格ができてからにしてください。先に速さを探すと、打点の数で速さを補おうとして、音が増えすぎます。
近いジャンルとの違い
同じ骨格から枝分かれしているので、速さと役割で見分けます。
| ジャンル | BPMの目安 | 見分けるところ |
|---|---|---|
| この記事(ブレイクビーツ) | 120〜140 | 切ったブレイクが主役。キックが拍の頭から外れる |
| ドラムンベース | 170前後 | 同じ骨格を倍の速さで回す。ベースが主役になる |
| ヒップホップビート | 85〜95 | 遅く、余白を残す。ラップが乗る前提 |
| UKガラージ | 130〜138 | キックを2〜3発に絞り、16分を跳ねさせる |
| ハウスミュージック | 120〜128 | キックが4つ打ち。縦に揺れる |
| ダブステップ | 140前後(体感は70) | スネアを3拍目だけに置く半分のノリ |
数字の範囲は重なります。迷った時はキックの位置で判断してください。4つ打ちなら隣のジャンル、拍の頭から外れていればこの記事の側です。
2小節の骨格を打ち込む
1小節を16マスで数えます。固定する場所を先に決めます。
1小節を16分音符で16マスに分け、番号で呼びます。1拍目の頭が1番、2拍目が5番、3拍目が9番、4拍目が13番です。
最初に固定するのは、スネアの5番と13番です。ここは2小節とも動かしません。この2発が動かないから、まわりをどれだけ崩しても拍が迷子になりません。
1小節目は、キックを1番と11番に置きます。11番は3拍目の裏です。3拍目の頭に置かず、裏へずらすだけで、前につんのめる感じが出ます。
2小節目は、キックを1番、8番、11番に置きます。8番は2拍目のすぐ後ろの16分です。スネアの直後にキックが食い込むことで、1小節目との違いが生まれます。
ハイハットは8分で、奇数のマス全部に置きます。まずはこれで足ります。ハイハットを細かくするより、キックの位置で動かすほうがこのジャンルらしくなります。
| 楽器 | 1小節目 | 2小節目 |
|---|---|---|
| キック | 1・11 | 1・8・11 |
| スネア(本打ち) | 5・13 | 5・13 |
| スネア(小さく) | 8・16 | 4・12・15 |
| ハイハット | 奇数のマス全部 | 奇数のマス全部 |
表の「スネア(小さく)」は次の節で扱います。先にキックとスネアの本打ちだけを置き、2小節を回して、1小節目と2小節目が別物に聞こえるかを確かめてください。同じに聞こえるなら、2小節目の8番のキックが弱すぎます。
ゴーストノートで前へ転がす
本打ちの半分以下の強さ。聞こえるか聞こえないかの音です。
ゴーストノートとは、ほとんど聞こえないくらい弱く叩くスネアのことです。生のドラマーは、本打ちの間を埋めるようにこれを入れています。ブレイクビーツの転がる感じは、ここから出ています。
置く場所は前の表のとおりです。1小節目は8番と16番、2小節目は4番、12番、15番。本打ちの直前と直後に置くのが基本です。
強さは、ベロシティで本打ちを100前後にしたら、ゴーストは35〜50に収めます。60を超えると本打ちと区別がつかず、スネアが増えただけの刻みになります。
音色は本打ちと同じスネアを使ってください。別の音にすると、弱く叩いたのではなく別の楽器が入ったように聞こえます。
ゴーストノートを入れた後、小さな音量で聞き直します。小さくすると、まずゴーストが消えます。消えてもリズムが成り立っているなら正しい強さです。ゴーストが消えてリズムが崩れるなら、本打ちの骨格が弱いので、ゴーストを上げるのではなく骨格へ戻ります。
強弱の付け方そのものはベロシティの基本にまとめています。ここでは「本打ちの半分以下」だけ覚えてください。
切って並べ替える
切るのは2小節目だけ。1小節目は原形として残します。
ブレイクビーツらしさの2つ目は、切って並べ替えた跡です。録音を切る代わりに、打ち込んだ2小節を1拍ずつの塊として扱います。
手順は3つです。1つ、2小節目を1拍ごとに4つの塊に分ける。2つ、1拍目と3拍目の塊を入れ替える。3つ、4拍目の塊の最後の2マスだけを、同じ塊の先頭にコピーする。
2拍目と4拍目の塊は触りません。スネアの本打ちが入っている塊を動かすと、拍の目印が消えて、何拍目か分からなくなります。入れ替えるのは、キックとゴーストしか入っていない塊です。
1小節目は原形のまま残します。原形があるから、2小節目の並べ替えが「崩れ」として聞こえます。両方を並べ替えると、崩れではなく別のパターンになります。
並べ替えた結果が気に入らない時は、元に戻してから別の組み合わせを試してください。並べ替えの上に並べ替えを重ねると、どこが原形だったか追えなくなります。
サンプラーで録音を切る作業も、考え方は同じです。1拍ごとに切り、2拍目と4拍目を固定し、残りを入れ替えます。切り方の操作はサンプラーの基本を見てください。
ベースはキックの隙間に置く
キックと同じ場所に置くと、低音が団子になります。
ベースは短い音で、1小節に3〜4音です。長く伸ばすと、せっかく崩したキックの位置が埋まって聞こえなくなります。
置く場所はキックのすぐ後ろです。1小節目ならキックが1番と11番なので、ベースは3番と12番あたり。キックと同じマスには置きません。同じ場所で鳴ると低音同士がぶつかり、どちらの輪郭も消えます。
音の高さは、ルートと5度の2音で足ります。動かすのは2小節に1回、2小節目の終わりで5度へ行き、1小節目の頭でルートへ戻ります。
音色は、立ち上がりがはっきりしたものを選びます。もこもこしたベースは、ドラムの崩れを塗りつぶします。歪みは、ドラムの上で輪郭が見える程度に留めます。
ベースを入れた後、キックとベースだけを鳴らして、どちらの打点も1つずつ数えられるかを確かめます。数えられないなら、どこかで同じマスに重なっています。
8小節から16小節へ
足すのではなく、抜いて戻します。
2小節ができたら、4回くり返して8小節にします。この時点では、まだ何も足しません。2小節のくり返しだけで聞き続けられるなら、骨格は合格です。
16小節へ伸ばす時の変化は2つだけです。1つ、8小節目の最後の1拍で、スネアの本打ちを16分で2発に割る。これがフィルの代わりです。2つ、13小節目から16小節目まで、ハイハットを抜く。
ハイハットを抜いた4小節で、キックとゴーストの崩れがむき出しになります。ここで物足りなく聞こえるなら、ゴーストノートが足りていません。17小節目でハイハットが戻ると、同じ2小節なのに前に進んだように聞こえます。
上に乗せる音は、2小節に1回の短いフレーズで足ります。ピアノの和音1つ、短いシンセの1音。長い音を乗せるなら、ドラムの隙間が埋まらない高さに置きます。
展開の考え方は8小節ループの次へ進む方法にもまとめています。この記事の範囲では「抜いて戻す」だけで16小節が持ちます。
最初の8小節の手順
骨格、崩し、強弱、ベースの順です。順番を入れ替えないでください。
| 順番 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | BPMを設定 | まず130。骨格ができるまで触らない |
| 2 | スネアを5番と13番に置く | 2小節とも同じ。以後動かさない |
| 3 | キックを置く | 1小節目は1・11、2小節目は1・8・11 |
| 4 | ハイハットを8分で置く | 奇数のマス全部 |
| 5 | 2小節を回して違いを聞く | 同じに聞こえたら8番のキックを強く |
| 6 | ゴーストノートを置く | 本打ちの半分以下の強さ |
| 7 | 2小節目を1拍ずつ入れ替える | 2拍目と4拍目は触らない |
| 8 | ベースをキックの後ろに置く | 1小節に3〜4音。同じマスに置かない |
| 9 | 4回くり返して8小節に | まだ何も足さない |
| 10 | 8小節で書き出す | 小さい音量でゴーストが消えても成り立つか |
6番と7番を先にやらないでください。骨格ができる前に崩すと、何が崩れているのか自分でも分からなくなります。原形があって、はじめて崩れが崩れとして聞こえます。
書き出して確かめる
小さい音量と、キックとベースだけ。見るのは3つです。
8小節を書き出して、小さい音量で聞きます。
1つ目、拍が追えるか。スネアの5番と13番が動いていなければ、どれだけ崩しても拍は追えます。追えないなら、どこかでスネアの本打ちを動かしています。
2つ目、1小節目と2小節目が別物に聞こえるか。同じに聞こえるなら、2小節目のキックの8番か、並べ替えが弱いです。
3つ目、キックとベースの打点が1つずつ数えられるか。数えられないなら、同じマスで重なっています。
今日やることは1つに絞ります。スネアの5番と13番を固定して、キックを1・11と1・8・11で2小節置く。ゴーストもベースも、まだ入れなくて構いません。この2小節が回った時点で、ブレイクビーツの骨格はできています。曲として仕上げる残りの流れは、制作工程マップで確認してください。
素材をどこから取るか
有名なブレイクも、誰かの録音です。
この記事は打ち込みで組む前提なので、権利の問題は起きません。自分で置いたキックとスネアは、どこで公開しても問題ありません。
市販の曲や配信されている曲からドラムを切り出す場合は、話が変わります。作詞作曲、演奏、録音の3つの権利に関わり、公開した時点で許可が要ります。短く切ったから平気、という線引きは日本の法律にはありません。
生ドラムの質感がどうしても欲しいなら、購入したドラム音源やループ集を使います。曲に混ぜて発表するのは原則できますが、素材のままの再配布はできません。無料配布の素材は、出どころと利用条件を確認してから使います。
有名なブレイクの扱いはドラムンベースの記事の「ブレイクの出どころ」に表でまとめています。ここに書いたのは制作の現場での目安で、法律の判断ではありません。配信や販売など、お金や公開が絡む段階では権利元か詳しい人に確認してください。
よくある疑問
サンプルを切らないとブレイクビーツになりませんか
なります。ブレイクビーツらしさは、音色ではなくキックとスネアの置き方から出ています。スネアの2拍目と4拍目を固定し、キックを拍の頭から外し、ゴーストノートを入れれば、打ち込みだけで同じ推進力になります。
BPMはいくつにすればいいですか
120〜140が目安で、まず130です。スネアの直前のゴーストノートが別の音として聞こえる速さに合わせます。150を超えるとドラムンベースの手前、100を下回るとヒップホップの余白に近づきます。
ドラムンベースとの違いは何ですか
速さと主役です。ドラムンベースは同じ骨格を170前後で回し、ベースが主役になります。ブレイクビーツは120〜140で、切ったブレイクそのものが主役です。
ゴーストノートが聞こえません
聞こえるか聞こえないかの強さが正解です。ベロシティで本打ちを100前後にしたら、ゴーストは35〜50に収めます。小さな音量でゴーストが消えてもリズムが成り立っていれば、強さは合っています。
並べ替えたら何拍目か分からなくなりました
スネアの本打ちが入っている2拍目と4拍目の塊を動かしています。入れ替えるのは1拍目と3拍目だけにして、1小節目は原形のまま残してください。
次に進む記事
骨格ができたら、速さと役割を変える記事へ進みます。
記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ
UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。