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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

ジャングルの作り方|切り刻んだブレイクとサブベースをDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。担当作品と外部での確認先

ジャングルとは、ドラムのブレイクを2倍近い速さで回して細かく切り刻み、その下にレゲエ由来の重いサブベースを敷く音楽です。

上を聞けばドラムが走り、下を聞けば低音がゆっくり揺れている。速い層と遅い層が同時に鳴ります。

録音を切る必要はありません。刻み方さえ分かれば、打ち込みだけで同じ前のめりが出ます。

BPMを決め、2小節の骨格を置き、2小節目を刻み、サブベースを敷き、声を乗せる。8小節までの手順を順番に説明します。

先に見ること

先に決めるのは、音色ではなく、2小節目のどの拍を刻んでどの拍を残すかです。

  • BPMは160〜170が目安。まず165で
  • スネアの5番と13番は2小節とも動かさない
  • 刻むのは2小節目の1拍目・3拍目・4拍目
  • サブベースは短く切らず、小節の頭から長く伸ばす

ジャングルとは何か

速めたブレイクと、レゲエの低音が出会った音楽です。

ジャングルは、1990年代前半のイギリスで生まれたとされるダンス音楽です。レイヴと呼ばれた大きなパーティーの速い音楽の流れの中で、ファンクやソウルのドラムソロ(ブレイク)を、元の録音よりずっと速く回したのが出発点です。

そこにジャマイカ由来のレゲエの文化が混ざりました。大きなスピーカーで低音を鳴らすサウンドシステムの習慣、ダブ(音をエコーで抜き差しする手法)、そしてラガと呼ばれる語るような歌い回しです。速いドラムの下に、レゲエの重い低音が敷かれている。これがジャングルの形です。

似た音楽にドラムンベースがあります。1990年代半ば以降、ブレイクの刻みをキックとスネアの2ステップに整理し、さらに速くした流れが、ドラムンベースと呼ばれるようになったと一般に説明されます。ジャングルはその手前にあり、ブレイクそのものが主役です。切り刻んだ跡が細かく残り、整理されていません。

ここで扱うのは、録音を切らずに同じ刻みを打ち込む方法です。キックとスネアの置き方が合っていれば、音色が生ドラムでなくてもジャングルに聞こえます。

BPMの目安

数字は速いが、骨格は半分の速さで数えます。

160〜170あたりが目安です。まず165に設定してください。

165は速く見えます。ただ、スネアが入るのは2拍目と4拍目なので、骨格だけ取り出すとBPM82.5相当のゆったりしたビートと同じ形です。元のブレイクがBPM80〜90台の録音なら、ほぼ2倍の速さで回していることになります。

決める基準はスネアの刻みです。2小節目で足す16分のスネア2連が、1発ずつ聞き分けられる速さに合わせます。聞き分けられないなら下げ、間延びするなら上げます。

170を超えると、刻みが団子になり、2ステップに整理したくなります。それはドラムンベースの入口です。150を下回ると、ブレイクビーツの速さに戻ります。

速さをいじるのは、2小節目の刻みまで入ってからにしてください。骨格の前に数字を探すと、速さの足りなさを刻みの数で埋めようとして、スネアが増えすぎます。

近いジャンルとの違い

ブレイクの刻みと、低音の役割で見分けます。

ジャンルBPMの目安見分けるところ
この記事(ジャングル)160〜170切り刻んだブレイクが主役。下にレゲエ由来のサブベース
ドラムンベース170前後ブレイクを2ステップに整理。ベースが主役になる
ブレイクビーツ120〜140速める前の刻み。ゴーストノートで前へ転がす
ヒップホップビート85〜95同じブレイクを元の速さで回す。ラップが乗る前提
ダブステップ140前後(体感は70)スネアを3拍目だけに置く半分のノリ。低音は揺れる
レゲエ70〜90裏拍の刻みと広い間。ジャングルの低音の出どころ

数字の範囲は重なります。迷った時はスネアの数で判断してください。2拍目と4拍目に1発ずつなら整理された側、本打ちの前後に刻みが食い込んでいればこの記事の側です。

2小節の骨格を打ち込む

1小節を16マスで数えます。まず2小節とも同じ形に置きます。

1小節を16分音符で16マスに分け、番号で呼びます。1拍目の頭が1番、2拍目が5番、3拍目が9番、4拍目が13番です。165で回すと、1小節は1.5秒弱で流れます。

最初に固定するのは、スネアの5番と13番です。ここは2小節とも動かしません。どれだけ刻んでも、この2発があるから拍が迷子になりません。

キックは1番、3番、11番に置きます。1番と3番は頭の2連打で、速めたブレイクの「ドッド」という転がり出しです。11番は3拍目の裏で、ここに置くことで前につんのめります。

小さなスネアを8番と16番に置きます。ベロシティは本打ちの半分以下です。強弱の付け方はベロシティの基本にまとめています。

ハイハットは8分で、奇数のマス全部に置きます。165では16分のハイハットは忙しすぎて、刻みを塗りつぶします。音色はハイハットよりライドシンバルに近いものが合います。

楽器1小節目2小節目(刻む前)
キック1・3・111・3・11
スネア(本打ち)5・135・13
スネア(小さく)8・168・16
ハイハット奇数のマス全部奇数のマス全部

この時点では2小節が同じ形です。それでよいです。ジャングルは刻みが主役なので、2小節目の違いは次の節で刻んで作ります。まず2小節を回して、165で前につんのめって聞こえるかを確かめてください。縦に揺れて聞こえるなら、11番のキックが弱いです。

ブレイクを刻んで並べ替える

刻むのは2小節目だけ。1小節目は原形として残します。

ジャングルの核は、ブレイクを細かく切り刻んだ跡です。録音を切る代わりに、打ち込んだ2小節目を1拍ごとの4つの塊として扱います。1番から4番が1拍目の塊、5番から8番が2拍目の塊、という数え方です。

手順は2つです。1つ、1拍目の塊と3拍目の塊を入れ替える。キックの1番と3番が9番と11番へ移り、11番のキックが3番へ来ます。2小節目の頭からキックが消え、3番で遅れて入る。この「出遅れ」がジャングルの揺れです。

2つ、4拍目の塊で、スネアの13番をコピーして14番にも置く。14番のベロシティは13番の8割にします。同じ強さだと2連ではなく1発が長く鳴ったように聞こえます。16分の2連が、速めたブレイクの切り口です。

2拍目の塊は触りません。5番の本打ちが入っている塊を動かすと、拍の目印が消えます。4拍目の塊も位置は動かさず、中で増やすだけです。

刻んだ後の2小節目は、キックが3番、9番、11番、本打ちのスネアが5番、13番、14番、小さなスネアが8番、16番です。1小節目は原形のまま残します。原形があるから、2小節目が「刻まれた」と聞こえます。両方を刻むと、別のパターンになるだけです。

ドラムンベースとの違いはここにあります。向こうは刻みを整理して、キックとスネアを2発ずつに戻します。ジャングルは整理せず、刻んだまま回します。刻みを増やしたくなったら、2小節目の中だけで増やしてください。サンプラーで録音を切る場合も考え方は同じで、操作はサンプラーの基本を見てください。

サブベースとレゲエ由来の低音

短く切らず、長く敷きます。ドラムとは逆の速さで動かします。

サブベースとは、音の輪郭がほとんどなく、体で感じるほど低い帯域だけを鳴らすベースのことです。音色はサイン波(倍音のない一番まるい波形)か、それに近いものを選びます。歪ませません。

置き方はブレイクビーツと逆です。あちらは短い音でキックの隙間に置きますが、ジャングルでは小節の頭から長く伸ばします。1小節目は1番から16番まで1音、2小節目は1番から8番まで同じ音、9番から16番で別の音へ。2小節で2〜3音しか動きません。

この動きの少なさがレゲエ由来です。レゲエやダブのベースは、音数を減らし、休符を広く取り、1音を長く置きます。速いドラムの下でベースが同じ速さで動くと、どちらも聞こえなくなります。ドラムが速いほど、ベースは遅く動かします。

音の高さは、鍵盤でいえばE1からA1のあたり、ピアノの一番低い側の1オクターブです。動かす先はルートから4度上か5度上で足ります。それ以上動かすと、サブベースではなくベースラインになります。

キックとサブベースは同じ1番で鳴ります。ここはブレイクビーツと違って避けません。速めたブレイクのキックは短く軽いので、長いサブベースと重なっても団子になりにくいからです。重なって濁るなら、キックの低域を少し削り、サブベースを触らないでください。

サブベースを入れた後、小さなスピーカーで聞くと、ほとんど聞こえないはずです。それで正常です。確認はヘッドホンか、低音が出るスピーカーで行います。ベースラインの考え方そのものはベースラインの作り方にあります。

ラガ風の声と上モノの置き方

声は4小節に1回。上モノは隙間を埋めない高さに置きます。

ラガとは、ジャマイカのダンスホールから来た、歌うより語るに近い節回しのことです。ジャングルでは、長い歌ではなく、短い掛け声や一言が、サンプリングされて繰り返されるのが普通です。

打ち込みで再現するなら、自分の声で1語か2語を録り、ピッチを少し上げて、ディレイ(やまびこのように遅れて繰り返すエフェクト)を掛けます。歌が得意でなくてよいです。声は4小節に1回、小節の頭の直前の16番から入れます。毎小節入れると、ドラムの刻みと声がぶつかります。

声がなくてもジャングルは成立します。ジャングルらしさは刻んだブレイクとサブベースから出ているので、声は後回しで構いません。

上モノは2種類あれば足ります。1つはパッド(長く伸びる柔らかい音)で、2小節に1回、和音1つを薄く敷きます。もう1つはスタブ(短く切った和音)で、2小節目の12番に1発だけ置きます。12番は13番と14番のスネア2連の直前です。刻みの直前に鳴ることで、刻みが目立ちます。

どちらも高さは、サブベースから2オクターブ以上離します。中低域に長い音を置くと、ドラムの隙間が埋まり、刻みが見えなくなります。ダブの手法として、スタブにエコーを掛けて、音が消えていく尾をドラムの隙間に流すのも効きます。

8小節から16小節へ

足すのではなく、低音を抜いて戻します。

刻んだ2小節をそのまま4回並べて、8小節にします。上モノも声も、まだ乗せません。サブベースと刻んだブレイクの2つだけで8小節を聞き続けられるなら、土台はできています。

16小節へ伸ばす時の変化は2つだけです。1つ、8小節目の4拍目の塊を、13番から16番まで全部スネアにする。ベロシティは13番から16番へ向けて少しずつ上げます。これが4連のロールで、フィルの代わりです。

2つ、9小節目から12小節目まで、サブベースを抜く。低音が消えた4小節で、刻んだブレイクがむき出しになります。ここで物足りなく聞こえるなら、2小節目の刻みが足りていません。13小節目でサブベースが戻ると、同じ2小節なのに床が落ちたように聞こえます。

ハイハットを抜く手もありますが、ジャングルでは先に低音を抜いてください。低音の出入りで曲が進むのが、レゲエのサウンドシステムから受け継いだ流儀です。

展開の考え方は8小節ループの次へ進む方法にもまとめています。この記事の範囲では「低音を抜いて戻す」だけで16小節が持ちます。

最初の8小節の手順

骨格、刻み、低音、声の順です。順番を入れ替えないでください。

順番やること目安
1BPMを設定まず165。骨格ができるまで触らない
2スネアを5番と13番に置く2小節とも同じ。以後動かさない
3キックを1・3・11に置く2小節とも同じ
4小さなスネアを8番と16番に置く本打ちの半分以下の強さ
5ハイハットを8分で置く奇数のマス全部。16分にしない
62小節を回して確かめる縦に揺れるなら11番のキックを強く
72小節目の1拍目と3拍目の塊を入れ替える2拍目の塊は触らない
82小節目のスネアを13・14の2連にする14番は13番の8割の強さ
9サブベースを小節の頭から長く敷く2小節で2〜3音。歪ませない
104回くり返して8小節に声と上モノはまだ入れない

7番と8番を骨格より先にやらないでください。原形がない状態で刻むと、何が刻まれているのか自分でも分からなくなります。原形があって、はじめて刻みが刻みとして聞こえます。

書き出して確かめる

小さい音量と、ヘッドホン。見るのは3つです。

8小節を書き出して、まず小さい音量で聞きます。

1つ目、拍が追えるか。スネアの5番と13番が動いていなければ、どれだけ刻んでも拍は追えます。追えないなら、2拍目の塊を動かしています。

2つ目、2小節目で出遅れて聞こえるか。1小節目と同じに聞こえるなら、1拍目と3拍目の入れ替えができていないか、14番のスネアが13番と同じ強さです。

3つ目、ヘッドホンに替えて、サブベースが1小節目の頭から切れずに伸びているか。途中で切れるなら、ノートの長さが足りません。小さいスピーカーで聞こえないのは正常です。

今日やることは1つに絞ります。165で、スネアの5番と13番を固定し、キックを1・3・11で2小節置いて、2小節目の1拍目と3拍目を入れ替える。サブベースも声も、まだ入れなくて構いません。この2小節が前につんのめって回った時点で、ジャングルの骨格はできています。曲として仕上げる残りの流れは、制作工程マップで確認してください。

素材をどこから取るか

有名なブレイクも、誰かの録音です。

ここまでの手順は全部打ち込みなので、権利の心配は要りません。自分で置いたキック、スネア、サブベースは、配信でも動画でもそのまま公開できます。

ジャングルで繰り返し使われてきた有名なブレイクは、どれも過去の曲の録音の一部です。市販の曲や配信されている曲からドラムを切り出して公開すると、作詞作曲、演奏、録音の3つの権利に関わり、許可が要ります。速めたから、細かく刻んだから平気、という線引きは日本の法律にはありません。

生ドラムの質感が欲しいなら、購入したドラム音源やループ集を使います。曲に混ぜて発表するのは原則できますが、素材のままの再配布はできません。無料配布の素材は、出どころと利用条件を確認してから使います。ラガ風の声も同じで、他人の曲から切った声を公開に使うことはできません。

有名なブレイクの扱いはドラムンベースの記事の「ブレイクと権利」に表でまとめています。ここに書いたのは制作の現場での目安で、法律の判断ではありません。配信や販売など、お金や公開が絡む段階では権利元か詳しい人に確認してください。

よくある疑問

165にするとハイハットが団子になります

ハイハットを16分で置いています。8分の奇数のマスだけに戻してください。それでも忙しいなら、音色をハイハットからライドシンバルに替えます。刻みはスネアで作り、ハイハットは土台に留めます。

サブベースが聞こえません

小さいスピーカーでは、サブベースの帯域はほぼ出ません。ヘッドホンか低音の出るスピーカーで確認してください。どうしても小さいスピーカーで聞かせたいなら、1オクターブ上の同じ音を薄く重ねます。サブベースそのものを歪ませて目立たせると、別のジャンルの音になります。

ラガ風の声を用意できません

声がなくても成立します。ジャングルらしさは刻んだブレイクとサブベースから出ています。声の代わりに、短いスタブを2小節目の12番に置くだけでも、刻みの直前の合図になります。

刻みを増やしたら何拍目か分からなくなりました

2拍目の塊か、1小節目を触っています。刻むのは2小節目の1拍目・3拍目・4拍目だけにして、1小節目は原形のまま残してください。それでも分からないなら、2小節目の刻みを一度全部戻し、1拍目と3拍目の入れ替えだけからやり直します。

次に進む記事

骨格ができたら、整理する側と元の速さの側へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ

UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。

読んだあとに

この1本から、90秒の曲を書き出すところまで

楽器が弾けなくても、Cubaseで90秒の歌ものを完成させる。このサイトは、音出し → コード → ドラム → 鼻歌 → 90秒 の順に進む制作ノートです。今読んだ記事がどの工程にあたるかは、トップページで確かめられます。

書いている人:古賀 稔宏(作曲・編曲家)/担当作品と外部での確認先

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