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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

ジャージークラブの作り方|5発のキックをDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。担当作品と外部での確認先

ジャージークラブは、1小節に5発のキックを決まった形で置くだけで、ほぼジャンルが決まる音楽です。

キックの間隔が、3・3・2・2と詰まっていく。ベッドのきしむ音が合いの手を入れ、歌の1語だけがキックと同じ場所で連打される。

コードもメロディも最小限で足ります。音数が少ない分、キックの位置を1マス間違えると別のジャンルに聞こえます。

BPMを決め、5発のキックを置き、クラップとハイハットを足し、きしみ音と1語の連打を乗せる。8小節までの手順を順番に説明します。

先に見ること

先に決めるのは、音色でも歌でもなく、5発のキックを置く16分のマス目です。

  • BPMは130〜140が目安。まず135で
  • キックは1小節に5発。1・4・7・9・11番
  • クラップは2拍目と4拍目。キックと重ねない
  • 歌は1語だけ切って、キックと同じマスで連打する

ジャージークラブとは

クラブのDJが現場で作った、踊らせるための型です。

ジャージークラブは、アメリカのニュージャージー州ニューアークで2000年代に広まったクラブミュージックです。先にあったボルチモアクラブという型を受け継ぎ、キックの置き方を独自の形にしました。

特徴は3つです。1つ、1小節に5発のキックを、間隔を詰めながら置く。2つ、ベッドがきしむ音のサンプルを合いの手として入れる。3つ、既存の歌から1語だけを切り出して、キックと同じ位置で連打する。

もともとDJが現場で既存の曲を作り替えるところから育った音楽なので、ゼロから作曲するより、短い素材を切って型にはめる作業が中心です。歌もののリミックスとして使われることが多いのはそのためです。

この記事では、既存の曲を切らずに、打ち込みだけで型を組みます。5発のキックが正しい場所に置けていれば、上に乗せる素材が自作でもこのジャンルに聞こえます。

似た速さの2ステップとの違いは、キックの数です。UKガラージはキックを2〜3発に絞りますが、ジャージークラブは5発を詰めます。絞る側の作り方はUKガラージの作り方を見てください。

BPMの目安

速いが、走らせない。5発が聞き分けられる速さで止めます。

130〜140あたりが目安です。まず135に設定してください。

この速さで5発のキックを置くと、詰まっていく間隔が「加速しているように」聞こえます。これがこのジャンルの推進力です。

145を超えると、詰まった後半の2発が1つの長い音に聞こえ始め、加速の感じが消えます。125を下回ると、5発の間が空きすぎて、普通の4つ打ちの崩しに戻ります。

決める基準は、後半の2発(9番と11番)が別々の音として数えられるかです。数えられなければ下げ、間延びするなら上げます。歌ものを作り替える場合は、元の曲のテンポに合わせず、この範囲へ引き上げてから切ります。

近いジャンルとの違い

速さが同じでも、キックの数と位置で見分けられます。

ジャンルBPMの目安見分けるところ
この記事(ジャージークラブ)130〜140キックが1小節に5発。間隔が詰まっていく
UKガラージ130〜138キックは2〜3発に絞る。16分が跳ねる
フューチャーガレージ130〜140(体感は約半分)鳴らさない場所を残す。空間が主役
ハウスミュージック120〜128キックが等間隔の4つ打ち
トラップビート130〜160ノリは半分で数える。808の長い低音
ドリル140〜145滑る808と3連のハイハット

数字の範囲は重なります。迷った時はキックを数えてください。1小節に5発で、後半が詰まっていれば、この記事の側です。

5発のキックを置く

1小節を16マスで数えて、1・4・7・9・11番です。

1小節を16分音符で16マスに分け、番号で呼びます。1拍目の頭が1番、2拍目が5番、3拍目が9番、4拍目が13番です。

キックを置くのは、1番、4番、7番、9番、11番の5か所です。これが代表的な形で、ほとんどの曲がこの位置を土台にしています。

間隔を見てください。1番から4番まで3マス、4番から7番まで3マス、7番から9番まで2マス、9番から11番まで2マス。3・3・2・2と詰まっていきます。この詰まり方が「加速」の正体です。

12番から16番までの5マスには、キックを置きません。ここが空いているから、次の小節の1番が大きく聞こえます。空白を埋めたくなっても、我慢してください。埋めると加速が消えます。

2小節目も同じ位置です。このジャンルは、2小節で変化を付けるより、同じ1小節を正確にくり返すほうが効きます。変化は後の節で、4小節に1回だけ入れます。

キックの音色は、短く、立ち上がりがはっきりしたものを選びます。伸びるキックだと、2マス間隔の9番と11番が重なってつながります。長さは次のキックが鳴る前に消える程度に切ります。

最初はキックだけで4小節を回してください。この時点で体が前に引っ張られる感じがあれば、位置は合っています。平坦に聞こえるなら、4番か7番が1マスずれています。

クラップとハイハット

クラップは2拍目と4拍目。キックとは重ねません。

クラップは5番と13番、つまり2拍目と4拍目の頭に置きます。キックは1・4・7・9・11番なので、クラップとは1つも重なりません。重ならないから、5発のキックが全部聞こえます。

クラップの代わりにスネアを使う曲もあります。どちらでも構いませんが、音は短くします。長いスネアは、直後の7番のキックを隠します。

ハイハットは8分で、奇数のマス全部に置きます。音量はキックとクラップより一段下げます。ハイハットが目立つと、キックの詰まり方が聞こえにくくなります。

4小節目の16番に、オープンハイハットを1発入れます。次の小節の1番で閉じると、4小節の区切りがはっきりします。これ以外のシンバル類は、8小節の頭に1回あれば足ります。

打ち込みの時は、ハイハットの偶数マスを少し弱くします。全部同じ強さだと機械の刻みになり、5発のキックの加速と合わなくなります。

きしみ音と1語の連打

このジャンルの目印。どちらもキックの位置に合わせます。

ジャージークラブを聞いてすぐ分かる音が2つあります。ベッドがきしむような短い音と、歌の1語だけの連打です。

きしみ音は、合いの手です。置く場所は、キックが鳴らない12番から16番の空白か、2小節に1回の8番あたりです。キックと同じマスには置きません。空白を埋める音ではなく、空白を目立たせる音として使います。

手元にそのサンプルが無ければ、高めの短いノイズや、ピッチを上げた短い声で代用できます。大事なのは音色より「短くて、キックの合間に1発だけ鳴る」ことです。

1語の連打は、歌から1語、長さにして1拍以下を切り出し、キックと同じ1・4・7・9・11番で鳴らします。キックと完全に同じ位置にするのが型です。ずらすと、歌のフレーズに戻ってしまいます。

切る1語は、母音がはっきりしていて、子音で始まるものを選びます。「ラ」「タ」のように頭が立っている音が、キックと重なっても埋もれません。

連打する1語は、4小節のうち1小節だけで足ります。毎小節入れると、歌ではなく打楽器として聞こえ、型の面白さが薄れます。切る操作そのものはボーカルチョップの作り方にまとめています。

ベースとコードは最小限

低音はキックに譲ります。和音は4小節に1つで足ります。

ベースは、1番のキックと同じ場所で短く1音鳴らすだけで足ります。5発のキックが低音の役目を半分担っているので、ベースが動くと下が渋滞します。

もう少し動かしたい時は、12番から16番の空白にルートを1音置きます。キックが鳴らない場所でベースが鳴ると、空白が空白のまま低音だけ続きます。

コードは、2〜4つを4小節に1つずつ置きます。音色は短く切れるものより、薄く伸びるパッドが向きます。キックとクラップで隙間が埋まっているので、上は動かさないほうが整理されます。

歌もののリミックスとして作る場合は、元の曲のコードをそのまま4小節に1つの長さに伸ばします。元の曲のコードが細かく動いていても、1小節に1つまでに間引きます。細かいコードの動きは、5発のキックの加速と喧嘩します。

メロディは、1語の連打がその役目をします。別にメロディを乗せるなら、12番から16番の空白に短い1フレーズだけです。

8小節単位で抜き差しする

足すのではなく、キックを止めて戻します。

展開は8小節単位です。8小節のうち、変化を付けるのは最後の1小節だけです。

8小節目は、キックを9番と11番の2発だけにします。あるいは、13番から16番に16分で4発詰めて、次の小節の1番へなだれ込ませます。どちらか1つにしてください。両方やると、8小節目だけ別の曲になります。

16小節に伸ばす時は、9小節目から12小節目の4小節でキックを全部止めます。クラップとハイハットと1語の連打だけが残ります。13小節目でキックが5発そろって戻ると、同じ型なのに前へ進んだように聞こえます。

このジャンルで一番効くのは、この「キックを止めて戻す」です。音を足して盛り上げるより、5発のキックが無い時間を作るほうが、戻った時の加速が大きくなります。

曲全体の長さは、8小節を4〜6回で足ります。長くするほど型の単調さが目立つので、2分前後で終わらせる前提で組みます。

最初の8小節の手順

キック、クラップ、ハイハット、素材の順です。

順番やること目安
1BPMを設定まず135
2キックを1・4・7・9・11番に置く12〜16番は空ける
3キックだけで4小節回す前に引っ張られなければ位置を見直す
4クラップを5番と13番に置く短い音で
5ハイハットを8分で置く偶数マスは少し弱く
6きしみ音を空白に1発キックと同じマスには置かない
71語を切ってキックと同じ位置で連打4小節のうち1小節だけ
8ベースを1番に1音動かさない
9コードを4小節に1つ薄いパッドで
108小節目でキックを抜く9・11番だけ残すか、16分で4発詰める

3番を飛ばさないでください。キックだけの状態で引っ張られる感じが出ていなければ、後から何を乗せても加速は出ません。素材を足す前に、5発の位置だけで判定します。

書き出して確かめる

小さい音量で、キックが5発数えられるかを見ます。

8小節を書き出して、小さい音量で聞きます。見るのは3つです。

1つ目、キックが1小節に5発、はっきり数えられるか。9番と11番がつながって聞こえるなら、キックが長すぎるか、BPMが速すぎます。

2つ目、12番から16番の空白が空白として聞こえるか。何かで埋まっているなら、きしみ音かベースが多すぎます。

3つ目、1語の連打がキックと同じ位置で鳴っているか。ずれていると歌のフレーズに戻ります。

今日やることは1つに絞ります。BPM135で、キックを1・4・7・9・11番に置いて4小節回す。クラップも素材も、まだ要りません。前に引っ張られる感じが出た時点で、このジャンルの土台はできています。曲として仕上げる残りの流れは、制作工程マップで確認してください。

歌をどこから取るか

1語でも、他人の録音は他人のものです。

この記事の型は、切る素材が自作なら権利の問題は起きません。自分で録った声、自分で打ち込んだ音は、どこで公開しても構いません。

市販の曲や配信されている曲から1語を切り出すと、話が変わります。作詞作曲、演奏、録音の3つの権利に関わり、部屋で練習する分はともかく、公開した時点で許可が要ります。1語だから、1拍以下だから、という線引きは日本の法律にはありません。

歌ものを作り替える練習をするなら、権利元が条件を明示して配布している素材か、自分で歌った声を使います。素材の出どころの考え方はUKガラージの記事の「チョップ素材をどこから取るか」にも書いています。

ここに書いたのは制作の現場での目安で、法律の判断ではありません。配信や販売、動画への使用など、お金や公開が絡む段階では権利元か詳しい人に確認してください。

よくある疑問

キックの位置はどこですか

1小節を16分の16マスで数えて、1・4・7・9・11番です。間隔が3・3・2・2と詰まり、12番から16番は空けます。これが代表的な形で、2小節目も同じ位置にします。

BPMはいくつにすればいいですか

130〜140が目安で、まず135です。後半の9番と11番のキックが別々の音として数えられる速さに合わせます。145を超えると2発がつながり、125を下回ると4つ打ちの崩しに戻ります。

UKガラージとの違いは何ですか

キックの数です。UKガラージは2〜3発に絞って16分を跳ねさせます。ジャージークラブは5発を詰めて加速させます。速さはほぼ同じなので、キックを数えれば見分けられます。

ベッドのきしみ音が手元にありません

高めの短いノイズや、ピッチを上げた短い声で代用できます。大事なのは音色より、短くてキックの合間に1発だけ鳴ることです。キックと同じマスには置きません。

既存の曲のリミックスを公開してもいいですか

原曲の権利元の許可が要ります。1語だけでも、公開した時点で作詞作曲・演奏・録音の権利に関わります。練習なら自分の声か、条件が明示された配布素材を使ってください。

次に進む記事

5発の型ができたら、キックを絞る側や空間を残す側の記事へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ

UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。

読んだあとに

この1本から、90秒の曲を書き出すところまで

楽器が弾けなくても、Cubaseで90秒の歌ものを完成させる。このサイトは、音出し → コード → ドラム → 鼻歌 → 90秒 の順に進む制作ノートです。今読んだ記事がどの工程にあたるかは、トップページで確かめられます。

書いている人:古賀 稔宏(作曲・編曲家)/担当作品と外部での確認先

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