フューチャーガレージの作り方|2ステップと空間をDTMで組む手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
フューチャーガレージは、鳴っている時間より、鳴っていない時間のほうが長いジャンルです。
打点は少なく、残響は長い。空いた場所に霧のような音が満ちている状態を作ります。
テンポの数字はUKガラージとほとんど同じです。それでも半分の速さに聞こえるのは、1小節に置く音の数が違うからです。
BPMを決め、キックを裏へ散らし、サブベースを伸ばし、声を刻んで霧の中へ置く。8小節までの手順を順番に説明します。
先に見ること
迷ったら、音を足すのではなく、何も鳴らさない1小節を作ります。
- BPMは130〜140が目安。まず135で、下げない
- スネアは2拍目と4拍目に固定。キックは裏へ散らす
- サブベースは音程を動かさず、2小節以上伸ばす
- 声は刻むが、言葉として聞き取れない状態で置く
UKガラージとの違い
速さは同じで、埋め方が逆です。
同じ2ステップの系統なので、テンポの範囲はほとんど重なります。それでも並べて聞くと、こちらは半分くらいの速さに感じます。
違いは打点の数です。UKガラージは16分の刻みを細かく入れ、声の断片をリズムの隙間に詰めて、跳ねを前に出します。フューチャーガレージは同じ速さのまま、その刻みを間引き、空いた場所に残響を置きます。
主役も入れ替わります。あちらの主役はリズム、こちらの主役は空間です。リバーブやディレイは仕上げの飾りではなく、最初から鳴らす楽器として扱います。
だから作る順番も変わります。跳ねを作ってから空間を足すのではなく、空間の広さを先に決めて、その中に置ける数だけ音を置きます。
跳ねるドラムそのものの組み方はUKガラージの作り方のほうが詳しいので、リズムで悩んでいる場合はそちらを先に見てください。
BPMの目安
数字は速く、体感は半分です。
130〜140あたりが目安です。まず135に設定してください。
この数字を見て速いと感じたら、それは正しい反応です。テンポは速いままにして、体感だけを半分に落とします。
落とし方は3つあります。1小節に置く打点を減らす。コードを2小節以上伸ばす。ハイハットを16分で埋めない。
テンポを100前後まで下げると、残響が次の音に追いつかれないぶん、ただ遅い曲になります。速いテンポは、残響を鳴らすための余白の広さを決めていると考えてください。135のまま音を減らすのが、このジャンルの組み方です。
近いジャンルとの違い
速さが近いジャンルが多いので、隙間の埋め方で見分けます。
| ジャンル | BPMの目安 | 見分けるところ |
|---|---|---|
| この記事(フューチャーガレージ) | 130〜140(体感は約半分) | 打点を間引き、空いた場所を残響で埋める。空間が主役 |
| UKガラージ | 130〜138 | 同じ速さで16分を細かく刻む。跳ねが主役 |
| ダブステップ | 140前後(体感は70) | 速さは近いが、低音そのものの動き方が主役になる |
| アンビエント | 速さを決めないことも多い | ドラムを置かない。拍で前へ進めない |
| ローファイヒップホップ | 70〜90 | テンポそのものが遅い。残響より質感とノイズで作る |
上2つは数字が重なるので、テンポでは見分けられません。1小節に何発置いているかを数えるほうが早いです。刻みが多ければ跳ねる側、少なければ空間の側です。
キックを裏へ散らす
固定する2発を決めて、残りを裏へ逃がします。
先に固定するのはスネアです。2拍目と4拍目。ここは動きません。この2発があるので、ほかの打点を減らしても拍が分からなくなりません。
キックは1小節に1〜2発だけです。置く場所は拍のジャストを外します。1拍目の少し後ろ、または3拍目の裏。裏とは、拍と拍のあいだの位置のことです。
2小節をひとまとまりとして組んでください。1小節目にキックを1発、2小節目に2発のように小節ごとに数を変えると、2小節で1回まわる感覚が出ます。これが半分の速さに聞こえる仕掛けです。
ハイハットは16分で埋めません。1小節に4〜6粒。置く場所は裏側に寄せます。粒を減らすほど、リバーブの尻尾が聞こえるようになります。
打ち込んだ後にやることが1つあります。1小節分のドラムを丸ごとミュートしてみる。それでも曲が成立しているなら、その小節の打点は元から要りませんでした。
※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や、実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。
UKガラージとの違いが出ないとき、原因はキックが拍の頭に揃っていることです。BPM135で、スネアは2拍目と4拍目に固定したまま。変えたのはキックの位置だけです。
走って聞こえます。速さは同じなのに、休む場所がありません。
スネアは1つも動かしていないのに、同じ135が半分の速さに感じられます。これが2ステップの効きどころです。
条件:BPM 135/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。
鳴らさない場所を残す
残響が鳴り終わる時間を、打ち込みの段階で確保します。
リバーブを深く掛けたのに広く聞こえない時、原因はリバーブの設定ではありません。次の音が早く来すぎて、残響が鳴り終わる前に上から塗りつぶされています。
レッスンで使っている判断メモに、リファレンスは真似るためだけではなく、どんな楽器を使うか、どこで密度が上がるか、どこで休むかを決める材料になる、というものがあります。このジャンルでは休む場所を決める部分だけを先に使います。
手順にすると単純です。8小節の枠を用意して、音を置く前に「ここは何も置かない」という場所に印を付けます。最低3か所です。
印の付け方の目安を挙げます。8小節のうち1小節は打点をほぼゼロにする。4小節目と8小節目の後半2拍は上物を止める。盛り上がる場所の直前の1拍は、全パートを切る。
印を付けた場所には、後から音を足したくなります。足す前に、その場所で何が鳴っているかを聞いてください。前の音の残響が伸びているなら、それが鳴っている音です。
空間そのものは、センドで1つのリバーブを用意して、複数のパートから同じ部屋へ送る形にします。パートごとに別のリバーブを掛けると、別の部屋が何個も並んで、広さではなく混濁になります。
※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や、実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。
16小節では、音を足すのではなく減らすことで展開を作ります。前半8小節は2本とも同じです。
詰まってはいませんが、景色が変わりません。
鳴らさない場所が増えるほど空間が開きます。パッドやボーカルチョップは、この空いた場所に置きます。
条件:BPM 135/16小節/前半8小節は2本とも同一。同じピーク値で書き出しています。
動かさないサブベース
低音は床です。動かさず、長く伸ばします。
ベースはサブベースと呼ばれる、低くて丸い音を使います。
このジャンルでの扱い方は、動かさないことです。曲のキーのルートの音を1つ選び、2小節から4小節そのまま伸ばします。音程を変えたくなったら、8小節に1回だけにしてください。
理由はリズムです。低音が細かく動くと、そちらが拍を刻み始めて、せっかく減らした打点が戻ってきます。床が動かないから、上の霧が漂って聞こえます。
積む順番も決まっています。判断メモにあるとおり、ドラム、ベース、鍵盤や上物、ボーカルのように低い音域から上へ順番に聞くとバランスを取りやすくなります。サブベースは最初に置いて、最後まで動かさない土台として扱ってください。
気をつけるのは再生環境です。サブベースは小さいスピーカーでは物理的に出ません。自分の部屋で気持ちよく鳴っていても、スマートフォンでは床が抜けたように聞こえます。書き出して確かめ、抜けていたら1オクターブ上に同じ音を薄く足して、低音の位置だけ分かるようにします。
2小節1コードのパッド
和音は、動かさないほうが広く聞こえます。
コードは2小節に1つです。4つのコードで8小節が埋まります。
選ぶのは、明るさがはっきり決まらない響きです。m7(マイナーセブンス)のように3音に1音足した形が合います。長く伸ばしても濁りにくく、次のコードへも移りやすいです。
音色はパッドと呼ばれる、立ち上がりが遅くて長く伸びる音です。鍵盤のように短く鳴らすと、それも打点になってしまいます。
動きを付けたい時は、コードを変えずに音量だけを動かします。4小節かけてゆっくり上げ、次の4小節で下げる。これだけで進んでいる感じが出ます。
パッドの低い成分は削ってください。サブベースと同じ音域に和音の一番下の音が残ると、床が2枚になって濁ります。パッドの扱いはパッドで伴奏を作る基本にもまとめています。
言葉として聞かせないボーカルチョップ
意味を消して、音色として置きます。
声は使いますが、歌としては使いません。
素材は自分の声で十分です。「アー」「オー」のような母音を数秒伸ばして録るだけ。歌詞も、音程の正確さも要りません。刻んでピッチを変えるので、上がる、下がる、伸ばすという形が残っていれば素材になります。
意味を消す手順は4つです。1つ、子音が入っている部分を避けて母音の真ん中だけを切り出す。2つ、1つの断片を0.5秒以下にする。3つ、ピッチを上下に変えたものを2〜3個作る。4つ、リバーブのセンドを深く送り、ローパスフィルターで高い成分を落とす。
置く場所は、ドラムの隙間ではありません。コードの上、小節の頭から少し遅れた場所に1〜2個だけ置きます。リズムを埋める役ではなく、霧の中で何かが動いた気配を作る役です。
出来上がりの目安は、人の声だと分かるのに何と言っているかは分からない状態です。言葉が聞き取れてしまったら、断片が長すぎるか、リバーブが浅いかのどちらかです。
素材の出どころには注意してください。市販されている曲から抜いた声は、刻んでも元が分かる形で公開すると権利の話になります。自分の声か、権利上使ってよい歌素材を使ってください。刻む操作そのものはボーカルチョップの作り方に手順があります。
最初の8小節の手順
空間を先に、音を後に。順番に意味があります。
| 順番 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | リバーブをセンドに1つ用意 | 残響は長め。まだ何も送らない |
| 2 | BPMを設定 | まず135。ここから下げない |
| 3 | スネアを2・4拍に置く | この2発は最後まで固定 |
| 4 | キックを1〜2発 | 拍のジャストを外して裏へ |
| 5 | 鳴らさない場所に印 | 8小節に最低3か所 |
| 6 | サブベースを伸ばす | ルートを1つ、2小節以上そのまま |
| 7 | パッドを2小節1コードで | 低い成分を削ってから送る |
| 8 | 声の断片を1〜2個 | 母音だけ、0.5秒以下、深く送る |
| 9 | 8小節で書き出す | 打点を減らしても拍が分かるかで判定 |
1番を最後に回さないでください。リバーブを最後に足すと、すでに埋まった隙間へ残響を重ねることになり、広さではなく曇りになります。空間の広さが先にあれば、置ける音の数は自然に決まります。
書き出して確かめる
減らしすぎたかどうかは、拍が分かるかで判断します。
8小節を書き出して、普通の音量で聞きます。見るのは3つです。
1つ目、拍が分かるか。打点を減らしても、スネアの2発があれば分かります。分からなくなっているなら、スネアが埋もれているか、位置がずれています。
2つ目、残響が鳴り終わっているか。印を付けた場所で、前の音の尻尾が聞こえるはずです。無音になっているならリバーブが短く、尻尾が潰されているなら打点が多すぎます。
3つ目、声が言葉に戻っていないか。小さい音量にすると言葉が浮き上がることがあります。その時は断片を短く切り直します。
今日やることは1つに絞ります。8小節の枠に、何も置かない場所を3か所決める。音はまだ置かなくて構いません。置く場所の前に置かない場所を決めておくと、後から音を足したくなった時の判断が最後まで一貫します。曲として仕上げる残りの流れは、制作工程マップで確認してください。
よくある疑問
UKガラージとの違いは何ですか
速さの数字はほとんど同じで、埋め方が逆です。UKガラージは16分を細かく刻んで跳ねを前に出します。フューチャーガレージは同じ速さのまま打点を間引き、空いた場所を残響で埋めます。主役がリズムから空間へ移ります。
BPMはいくつにすればいいですか
130〜140が目安で、まず135です。体感を半分に落としたい時もテンポは下げません。1小節の打点を減らし、コードを2小節以上伸ばし、ハイハットを16分で埋めないことで遅く聞こえます。
リバーブを深くしたのに広く聞こえません
次の音が早すぎて残響が塗りつぶされています。8小節のうち何も置かない場所を3か所作ってから、リバーブの設定を見てください。センドは1つにまとめ、複数のパートを同じ部屋へ送ります。
サブベースは動かしていいですか
基本は動かしません。ルートの音を1つ選んで2〜4小節伸ばし、変えるのは8小節に1回までです。低音が細かく動くと、そちらが拍を刻み始めて、減らした打点が戻ってきます。
ボーカルチョップが言葉に聞こえてしまいます
断片が長いか、リバーブが浅いです。母音の真ん中だけを0.5秒以下に切り、子音を含めないようにして、センドを深く送り、高い成分をローパスフィルターで落としてください。
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記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ
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