UKガラージの作り方|跳ねるドラムをDTMで組む手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
UKガラージのドラムは、4つ打ちのダンスミュージックからキックを抜いて作ったような構造をしています。
全部の拍を踏まないから跳ねる。スウィングがかかっているから転がる。この2つを打ち込みで再現できれば、ジャンルの入り口は越えられます。
必要なのはDAWと付属音源、それに短い声の素材が少しだけです。
BPMを決め、2ステップのドラムを組み、シャッフルをかけ、サブベースと刻んだ声を隙間に差し込む。8小節までの手順を順番に説明します。
先に見ること
UKガラージは「キックを間引いたドラム×シャッフル×刻んだ声」で跳ねます。
- BPMは130〜138が目安。まず132で
- スネアは2・4拍に固定。キックは全拍に置かない
- スウィング設定で偶数16分を後ろへずらす
- ボーカル素材は1拍以下に刻んで使う
4つ打ちとの違い
どの拍を踏まないかを決めるところから始まります。
ハウスやテクノでは、キックが1小節に4回、全部の拍で鳴ります。床を一定に踏み続けるこの形が4つ打ちです。UKガラージは同じくらいの速さなのに、そのキックを何カ所か抜きます。
抜いた場所で何が起きるか。体は「来るはずのキック」を待ち、来ないので次の音へ向かってつんのめります。この空振りの感覚が、跳ねるようなノリの正体です。
つまりこのジャンルのドラム作りは、音を置く作業である以上に、どの拍を踏まないかを決める作業です。
口に出すと違いがはっきりします。4つ打ちは「ドン・ドン・ドン・ドン」。2ステップは「ドン・タッ・(ん)ド・タッ」のように、途中に踏まない場所が混ざります。
BPMの目安
数字は速めでも、体感は数字ほど忙しくなりません。
130〜138あたりが目安です。まず132に設定してください。
数字だけ見ると速いジャンルですが、キックを間引くぶん、体感は4つ打ちより軽くなります。
むしろこの速さがないと、後でかけるスウィングの揺れが目立たず、リズムが間延びして聞こえます。遅くして落ち着かせたくなったら、それはこのジャンルから離れていく方向だと考えてください。
ドラムが4小節組めたら、128と136でも鳴らしてみます。跳ねが一番くっきり聞こえる速さが、その曲の正解です。
近いジャンルとの違い
速さが近いジャンルが多いので、キックの置き方で見分けます。
| ジャンル | BPMの目安 | 見分けるところ |
|---|---|---|
| この記事(UKガラージ) | 130〜138 | キックを間引いて2〜3発。裏の16分を後ろへずらして跳ねさせる |
| ハウス | 120〜128 | キックは4つ全部。踏み続けるので跳ねない |
| ドラムンベース | 170前後 | 速さがおよそ倍。16分が高速で流れる |
| ダブステップ | 140前後(体感は70) | 速さは近いが、スネアは3拍目に1回で重心が下がる |
BPMはどれも目安で、実際には前後にかなり幅があります。 数字が重なっているジャンルは、数字では区別できません。 右の列に書いた「何が主役か」のほうを手がかりにしてください。
2ステップのドラム
固定する場所を先に決め、キックは2〜3発に制限します。
※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や、実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。
UKガラージの正体は、キックの置き方と16分の跳ね方です。 BPMは3つとも130で同じ。変えているのは配置と、裏の16分をどれだけ後ろへずらすかだけです。
ハウスやテクノの土台です。規則正しく、体が縦に動きます。ここが出発点。
キックが等間隔でなくなり、前に つんのめる ような重心になります。これだけで4つ打ちには戻れない歩き方になります。
ここでUKガラージになります。ずらしているのは39ミリ秒。1000分の39秒でノリが変わる、というのがこのジャンルの面白さです。
条件:BPM 130/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。3本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。
跳ねの量は好みで構いませんが、まず①→②→③の順で自分の曲に足していくと迷いません。 配置を変えないまま跳ねだけ強くしても、UKガラージにはなりません。
まず固定する場所からです。スネアは2拍目と4拍目。ここはこのジャンルでも動きません。
ハイハットは8分でも16分でも構いません。軽い音色で薄く刻みます。
キックは1拍目に1発。そして2発目を、3拍目のジャストではない場所に置きます。おすすめは「2拍目の裏」か「3拍目の裏」です。
裏とは、拍と拍のあいだの位置のこと。ここにキックが入ると、リズムが前へつんのめるように転がり始めます。
ルールとして、1小節にキックは2〜3発まで、と決めて組んでください。4発置きたくなったら、それはもう4つ打ちに戻っています。
物足りなさはこの後のスウィングと刻んだ声が埋めてくれるので、ドラム単体の段階では我慢が正解です。
レッスンで使っている判断メモに、フレーズを口に出せるならそこにはイメージがある、楽器で正確に弾けなくても口ずさめる形を録って後からMIDIへ近づけられる、というものがあります。
2ステップのような変則的なリズムこそこれが効きます。先に「ドン・タッ・んド・タッ」と口で歌えるまで繰り返してから打ち込むと、どの拍を抜くかで迷わなくなります。
シャッフル感の作り方
スウィング設定は、かける相手を選んで使います。
2ステップのもう1本の柱がシャッフル感です。シャッフルとは、等間隔のはずの16分音符のうち偶数番目だけを少し後ろへずらした、揺れたリズムのことです。
「チカチカ」という平らな刻みが、「チッカ、チッカ」と跳ねて聞こえるようになります。
DAWにはスウィング(シャッフル)という設定があり、数値を上げるほど偶数16分が後ろへずれます。
まずハイハットだけにかけて、50%(揺れなし)から少しずつ上げてください。55〜65%あたりのどこかで、刻みが転がり始める瞬間があります。
コツは、かける相手を選ぶことです。ハイハットと、後で入れるボーカルの刻みには深めに。スネアの2拍目・4拍目は動かさない。
全パートに同じ深さでかけると、跳ねではなく全体が酔ったようなリズムになります。
サブベースと上モノ
低音はキックと交互に、コードは短い一撃で置きます。
ベースはサブベースと呼ばれる、ほとんど正弦波のような低くて丸い音を使います。置く場所はキックの隙間です。
キックが鳴っていない拍で「ウー」と短く鳴らし、次のキックが来る前に切る。ドラムと低音が交互に床を支える形になり、間引いたキックの穴がちょうど埋まります。
上モノはコードのスタブ、つまり短く切った和音の一撃を裏拍に1〜2発置きます。鍵盤系の音色でm7のような少し曇った響きを短く鳴らすと、リズムの隙間に色がつきます。
このジャンルの上モノでは、長く伸ばす音はほとんど使いません。
細かく刻んだボーカル素材
声を打楽器と旋律の中間として使います。
このジャンルらしさを一番強く出すのは、シンセよりも刻んだ声です。歌の入った素材を1拍以下、ときには16分音符1個分まで細かく切り、リズムの隙間に並べ直します。
素材は、自分の声をワンフレーズ録ったものでも、権利上使ってよい歌素材でも構いません。意味のある歌詞は不要で、「アー」「オー」程度の断片で十分です。
手順は3段階です。
①素材を8〜16個に切る。②使う断片を3〜4個だけ選ぶ。③ピッチ(音の高さ)を上下に変えたものを混ぜ、ハイハットと同じスウィングに乗せて配置する。
声だと分かるのに言葉としては聞き取れない、くらいが目安です。
刻んだ声は、ドラムの隙間に置けばパーカッションとして、コードの上に並べればフックとして働きます。1つの素材が二役こなすので、トラック数が少なくても曲が埋まります。
最初の8小節の手順
スウィングを先に、ベースを後に。順番に意味があります。
| 順番 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | BPMを設定 | まず132。後で128と136も試す |
| 2 | スネアを2・4拍に | この2発は最後まで固定 |
| 3 | キックを2〜3発 | 1拍目+どこかの裏に1発 |
| 4 | スウィングをかける | ハイハットに55〜65% |
| 5 | サブベースを隙間に | キックと交互に短く |
| 6 | 声の断片を3〜4個 | 刻んで同じスウィングに乗せる |
| 7 | 8小節にして書き出し | 体が跳ねるかで判定 |
4番と5番の順番は守ってください。スウィングをかける前のまっすぐなドラムに合わせてベースを置くと、後から揺らしたときに低音だけが揺れから取り残されて、リズムがちぐはぐになります。
構成とミックスの注意
跳ねの緊張と解放で展開し、サブベースは小さいスピーカーで検品します。
構成は8小節単位の役割替えで作ります。
ハイハットを抜いた8小節、声の断片が増える8小節、と中身を入れ替えながら回し、16小節目の最後でドラムを1拍だけ止める。止めた直後の頭で跳ねが戻る瞬間が、このジャンルの盛り上げ方です。
ミックスで注意したいのはサブベースの聞こえ方です。低すぎる正弦波は、小さいスピーカーでは物理的に再生できません。自分の環境で気持ちよく鳴っていても、スマホでは低音が丸ごと消えていることがあります。
書き出してスマホで確認し、聞こえていなければサブベースの1オクターブ上の音を薄く重ねてください。
ドラムが跳ねて低音が噛み合えば、このジャンルの核はできています。曲として仕上げる残りの工程は、制作工程マップで確認してください。
| 段階 | 長さ | やること | このジャンルでの具体 |
|---|---|---|---|
| 1周目 | 8小節 | 骨格だけを置く | 2ステップのドラムとサブベースだけ。跳ねが出ているかをここで確定させる |
| 2周目 | 16小節 | 抜き差しで変化を作る | ボーカルチョップを抜き差しする。足すのではなく、8小節目で一度消すと変化になる |
| 展開 | 32小節 | 場面を足す | ドラムを丸ごと抜くブレイクを4小節入れ、戻すときにチョップから戻す |
| フル尺 | 64小節〜 | 曲として通す | チョップ主導で2番を作る。全体4〜5分、DJが繋げるようイントロと終わりは8小節ぶん薄く |
長さや小節数はあくまで目安です。大事なのは順番で、 8小節が気持ちよく回らないうちに長さを足さないこと。 伸ばしてから直すより、8小節に戻って直すほうが早く終わります。
上の表の2周目のやり方(抜き差しで変化を作る)を音にしました。 2本とも16小節・同じ音量で、前半8小節は1音も違いません。 変えたのは9小節目から先だけです。
8小節を過ぎたあたりから、耳が先を予測してしまいます。手は動いているのに曲が進んでいない状態です。
9〜12小節目で裏拍にオープンハットが入り、13〜14小節目でキックが消えます。キックが戻ってきたときに、跳ねがはっきり立って聞こえます。
条件:BPM 130/16小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。
チョップ素材をどこから取るか
刻んでピッチを直すのだから、歌のうまさは問われません。
このジャンルの顔はボーカルチョップです。だからこそ、声をどこから持ってくるかが最初の分かれ道になります。市販曲や配信されている曲から声を抜くと、作詞作曲・演奏・録音の3つの権利に関わります。部屋での練習ならともかく、公開した時点で侵害になります。
実は一番安全な素材が、一番手軽でもあります。自分の声です。刻んでピッチを直す前提なので、音程が完璧である必要はありません。スマホの録音でも、口を近づけて静かな部屋で録れば十分に使えます。上がる、下がる、伸ばす、止まるという形さえ残っていれば素材になります。
フリー配布の歌素材や購入したボーカルパックという手もあります。前者は商用可否とクレジット表記を配布ページで確認し、後者は曲に混ぜて出すのは原則できるものの素材のままの再配布はできません。
素材の選び方はチョップの記事のほうで詳しく書いています。ボーカルチョップの作り方の早見表も合わせて見てください。
| 素材の出どころ | 公開できるか | 確認すること |
|---|---|---|
| 自分の声 | そのまま公開できる | 静かな部屋で口を近づけて録る |
| 購入したボーカルパック | 曲に混ぜての発表は原則できる | 素材のままの再配布は不可 |
| フリー配布の歌素材 | 利用条件しだい | 商用可否とクレジット表記 |
| 市販曲から抜いた声 | 許諾なしでは公開できない | 刻んでも元が分かれば同じ話 |
ここに書いたのは制作の現場で使っている目安で、法律の判断ではありません。 配信やCD、ビートの販売などお金や公開が絡む段階では、権利元か詳しい人に確認してください。
よくある疑問
UKガラージのBPMはいくつにすればいいですか
130〜138あたりが目安です。まず132で組み、128と136でも鳴らして、跳ねが一番はっきり聞こえる速さを選びます。キックを間引くので体感は数字ほど忙しくなりません。
4つ打ちと何が違うのですか
キックを全部の拍に置かない点です。スネアは2拍目と4拍目に固定し、キックは1拍目とどこかの裏に2〜3発だけ。抜いた場所で体がつんのめる感覚が2ステップの跳ねになります。
シャッフル感はどうやって出しますか
DAWのスウィング(シャッフル)設定で、偶数番目の16分音符を後ろへずらします。まずハイハットだけに55〜65%を目安にかけ、スネアの2・4拍は動かさないのがコツです。
ボーカル素材はどこから用意しますか
自分の声を録ったものや、権利上使ってよい歌素材で十分です。意味のあるフレーズは不要で、アーやオー程度の断片を1拍以下に刻み、ピッチを変えて並べ直します。
記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ
UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。
次に進む記事
ドラムが跳ね始めたら、リズムの引き出しを増やす記事へ進みます。