マイナーキーの曲の作り方|DTM初心者向けの暗い響き

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
切ない曲、泣ける曲を作りたいのに、自分が打ち込むとなぜか明るい童謡みたいになる。そんな時に知ってほしいのがマイナーキーです。実は、Aマイナーキーの曲はCメジャーキーとまったく同じ白鍵だけで作れます。
新しい音を覚える必要はありません。中心になる音を「ド」から「ラ」に引っ越すだけです。このページでは、メジャーとマイナーの響きの違い、Am→F→G→Amなどの定番コード進行、暗いだけで終わらせない工夫、打ち込みでの試し方まで、白鍵だけで進めます。
先に見ること
マイナーキーの曲は、白鍵のまま「家」をラに引っ越すだけで作れます。
- メジャー=明るい、マイナー=暗い・切ない響き
- AマイナーはCメジャーと同じ白鍵だけ(兄弟の関係)
- 定番進行はAm→F→G→Amから。並べてループするだけ
- 暗すぎたら、サビでCなどのメジャーコードを見せる
メジャーとマイナー、響きの違いを一言で
明るいか、暗い・切ないか。耳で聞き分けられる違いです。
メジャーの響きを一言でいうと「明るい」、マイナーは「暗い・切ない」です。卒業式で聞く曲を思い出すと、入場の華やかな曲がメジャー寄り、涙を誘う合唱曲がマイナー寄り、というくらいのイメージで最初は十分です。
この違いは、DAWの上ですぐ確かめられます。ピアノロールにド・ミ・ソの3音を同時に置いたものがCというメジャーコード、ラ・ド・ミの3音を置いたものがAmというマイナーコードです。
交互に鳴らすと、Cはからっと明るく、Amはふっと影が差すように聞こえるはずです。
理屈としては3つの音の間隔がわずかに違うだけなのですが、その説明は今は要りません。
大事なのは、明るい・暗いという印象の差を自分の耳で一度確認しておくことです。この2つの聞き分けが、マイナーキーの曲作りの出発点になります。
そして曲全体の話にすると、Cコードを家として戻ってくる曲がCメジャーキーの曲、Amを家として戻ってくる曲がAマイナーキーの曲です。家が明るいか切ないかで、曲全体の性格が決まります。
AマイナーはCメジャーと同じ白鍵で作れる
使う音は1音も変わりません。中心が引っ越すだけです。
ここがこのページでいちばん大事な話です。
Aマイナーキーの曲で使う音は、ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ。つまりCメジャーキーと同じ、ピアノロールの白鍵7音そのままです。
黒鍵のことは一切考えなくてかまいません。
変わるのは中心だけです。Cメジャーではドが家でしたが、Aマイナーではラが家になります。
同じ7人家族の中で、リーダーがドからラに交代した、と考えてください。メンバーは同じなのに、リーダーが切ない性格のラになると、曲全体の景色が暗く切ない方向へ変わります。
この「同じ白鍵を共有する兄弟のような関係」を、理論の言葉では平行調と呼びます。CメジャーとAマイナーは平行調どうしです。
用語自体は覚えなくても曲は作れますが、この関係のおかげで、Cメジャーで覚えたことがそのままマイナーキーでも使い回せる、という事実だけは持ち帰ってください。
だから、すでにCメジャーで4小節でも作ったことがある人なら、マイナーキーの曲は「新しい勉強」ではなく「並べ替え」です。ラシドレミファソという並びには、結果としてAマイナースケールという名前が付いていますが、暗記より先に鳴らすほうが早く身につきます。
マイナーキーでよく使うコードと定番進行
Amを家にして、白鍵のコードを並べ替えます。
Aマイナーキーで使うコードも、白鍵だけでできる、いつもの顔ぶれです。
役割だけがCメジャーの時と入れ替わります。主なコードを表にまとめます。
| コード | 構成音 | 響きの印象 | Aマイナーでの役割 |
|---|---|---|---|
| Am | ラ・ド・ミ | 切ない | 家。始まりと終わりに置く |
| Dm | レ・ファ・ラ | しっとり沈む | 暗さを深くしたい場所に |
| Em | ミ・ソ・シ | 静かで儚い | Amへ戻る手前に置ける |
| F | ファ・ラ・ド | ふわっと開く | 暗さを少しやわらげる |
| G | ソ・シ・レ | 前へ進みたくなる | 展開を押し出す |
| C | ド・ミ・ソ | 明るい | 差し色。ここぞで光を入れる |
並べ方の出発点は、Am→F→G→Amです。
1小節ずつ置いてループすると、切なく始まり、Fでふわっと開き、Gで前へ進んで、またAmに帰ってくる。この4小節だけで、もうマイナーキーの曲の骨組みです。
慣れてきたら、Am→F→C→G(切なさと明るさを行き来する定番)や、Am→G→F→Em(1音ずつ下がっていくような切なさ)も試してください。どれも白鍵のコードを並べ替えているだけです。
1つだけ発展形を紹介すると、Emの代わりにE(ミ・ソ♯・シ)を使う手があります。
ソに♯が付いて白鍵から1音だけはみ出しますが、Amへ「帰ってきた」という引力がぐっと強くなります。演歌やアニソンの切ない場面でよく聞く響きです。
白鍵の進行に慣れてからの、次の一手にしてください。
暗いだけの曲にしない工夫
ずっと暗い曲より、暗さの中に光が差す曲のほうが切なく聞こえます。
マイナーキーで作り始めた人がよく踏むのが、AmとDmとEmだけを並べて、最初から最後まで重く沈んだ曲になってしまうパターンです。実は、切なさを強く感じさせるのは「ずっと暗い」ことではなく、「暗さと明るさの落差」です。
いちばん効くのは、サビでメジャーコードを見せることです。
AメロはAm→F→G→Amで切なく進めて、サビの頭だけF→G→C→AmのようにCへ抜ける。
すると、曇り空の切れ間から一瞬日が差すような瞬間が生まれます。聞く人が「切ない」と感じるのは、まさにこの落差の部分です。
もう1つの工夫は、暗い=遅い・静か、と思い込まないことです。
マイナーキーのまま、ドラムを軽快にしてテンポを上げると、「切ないのに走り出したくなる」という、J-POPやアニソンで定番の質感になります。コードの暗さとリズムの元気さは、別々に決めてよい要素です。
メロディの高さでも印象は変えられます。同じAmの上でも、低い音域でぽつぽつ歌えば独り言のように、高い音域で伸ばせば感情があふれるように聞こえます。
サビでメロディの音域を一段上げるだけでも、暗いだけの曲からは抜け出せます。
打ち込みでの試し方:今日やる4小節
読んで納得するより、鳴らして確かめるほうが10倍早いです。
レッスンでも、理論の理解が浅い段階ほど「正解を先に探すより、短いコードを鳴らして耳で判断する」ことを判断の軸にしています。マイナーキーも同じで、平行調の説明を読み込むより、次の10分の作業のほうが確実に身につきます。
手順は3つです。
まず、DAWで4小節を用意し、1小節目にAm(ラ・ド・ミ)、2小節目にF(ファ・ラ・ド)、3小節目にG(ソ・シ・レ)、4小節目にAmを、3音ずつ白鍵に置いてループ再生します。
音色はピアノでもパッドでも、最初に出てくるもので十分です。
次に、その上に白鍵だけで短いメロディを乗せます。鼻歌でかまいません。
コツは1つだけで、フレーズの最後をラで終わらせること。家であるラに着地すると「切なく終わった」感じがはっきり出ます。
試しに最後をドに変えると、同じ伴奏でも少し明るく聞こえるのが分かるはずです。
最後に、聞き比べの実験です。同じプロジェクトの別トラックにC→Am→Dm→G(Cメジャーの定番進行)を置いて、Am→F→G→Amと交互に再生してみてください。
使っている音はどちらも白鍵だけなのに、家がドかラかで、曲の表情がまるで違う。
これを耳で体験した瞬間に、マイナーキーは「難しい理論」から「選べる道具」に変わります。
この4小節ができたら、あとはドラムを足し、メロディを整え、サビへ広げていく流れです。そこから1曲完成までの道のりは、無料の制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
マイナーキーの曲は初心者には難しいですか
難しくありません。Aマイナーキーなら、Cメジャーキーと同じ白鍵だけで作れます。中心の音がドからラに変わるだけで、新しく覚える音はありません。
マイナースケールを暗記しないと作れませんか
暗記は後回しでかまいません。Aマイナーで作る限り、使う音はピアノロールの白鍵そのままです。ラから並べたラシドレミファソが結果的にAマイナースケールになっています。
曲が暗くなりすぎてしまいます
マイナーコードだけを並べると重くなりがちです。進行の中にF、G、Cといったメジャーコードを混ぜ、サビの頭で明るいコードを見せると、暗さの中に開ける瞬間が作れます。
AマイナーとCメジャー、どちらのキーか分からなくなります
終わり方で判断して大丈夫です。最後にAmへ戻って落ち着けばAマイナーの曲、Cで明るく着地すればCメジャーの曲、というのが実用上の目安になります。
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