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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

シンセウェーブの作り方|80sシンセ感をDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

シンセウェーブは、80年代の映画やゲームの夜景を思わせる、ネオンの光のような電子音楽です。

必要な材料は驚くほど少なく、太いシンセベース、キラキラしたリード、そしてゲートリバーブ風の派手なスネア。この3点セットが鳴れば、夜のハイウェイの景色は立ち上がります。

材料が少ないぶん、ごまかしも効きません。鍵になるのは、音色の方向を外さないことと、反復をどう設計するかの2つです。

3点セットの音作りから、ドラムマシン的なビート、ネオンなコード、8小節を鳴らすまでの手順を順番に見ていきます。

組み上げの全体像

シンセウェーブは、少ない材料の反復で夜景を描きます。

  • 音は3点セット。太いベース、キラキラのリード、ゲートリバーブ風スネア
  • BPMは80〜115、ドラムマシンのようにジャストで打つ
  • コードはマイナーキーの4つを繰り返す
  • 展開は音の抜き差しで作るシンプルな構成美

80年代風シンセの3点セット

音色の方向さえ合えば、時代の景色は一気に出ます。

シンセとは、電子的に音を合成する楽器のことです。シンセウェーブの音色は難しく考えず、3つの方向だけ押さえます。

1つ目は太いベース。ノコギリ波というジリッと明るい波形を低い音域で鳴らし、フィルターで高い成分を少し丸めます。1音鳴っただけで床が震えるような、輪郭のある低音が目標です。

2つ目はキラキラしたリードです。高い音域で、アタックのはっきりした硬めの音を選びます。薄くディレイをかけると、音の粒が街灯のように瞬きます。

3つ目がゲートリバーブ風のスネア。「パァン」と大きく広がった残響が途中でバッサリ切れる、80年代を象徴する音です。

スネアに広めのリバーブをかけ、残響が伸び切る前に切ると再現できます。専用の機能がなくても、リバーブと音量を切る仕組みの組み合わせで近づけられます。

プリセットを探す時も、この3つの方向を言葉として持っていれば、膨大な候補から迷わず選べます。名前がかっこいい音ではなく、役割に合う音を選ぶのがコツです。

ドラムマシン的ビートの打ち方

人間らしさを、あえて入れないビートです。

BPMの目安は80〜115です。速さで押すジャンルではないので、まず100に置いて、ベースの反復が気持ちよく回る速さを探します。

ドラムマシンとは、リズムを自動演奏する機械のことです。80年代のドラムマシンの鳴りは、人間の演奏に比べて揺れが少なく、多くの機種で正確な位置に均一な強さの音が並ぶのが特徴でした。

シンセウェーブではこの機械っぽさこそが味です。打ち込みでは、ノートの位置をジャストのまま動かさず、ベロシティもそろえます。生のドラムに近づけるための揺らし調整を、このジャンルではあえてしません。

パターンはキックの4つ打ちか、キックが1拍目と3拍目、スネアが2拍目と4拍目のシンプルな8ビートで十分です。

ハイハットは16分で薄く敷き、フィルはタムを数発、セクションの変わり目に置く程度に抑えます。手数の少なさが、そのまま時代の空気になります。

※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。

このジャンルでは、揺らさないほうが合うことが多いです。2本ともBPM100・同じパターンで、揺らしたかどうかだけが違います。

① 人間らしく揺らした場合位置も強さもばらつかせた

生ドラムに近づける定番の処理です。この例のずらし方だと、輪郭がゆるく聞こえます。

② ジャストのまま・強さもそろえる位置を動かさず、ベロシティも統一

量子化されたドラムマシンらしい、締まった聞こえ方になります。シンセウェーブでは、この均一さが効くことが多いです。

条件:BPM 100/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

ジャストで均一なピアノロール。すべての打点が等間隔に並び、濃さもそろっている
②のピアノロールです。打点が等間隔に並び、濃さもそろっています。

当時のドラムマシンにもアクセントやスウィングはあり、常に完全な均一だったわけではありません。また、シンセウェーブでも揺らした処理は使われます。ここで言えるのは「揺らせば良くなる」とは限らないということです。

太いベースはオクターブ反復

曲を走らせるエンジンは、低音の反復です。

ベースラインの定番は、オクターブ反復です。低いルート音と、その1オクターブ上の音を、8分音符か16分音符で交互に刻み続けます。

この反復が曲の速度感を作るエンジンで、BPMが遅めでも走って聞こえるのはこの動きのおかげです。

コードが変わったら、ルートの位置だけ移して反復はそのまま続けます。ノートの長さは短めに切りそろえると、機械が拍を数えているような正確さが出て、ジャスト打ちのドラムと噛み合います。

迷ったらベースとキックだけを再生してみてください。

この2つだけで前へ進む感じがあれば、上に何を乗せても曲は走ります。逆にここが噛み合っていないと、シンセを何枚重ねても景色は動きません。

ネオンな雰囲気のコード

切ないのに前向き、という色を4つで作ります。

キーはマイナー(短調)を選びます。夜っぽさの土台は、この暗さです。進行はマイナーキーのi-VI-III-VIIのような4つのコードを1周として、それを曲の最後まで繰り返します。

暗いのにコードが上へ持ち上がっていく形なので、切ないのに前向きという、このジャンル特有の色が出ます。

そのままだと少し素朴なので、コードに1音足します。7thやadd9のような音を混ぜると、単色だった響きに蛍光色のにじみが加わります。全部のコードに足す必要はなく、1周のうち1〜2箇所で十分です。

鳴らし方は、パッドというふわっと持続するシンセの音色で、小節いっぱいの白玉(小節の頭から終わりまで伸ばし続ける長い音符)で伸ばします。コードは景色の背景係なので、リズムを刻ませず、ベースとドラムの反復の上に静かに敷きます。

リードは同じフレーズを回す

反復の上でコードが動けば、単調にはなりません。

リードのメロディは、4音から8音くらいの短いフレーズを作り、それを繰り返すのが基本です。歌のように起承転結を作り込む必要はありません。

単調にならないか心配になりますが、ここに仕掛けがあります。レッスンでは、同じメロディや音を繰り返しても下のコードが変わると聞こえ方が変わる、という点を、耳に残るフックの作り方として伝えています。

シンセウェーブはまさにこの構造でできていて、リードは同じ4音を回しているだけなのに、下の4つのコードが移ることで景色が変わり続けます。反復と変化を同時に手に入れられる、効率の良い設計です。

表情付けは、フレーズの終わりの音にピッチベンドやビブラートを少しだけ。かけすぎると歌謡曲になるので、あくまで機械の声がわずかに揺れた、くらいに留めます。

抜き差しで作る構成美

足すか引くかだけで、最後まで聞かせます。

構成は、同じ4コードの繰り返しの上で、8小節ごとに音を1つ足すか1つ引くだけで作れます。

たとえば、ドラムとベースだけのイントロ、パッドが入る、リードが入る、一度リードとパッドが抜けてベースだけになる、全員で戻って終わる。この抜き差しの呼吸だけで、サビらしいサビがなくても最後まで聞かせられます。

大事なのは引き算の場面を必ず作ることです。足し続けるだけの曲は、後半で足すものがなくなって失速します。一度床だけに戻る場面があると、その後の全員合流が2倍大きく聞こえます。

この簡素さは手抜きではなく様式です。凝った転調や変拍子を入れたくなったら、それはもうシンセウェーブの外の景色に踏み出しています。

それも悪くありませんが、まずは4コードの反復の中でどこまで見せられるかを試すと、このジャンルの設計思想が体で分かります。

パート別の役割整理表

4パートの音色の方向と動きを1枚にまとめます。

パート音色の方向動き注意
シンセベースノコギリ波を丸めた太い音オクターブ反復キックと低域を取り合わない
パッド柔らかい持続音白玉でコードを敷く音量は控えめ、主役はリード
リードアタックの立つ明るい音短いフレーズの反復ディレイは薄く、ベンドは少しだけ
ドラムマシン的なキックとスネアジャスト打ちで固定スネアの残響は途中で切る

音選びで迷子になったら、この表の「音色の方向」の列に戻ります。4つの方向から外れた音は、単体で良い音でも夜景の中では浮きます。

ミックスで最初に見る1点

派手なスネアの裏で、低域が濁ります。

ミックスで最初に気を付けることを1つ挙げるなら、ゲートリバーブ風スネアの残響の低域です。あの派手な「パァン」には低い成分も多く含まれていて、放っておくとキックとベースの領域に流れ込み、せっかくの反復の輪郭を濁らせます。

対処は、スネアのリバーブ成分から低域を削ること、または残響を切る位置を少し早めることです。これだけで、床を走るオクターブ反復の粒がそろって聞こえるようになります。

派手さの調整より先に、派手さの掃除から始めるのが順番です。

最初の8小節を組む手順

床から順に、反復を積み上げます。

手順1、BPMを100に設定し、マイナーキーを1つ決めます。手順2、ドラムを打ち込みます。

キックは4つ打ち、スネアは2拍目と4拍目、ハイハットは16分で、すべてジャストの位置、同じベロシティにそろえます。

手順3、シンセベースでルートのオクターブ反復を8分で刻みます。手順4、パッドでi-VI-III-VIIを1小節ずつ白玉で敷きます。

ここまでの4小節で、夜景の床は完成です。

手順5、4小節をコピーして8小節にし、5小節目から短いリードフレーズの反復を乗せます。手順6、書き出してスマホで聞きます。

確認するのは、機械らしい正確さが保たれているかと、スネアの残響が低音を濁らせていないかの2点です。

この8小節が回れば、あとは抜き差しで曲の長さへ広げるだけです。全体のどの工程にいるかは、制作工程マップで確かめながら進めてください。

8小節から先へ広げる目安
段階長さやることこのジャンルでの具体
1周目8小節骨格だけを置く4つ打ちと16分のハイハットだけ。ジャストのまま、強さもそろえて回す
2周目16小節抜き差しで変化を作る裏拍にオープンハットを混ぜる。位置は動かさず、種類だけ変える
展開32小節場面を足すアルペジオを長く回す。ドラムは最後まで揺らさない
フル尺64小節〜曲として通すイントロを長めに取って4〜5分。ドラムは変えず、上モノの層で場面を作る

長さや小節数はあくまで目安です。大事なのは順番で、 8小節が気持ちよく回らないうちに長さを足さないこと。 伸ばしてから直すより、8小節に戻って直すほうが早く終わります。

上の表の2周目のやり方(抜き差しで変化を作る)を音にしました。 2本とも16小節・同じ音量で、前半8小節は1音も違いません。 変えたのは9小節目から先だけです。

① そのままくり返した版同じ2小節を16小節ぶん

8小節を過ぎたあたりから、耳が先を予測してしまいます。手は動いているのに曲が進んでいない状態です。

② 9小節目から抜き差しした版足すのではなく、消して戻す

9〜12小節目で裏拍にオープンハットが混ざり、13〜14小節目でキックが消えます。位置も強さも最後まで揺らしていません。抜き差しだけで場面を作っています。

条件:BPM 100/16小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

シンセウェーブの16小節の構成図。9〜12小節目にオープンハットが入り、13〜14小節目でキックが無くなっている
②の構成図です。帯が高いところほど、その小節の打点が多いことを表しています。 新しい楽器を足したわけではなく、もとからある音を増やしたり消したりしているだけです。 鳴っているキック・スネア・ハイハットは、登録なしで配っています。

よくある疑問

ドラムは人間らしく揺らしたほうがいいですか

このジャンルでは揺らさないのが正解寄りです。位置もベロシティもそろえたジャスト打ちの機械らしさが、ドラムマシン的ビートの魅力になります。

ベースは何分音符で刻めばいいですか

8分音符か16分音符でのオクターブ反復が基本です。低い音と1オクターブ上を交互に刻むと、テンポが遅くても走って聞こえます。

コードはいくつ必要ですか

4つで足ります。マイナーキーの4コードを1周として最後まで繰り返し、展開は音の抜き差しで作ります。

ゲートリバーブ風スネアはどう作りますか

スネアに広めのリバーブをかけ、残響が伸び切る前にバッサリ切ります。専用機能がなくても、リバーブと音量を切る仕組みの組み合わせで近づけられます。

記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ

UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。

次に進む記事

反復で聞かせる感覚は他のジャンルにも効きます。ビートとコードの引き出しを増やしていきます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。