本文へスキップ
古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

DTMプロジェクトファイルの整理|音源が消えない保存方法

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

昨日まで開けていた曲のプロジェクトを開いたら、「オーディオファイルが見つかりません」と表示されて音が抜けている。USBメモリに移した曲を別のパソコンで開いたら、歌だけ鳴らない。

DTMの初心者が一度は通る事故ですが、原因のほとんどは故障ではなく、保存の仕組みを知らないまま初期設定で進めてしまったことにあります。

この事故は、たった一つの原則で防げます。曲ごとに1つのフォルダを作り、プロジェクトも録音した素材も全部その中に入れる。

これだけです。なぜこの原則で防げるのか、フォルダの実例と名前の付け方、そしてすでに「見つかりません」が出てしまった時の探し方まで、順番に見ていきます。

先に押さえること

プロジェクトファイルは設計図だけ。音の素材と一緒に、曲ごとのフォルダで管理します。

  • プロジェクトファイルと録音した音のファイルは別物
  • 新しい曲は、先に曲専用フォルダを作ってから始める
  • ファイル名は「曲名+日付+バージョン」で付ける
  • 曲フォルダごと、別ドライブかクラウドに1つコピーしておく

プロジェクトファイルと音の素材は別物

ここを知らないまま進めると、いつか必ず音が消えます。

DAWで曲を保存すると、プロジェクトファイルというものができます。Cubaseなら、cprという拡張子が付いたファイルです。

名前から「この中に曲が全部入っている」と思いがちですが、実際は違います。プロジェクトファイルに入っているのは、どのトラックがあり、どの音をどの位置に置いたかという設計図の情報だけです。

一方、マイクで録音した歌やギターの音は、WAVなどのオーディオファイルとして、プロジェクトとは別のファイルに保存されます。プロジェクトを開くとDAWが設計図を読み、「歌の素材はここにある」という記録を頼りにオーディオファイルを呼び出して鳴らします。

つまり、設計図と素材の二人三脚で初めて曲が再生できます。

ここに落とし穴があります。プロジェクトファイルだけをUSBメモリにコピーしても、素材のオーディオファイルは元のパソコンに残ったままです。

移した先で開くと、設計図は読めるのに素材が見つからず、「オーディオファイルが見つかりません」という表示になります。

ソフト音源の打ち込みは設計図の中に含まれるので鳴りますが、録音したパートだけが抜け落ちる。歌だけ消える事故の正体はこれです。

曲ごとに1フォルダの原則

設計図と素材を離さないための、いちばん簡単な方法です。

レッスンでこの相談を受けた時に必ず伝えているのが、曲ごとのフォルダ管理です。新しい曲を作る時は、先に曲専用のフォルダを作り、プロジェクトの保存先としてそのフォルダを指定してから作業を始めます。

プロジェクトファイルだけを保存しても、録音した音声素材が一緒に残るとは限らない。

だから、曲ごとのフォルダを作って、その中にプロジェクトと素材をまとめる。これが原則です。

DAWの初期設定のまま「とりあえず保存」を繰り返すと、何が起きるか。録音した素材が、以前に作った別の曲のフォルダや、DAWが最初に用意した共通の場所に、どんどん溜まっていきます。

曲Aの歌が曲Bのフォルダに入っている、という状態です。

パソコンの中で開いている間は問題なく鳴るので、異変に気づきません。USBに移した時や、古いフォルダを片付けた時に、初めて音が消えます。

逆に、曲ごとに1フォルダができていれば、話は一気に単純になります。

  • 持ち運びはフォルダごとコピーするだけ。
  • バックアップもフォルダごとコピーするだけ。
  • 曲をやめる時もフォルダごと消すだけ。

設計図と素材が常に同じ箱に入っているので、離ればなれになりようがありません。

すでに何曲か作ってしまった人も、次の新しい曲からこの原則に切り替えてください。過去の曲は、後述するバックアップ機能でフォルダにまとめ直せます。

フォルダ構成の実例

迷ったらこの形をそのまま使ってください。

実際のフォルダ構成の一例です。年のフォルダの下に曲のフォルダを並べ、曲のフォルダの中にプロジェクトと素材を置きます。

階層名前の例中に入るもの
親フォルダMusic_2026今年作る曲のフォルダ全部
曲フォルダ2026_0704_natsuこの曲に関係するファイル全部
プロジェクトnatsu_0704_v1.cprトラック構成や打ち込みの設計図
AudioフォルダAudio録音した歌や楽器のWAV(DAWが自動で作る)
書き出しフォルダExport完成した2ミックスのWAVやMP3

Cubaseの場合、曲フォルダを保存先に指定してプロジェクトを作ると、録音のたびにAudioフォルダへ素材が自動で入っていきます。自分で毎回ファイルを動かす必要はありません。

最初の保存先の指定だけが、人間の仕事です。

歌詞のメモや参考にした曲のリストなど、曲に関係する資料も同じフォルダに入れてしまうのがおすすめです。半年後に開いた時、そのフォルダ1つで当時の作業を全部思い出せます。

名前の付け方は「曲名+日付+バージョン」

「最新」「完成2」という名前が、未来の自分を苦しめます。

フォルダの次は、プロジェクトファイル自体の名前です。おすすめは、曲名に日付とバージョン番号を足す形です。

たとえば「natsu_0704_v1」。翌日に大きく手を入れるなら、上書きせずに別名で保存して「natsu_0705_v2」とします。

やってはいけないのが、「最新」「完成」「本当の完成」「これで最後」のような名前です。付けた瞬間は分かりやすくても、1週間後には、どれが本当に新しいのか誰にも分からなくなります。

日付とバージョン番号なら、並べ替えるだけで新しい順に並び、迷いようがありません。

バージョンを分けて保存するのには、名前の整理以上の意味があります。思い切ったアレンジ替えに失敗しても、昨日のバージョンを開けば戻れる。

この安心感があると、実験がしやすくなります。プロジェクトファイル自体は素材に比べて小さいので、バージョンが10個あっても容量はほとんど気になりません。

書き出したWAVやMP3にも同じ規則を使います。スマホで聞き比べる時、「natsu_0704_v1」と「natsu_0705_v2」なら、どちらが後の音かすぐ分かります。

バックアップの最低ライン

パソコンは、いつか必ず壊れる前提で考えます。

曲ごとのフォルダ管理ができていても、そのパソコンが壊れたら全部一緒に消えます。だからバックアップです。

ただ、最初から完璧な体制を組む必要はありません。最低ラインはこれだけです。

曲のフォルダごと、パソコン本体とは別の場所に1つコピーしておく

置き場所は、外付けのハードディスクやSSDでもいいですし、クラウドストレージでも構いません。大事なのは「パソコンと運命を共にしない場所」であることと、プロジェクトファイル単体ではなくフォルダごとコピーすることの2点です。

ここでも、設計図と素材を離さない原則は同じです。

タイミングは、毎日でなくて大丈夫です。歌を録り終えた日、アレンジが一段落した日など、消えたら泣く状態になった日にコピーする。

この基準なら続けられます。

もし過去の曲で、素材があちこちに散っている疑いがあるなら、DAWに用意されているプロジェクトのバックアップ機能を使ってください。プロジェクトが参照している素材を集めて、指定したフォルダに1つにまとめてくれます。

散らかった曲を「曲ごとに1フォルダ」へ引っ越しさせる機能として使えるので、バックアップを取る前の整理にも役立ちます。

「見つかりません」が出た時の探し方

表示が出ても、素材はまだどこかに生きていることが多いです。

すでに「オーディオファイルが見つかりません」が出てしまった場合の話です。まず落ち着いてほしいのは、この表示は「素材が削除された」ではなく「素材の置き場所が分からない」という意味だということです。

多くの場合、ファイル自体はパソコンのどこかに残っています。

探す場所には順番があります。最初に、プロジェクトファイルと同じ場所やその周辺に、Audioという名前のフォルダがないか見ます。

次に、以前に作った別の曲のフォルダの中のAudioフォルダ。初期設定のまま保存を続けていた場合、素材はここに紛れ込んでいることが多いです。

それでもなければ、デスクトップ、ダウンロードフォルダ、クラウド同期フォルダを見ます。

手で見つからない時は、パソコンの検索を使います。エラー表示に出ているファイル名で検索するのが一番早く、名前が分からなければWAVファイルを対象に、録音した日付のあたりで絞り込みます。

ファイルが見つかったら、プロジェクトを開いた時に出るダイアログで、その場所を指定し直します。DAWには、行方不明の素材を探すための検索やフォルダ指定の項目が用意されています。

場所をつなぎ直せたら、その直後に必ずバックアップ機能でフォルダにまとめ直してください。つなぎ直しただけでは、素材が散らかった状態は変わっていないからです。

USBに移した先で音が抜けた場合は、元のパソコンに素材が残っています。元のプロジェクトをバックアップ機能でまとめてから、フォルダごと移し直せば復旧できます。

元のパソコンが手元にない、すでに処分したという場合だけ、録音のやり直しを考えることになります。こうなる前の、曲ごとフォルダとバックアップです。

保存の仕組みが整うと、制作は安心して前に進められます。ここから先の、コードやドラムをどの順番で作っていくかは、下の制作工程マップに1枚でまとめています。

よくある疑問

プロジェクトファイルだけUSBにコピーすれば持ち運べますか

持ち運べません。プロジェクトファイルは設計図だけで、録音した音の素材は別のファイルです。曲のフォルダごとコピーしてください。素材が別の場所に散っている場合は、DAWのバックアップ機能で1つのフォルダにまとめてから移します。

「オーディオファイルが見つかりません」と出たら、もう手遅れですか

多くの場合、素材はパソコンのどこかに残っています。プロジェクトの近くのAudioフォルダ、以前に保存した別の曲のフォルダ、デスクトップやダウンロードフォルダを探し、ファイル名で検索してください。見つかったら開いた時のダイアログで場所を指定し直せます。

バックアップはどこまでやれば安心ですか

最低ラインは、曲のフォルダごと、パソコン本体とは別の場所に1つ置くことです。外付けドライブかクラウドのどちらかで構いません。作業に区切りがついた日にフォルダごとコピーする習慣にします。

ファイル名はどう付ければ迷いませんか

曲名に日付とバージョン番号を足します。たとえば「natsu_0704_v2」のような形です。「最新」「完成」「本当の完成」のような名前は、どれが新しいか後で分からなくなるので避けます。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

次に進む記事

今の工程に近い記事へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。