DTM初心者用テンプレートの作り方|毎回同じ入口を作る

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMのテンプレートとは、毎回使うトラック構成や音源をあらかじめ並べて保存しておく仕組みです。
新しい曲を作るたびに白紙の画面から準備を始めると、曲を書く前に気力を使い切ってしまいます。
用意するものは多くありません。ドラム、ベース、コード、メロディの4トラックと、よく使う音源。
これだけで、DAWを開いた瞬間に打ち込み始められる状態が手に入ります。作り方、保存のしかた、育て方の順で説明します。
先に見ること
テンプレートは、制作を始めるまでの準備時間をゼロにする道具です。
- 中身はドラム・ベース・コード・メロディの4トラック
- 各トラックによく使う音源を挿しておく
- DAWのテンプレート保存機能で残す
- 曲を1つ作るたびに少しずつ直す
テンプレートとは何か
準備が終わった状態を、丸ごと保存しておきます。
DAWで新規プロジェクトを開くと、画面はほぼ空っぽです。トラックを作り、名前を付け、音源を選び、音量を整える。
この準備を終えてやっと打ち込みが始まりますが、その頃には、作ろうとしていたフレーズの記憶が薄れていることがよくあります。
テンプレートとは、この準備が終わった状態を丸ごと保存したものです。次からは、保存した状態を呼び出すだけで、いきなり打ち込みから始められます。
料理にたとえると、まな板と包丁と調味料が出ているキッチンです。作るたびに戸棚から全部出すのではなく、出し終わった配置を写真のように保存しておき、毎回そこから始めるイメージです。
多くのDAWには、この状態をテンプレートとして保存する機能が最初から用意されています。特別なソフトを買い足す必要はなく、今日の作業の最後に保存を1回するだけで作れます。
初心者向けの中身は4トラック
曲の役割を1つずつ受け持つ、最小の構成です。
初心者のテンプレートは、4トラックで足ります。ドラム、ベース、コード、メロディ。曲を支える役割を1つずつ受け持つ、最小のセットです。
プロの何十トラックもあるテンプレートを真似る必要はありません。
大事なのは、トラックを作るだけでなく、それぞれによく使う音源まで挿しておくことです。
ドラムトラックにはいつものドラム音源、コードトラックにはピアノ、メロディトラックにはリード系の音色。どれを挿すか迷ったら、前の曲で実際に使ったものにします。
音源選びは、制作前の準備でいちばん時間を食う工程です。
レッスンでも、制作に入る前に使いそうなドラム、ベース、鍵盤などを先に立ち上げておくと音色探しで止まりにくい、という順番を勧めています。
テンプレートは、この立ち上げを毎回自動でやってくれる仕組みだと考えると分かりやすいです。
逆に、最初から10も20もトラックを用意するのはやめておきます。
使わないトラックは、開くたびに目に入る圧になります。足りない音は、その曲の中で足せば十分です。
4トラックの役割と入れるもの
この表の状態を作って保存すれば完成です。
| トラック | 曲の中の役割 | 挿しておく音源 |
|---|---|---|
| ドラム | 曲の時間の流れを作る | いつも使うドラム音源 |
| ベース | 低音で土台を支える | ベース音源かシンセベース |
| コード | 和音で響きを作る | ピアノやエレピなど和音が弾ける音源 |
| メロディ | 主役のフレーズを置く | リード系シンセか仮メロ用のピアノ |
作り方と保存のしかた
DAWのテンプレート保存機能を使います。
作り方は5つの手順です。
①新規プロジェクトを作る。②4トラックを作り、ドラム、ベース、コード、メロディと名前を付ける。③それぞれに音源を挿す。④各トラックの音量フェーダーを、少し控えめの位置でそろえる。⑤DAWのテンプレート保存機能で保存する。
保存には、通常の保存ではなく、テンプレート専用の保存機能を使います。
Cubaseなら「テンプレートとして保存」に当たる項目があり、保存後は新規プロジェクトを作る画面で自分のテンプレートを選べるようになります。他のDAWでも、名称は違っても同じ役割の機能がほとんどの場合あります。
やってはいけないのが、前の曲のプロジェクトファイルをコピーして使い回す方法です。
コピーを忘れてそのまま上書き保存すると、前の曲が消えます。テンプレート機能なら、開くたびに中身だけ引き継いだ新しいプロジェクトとして始まるので、この事故が起きません。
保存する前に、テンポや拍子など、いつも同じにしている設定があれば整えておきます。
テンポは後で必ず変えるものなので仮の数字で構いませんが、メトロノームのオンオフのような毎回触るスイッチは、好みの状態にしてから保存すると、次からの手数がさらに減ります。
テンプレートから曲を始めたら、最初の保存の時に曲ごとのフォルダを作ります。
プロジェクトファイルだけを保存しても、録音した音声素材が一緒に残るとは限らないためです。曲のフォルダの中にプロジェクトと素材をまとめる管理を、テンプレート運用とセットで習慣にします。
始めるハードルが下がる理由
準備の重さが、続かない原因になっています。
DTMが続かない原因は、才能ややる気の前に、始めるまでの手数の多さにあることが多いです。
DAWを起動して、白紙を見て、トラックを作って、音源を探して。ここまでで20分かかると、平日の夜はそれだけで終わります。
テンプレートがあると、開いた瞬間が「準備済み」の状態です。
鼻歌で浮かんだメロディを、忘れないうちにメロディトラックへ打ち込めます。思いつきと打ち込みの間の距離が、一気に縮まります。
時間が5分しかない日でも、その5分を全部打ち込みに使えます。
ドラムを1小節置くだけでも、昨日より曲は進んでいます。小さくても前に進んだ日は、翌日もDAWを開きやすくなります。
つまりテンプレートは、時短の道具であると同時に、制作を習慣にするための道具です。上手くなってから作るものではなく、初心者のうちに作るほど効果が大きい、と考えてください。
テンプレートを育てる運用
1曲終わるごとに、小さく見直します。
テンプレートは、一度作ったら完成ではありません。曲を1つ作り終えるたびに、数分だけ見直します。
見るのは2点です。毎回手で追加していた音源はないか。逆に、一度も使わなかったトラックはないか。
毎回追加しているものがあれば、テンプレートに足します。たとえば歌ものばかり作るようになったら、ボーカル録音用のオーディオトラックを足す、という具合です。
使わなかったものは外します。実際の制作に合わせて中身が入れ替わっていくのが、育っている状態です。
見直しのタイミングを迷うなら、書き出しが終わった直後がおすすめです。その曲でどこに時間がかかったかを覚えているうちに直すと、次の曲で同じ準備を繰り返さずに済みます。
中身が増えて用途が分かれてきたら、テンプレートを2つに分けます。歌もの用とBGM用、のような分け方です。
ただし増やしすぎると選ぶ手間が戻ってくるので、2〜3個までにとどめます。
更新する時は、前の版も名前を変えて残しておきます。
新しい構成がしっくり来なければ、前の版に戻ればよいだけです。戻り先があると、思い切って試せます。
入口が軽くなったら、次は1曲を最後まで運ぶ番です。テンプレートで浮いた準備時間を、土台作りから書き出しまでの流れに回していきましょう。
よくある疑問
テンプレートは無料のDAWでも作れますか
多くのDAWに、テンプレート保存や初期プロジェクトの指定に当たる機能があります。名称が違っても、トラックと音源を用意した状態を保存できれば同じ効果があります。
トラックは4つで足りますか
最初は足ります。足りない音はその曲の中で追加し、毎回追加するようになったらテンプレートに入れます。使う分だけ増やすのがコツです。
前の曲のファイルをコピーして使うのはだめですか
上書き保存で前の曲を消してしまう事故が起きやすいため勧めません。テンプレート機能なら、開くたびに新しいプロジェクトとして始められます。
テンプレートにエフェクトも入れていいですか
毎回使うものなら入れて構いません。ただし作り込みすぎると、どの曲も同じ響きになりやすいので、最初は音源と音量くらいの土台にとどめます。
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