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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

DTMでJ-POP風の曲を作る始め方|Aメロからサビまで

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

J-POPの曲には、はっきりした「間取り」があります。Aメロで場面を説明し、Bメロで期待をためて、サビで一気に解放する。ふだん何気なく聞いている曲のほとんどが、この間取りの上に建っています。だから初心者がJ-POP風の曲を作るなら、コード理論を片っ端から覚えるより、この構造を先に知るほうが早いのです。

ここでは、Aメロ、Bメロ、サビそれぞれの役割と、セクションごとにコードとメロディの高さをどう設計するかを、DAWに置ける形で説明します。目指すのはフルコーラスではなく、まずワンコーラス約90秒。それで十分に「曲を作った」と言える理由も、最後に説明します。

先に見ること

J-POPの1コーラスは、三つの役割の分担でできています。

  • Aメロ=説明。低めの音域で、静かに場面を作る
  • Bメロ=橋渡し。少しずつ上げて、緊張をためる
  • サビ=解放。曲の最高音を、ためた後に放つ
  • 最初の目標はワンコーラス90秒で十分

1コーラスの間取りを知る

Aメロ、Bメロ、サビの役割分担が、J-POPの設計図です。

1コーラスとは、Aメロ、Bメロ、サビが一度ずつ出てくるひとまとまりのことです。カラオケで言えば、歌い出しから1回目のサビが終わるまで。

J-POPの多くは、この形を2回繰り返し、間奏や大サビを足してフルコーラスになります。

三つのセクションには、それぞれ仕事があります。Aメロの仕事は説明です。

物語で言えば、登場人物と場所を紹介する場面。音は控えめで、言葉がよく聞こえます。

Bメロの仕事は橋渡しです。説明から解放へ、いきなり飛ぶと不自然なので、間に立って少しずつ気持ちを持ち上げ、緊張をためます。

サビの仕事は解放です。ためてきたものを一気に放つ、曲で一番強く、一番覚えてもらう場面です。

この役割分担を知らずに作ると、全セクションが同じ熱量になり、どこがサビか分からない曲になります。逆に言えば、メロディやコードの良し悪しに自信がなくても、役割の差さえ付いていれば、聞いた人はちゃんと「曲」として受け取ってくれます。

差を付ける道具は、主に二つです。メロディの高さと、音の数。

これをセクションごとに設計していきます。

セクション別の設計表

高さと密度の差が、そのまま曲の展開になります。

セクション役割メロディの高さコードと伴奏の考え方
Aメロ(8小節)説明低め。狭い範囲で淡々とキーの主和音から始めて安定させる。伴奏は薄く
Bメロ(4〜8小節)橋渡しの緊張中くらい。少しずつ上へAメロと違うコードから始めて空気を変える
サビ(8小節)解放曲の最高音をここに置く王道進行で堂々と。伴奏は一番厚く

Aメロは「説明」の場面

低く、狭く、静かに。サビのための余白を残します。

Aメロで一番やってはいけないのは、頑張りすぎることです。最初のセクションだからと高い音や派手な動きを入れると、後のサビで上げる場所がなくなります。

Aメロは、わざと控えめに作るセクションです。

メロディは低めの音域で、動きも狭くします。ドとレとミの3音くらいの範囲を行き来するだけでも、Aメロとしては十分成立します。

同じ形のフレーズを2小節ごとに繰り返すと、聞き手が安心して言葉を追えます。

コードは、キーの中心になる和音から始めます。キーCならCから。

床がしっかりした感じが出て、「ここから物語が始まる」という説明の空気になります。伴奏は薄くしてください。

ピアノの白玉(コードを全音符でポーンと長く伸ばす弾き方)とベース、軽いドラムくらいで足ります。ここで楽器を全部鳴らしてしまうと、サビで足すものがなくなります。

打ち込みの手順としては、コード4小節を2回繰り返して8小節にし、その上に低めの鼻歌を乗せるのが入りやすいです。鼻歌は、頭の中のイメージを外へ出すための素材と考えて、音程が多少怪しくても録ってしまい、後からピアノロールで直します。

Bメロは「橋渡し」の緊張

空気を変えて、少しずつ上げて、サビ直前で最大までためます。

Bメロは、Aメロとサビをつなぐセクションですが、ただの通り道ではありません。「そろそろ何かが起こるぞ」という緊張を作る場面です。

ここがうまく機能すると、同じサビでも数倍気持ちよく聞こえます。

作り方の要点は三つあります。

一つ目は、コードをAメロと変えることです。Aメロが主和音から始まったなら、BメロはFやAmなど別のコードから始めます。

始まりの和音が変わるだけで、場面転換がはっきり伝わります。

二つ目は、メロディの高さをAメロとサビの中間にすることです。Aメロより高く、でもサビの最高音にはまだ届かない。

階段の踊り場のような高さを保ちます。

三つ目は、サビ直前の「ため」です。Bメロの最後の1〜2拍で伴奏を全部止めて、歌だけ、あるいは無音にする。

この一瞬の静けさが、直後のサビを大きく見せます。

リズムを少し細かくするのも定番です。Aメロで8分刻みだったハイハットを16分にする、ベースの動きを増やす。

走り出す前の助走のような感覚が出ます。

長さは8小節が標準ですが、4小節の短いBメロでも構いません。大事なのは長さではなく、入る前と出た後で緊張の高さが変わっていることです。

サビは「解放」の場面

曲の最高音と一番厚い伴奏を、ここまで取っておきます。

サビの設計は、原則が一つだけです。曲の一番高い音は、サビに置く

AメロとBメロで音域を抑えてきたのは、すべてこのためです。ためてきた高さを一気に放つから、解放として聞こえます。

メロディの入り方も効きます。レッスンで使っている判断メモに「メロディは、どの拍から言葉や音が入るかで印象が変わる」というものがあります。

サビの頭は、1拍目からドンと入るのか、半拍食って前のめりに入るのかで性格が大きく変わります。両方打ち込んで聞き比べてください。

J-POPのサビは、少し食って入る形がよく使われますが、堂々とした曲なら1拍目からが合います。

伴奏はここで一番厚くします。Aメロで休んでいた楽器を全部入れ、ドラムのシンバルを開き、ベースを力強くします。

逆に言うと、サビの厚みはサビだけで作るものではなく、Aメロを薄くしておくことで生まれる相対的なものです。

サビのメロディが思いつかないときは、高さの設計だけ先に決めるのが有効です。「この曲の最高音はソ」と決めて、そのソに向かって駆け上がる形、ソから始まって降りてくる形の2案を作って比べます。

白紙から探すより、制約があるほうがメロディは出てきます。

王道進行の使い方

進行を1つ決めて、全セクションで使い回して構いません。

コード進行は、1曲目なら1つに絞ることをおすすめします。J-POPで王道進行と呼ばれるのはIV-V-iii-vi、キーCならF-G-Em-Amの4小節です。

切なさと前向きさが同居した、J-POPらしさの塊のような進行です。もっと簡単に始めたいなら、C-Am-Dm-Gという並びでも十分です。

レッスンの判断メモでも「最初の1曲目は、C、Am、Dm、Gを4小節に並べるだけでよい。理論を全部覚えるより、まず鳴らして曲っぽい土台を作る」としています。

「同じ進行を全セクションで使ったら単調にならないか」と心配になるかもしれません。なりません。

前のセクションまでで作った高さと密度の差が、同じ進行を別の場面に聞かせてくれます。実際、AメロもサビもBメロも同じ進行で通しているヒット曲の型は昔からあります。

差を付けたければ、コードを変えるのではなく、コードの鳴らし方を変えます。

  • Aメロは白玉でポーン
  • Bメロは8分で刻む
  • サビは2拍ごとに弾き直す。

同じF-G-Em-Amでも、密度が変われば別の景色になります。

進行選びで長時間止まりそうになったら、それは今日決めることではないサインです。仮でC-Am-Dm-Gを置いて、メロディへ進んでください。

進行の差し替えは、曲が形になった後からでもできます。

最初はワンコーラス90秒でいい

フルコーラスは、ワンコーラスの拡張でしかありません。

1曲目の目標は、フルコーラスではなくワンコーラスにしてください。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビで、だいたい90秒。

この長さには、入口、展開、盛り上がりという曲の要素がすべて入っています。つまり構造の練習として、必要なことは一通り経験できるのです。

90秒を軽く見ないでほしい理由がもう一つあります。フルコーラスとは、2番でAメロを少し変え、間奏を挟み、最後のサビを繰り返したものです。

材料はほぼ全部ワンコーラスの中にあります。ワンコーラスの役割分担が崩れていると、それを2倍3倍に伸ばしても、崩れた曲が長くなるだけです。

ただし、90秒で終わりにしないことも同じくらい大事です。レッスンで使っている判断メモに「90秒は最終ゴールではなく、フルコーラスへ広げる前に、入口、展開、盛り上がり、終わり方を小さく確認する場所」というものがあります。

ワンコーラスは完成の代わりではなく通過点。ここで構造の手応えをつかんでから、次の曲かフルコーラス化へ進みます。

ワンコーラスができたら、必ず書き出して、DAWの外で通して聞いてください。Aメロ、Bメロ、サビの役割が耳で聞き分けられたら、構造の設計は成功です。

そこから先の、フルコーラスまでの道のりは制作工程マップに1枚でまとめてあります。

よくある疑問

Aメロとサビはどちらから作ればいいですか

どちらでも構いませんが、初心者はサビから作るほうが迷いにくいです。曲の一番高い場所が先に決まると、Aメロをどこまで低く抑えるかも自然に決まります。

Bメロは必ず必要ですか

必須ではありません。ただAメロとサビの落差が大きい曲では、Bメロが橋渡しをしてくれます。8小節が長ければ、4小節の短いBメロでも効果があります。

王道進行だけで1曲作っていいですか

構いません。同じコード進行でも、メロディの高さと音数をセクションごとに変えれば、曲は単調になりません。1曲目は進行を1つに固定するほうが完成しやすいです。

ワンコーラスができたら次は何をしますか

書き出して通しで聞き、Aメロ、Bメロ、サビの役割が耳で聞き分けられるかを確認します。区別がつくなら、その素材を使い回して2番やフルコーラスへ広げます。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。